2016年9月14日水曜日

14- 首相 安保法制を「実行のとき」と自衛隊幹部に訓示

 安倍首相は12自衛隊高級幹部に対する訓示で、自らが強行した集団的自衛権行使容認の安保法制や日米新ガイドライン、武器輸出の解禁などを列挙して「制度は整った。あとはこれらを血の通ったものとする。必要なことは、防衛省・自衛隊による実行だ」と強調しました。
 
 中国とロシアは12日から8日間にわたり、南シナ海で防空、艦船の救援、対潜水艦戦、島への上陸作戦など艦隊演習を始めました。この海域では資源支配をめぐってアメリカ資本と中国とが対立していて、エクソン・モービル中国の警告を無視して掘削を強行、それに対して中国は2014年5月2日石油掘削装置を南シナ海のパラセル諸島に持ち込むなどの対抗処置を取っています。
 
 露の艦隊演習は、南シナ海で戦争が始まったなら、ロシア軍は「集団的自衛権」を行使して中国軍と一緒に戦うという意思表示です。そのときは当然、戦争の相手はアメリカと日本ということになります。
 
 もともと昨年6月安倍首相はオフレコで「安全保障法制」は「南シナ海の中国が相手」だと口にしたと報じられています。一方 中国の程永華駐日大使は今年6月、中国が南シナ海に関する要求で譲歩したり主権を放棄することは戦争が勃発する事態になってもありえないと日本側に警告しています。
 
 日本が戦争に巻き込まれる可能性はもう目の前に迫っています。
 しんぶん赤旗と櫻井ジャーナルの記事を紹介します。
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戦争法 首相「実行のとき」 自衛隊幹部に訓示 “政治との直結関係を”
しんぶん赤旗 2016年9月13日
 安倍晋三首相は12日の防衛省での自衛隊高級幹部に対する訓示で、集団的自衛権行使容認の戦争法=安保法制の整備や日米新ガイドライン(軍事協力の指針)の策定などをあげて、「今こそ実行のときだ」と述べ、本格的な運用段階への移行を求めました。首相は昨年12月の同会合の場では、戦争法に基づく新任務について「周到に準備してもらいたい」と述べていました。
 
 8月24日の稲田朋美防衛相による新任務の訓練開始表明に続き、首相自らが自衛隊に指示を出した形です。
 
 首相は、自らが強行してきた▽戦争法▽新ガイドライン▽統合幕僚監部への部隊運用一元化▽武器輸出の解禁―といった憲法破壊を列挙した上で、「制度は整った。あとはこれらを血の通ったものとする。必要なことは、防衛省・自衛隊による実行だ」と強調しました。
 
 さらに首相は、「私と諸君との紐帯(ちゅうたい)の強さこそが、日本の安全に直結する。自衛隊と政治とのシームレス(切れ目のない)な関係を構築していきたい」と述べ、政治と軍事の垣根を取り払い、文民統制を骨抜きにする考えを表明。「政治の判断が必要となる事項についても、臆することなく積極的にオプション(選択肢)を提示してもらいたい」と制服組へ政策面での関与を求めました。
 
 
南シナ海で中露は艦隊演習を開始、
軍事力で威嚇する米国に対抗する意思を明確に示している
櫻井ジャーナル 2016年9月13日
 中国とロシアは9月12日から8日間にわたり、南シナ海で艦隊演習を始めたようだ。その内容は防空、艦船の救援、対潜水艦戦、島への上陸作戦などで、18隻の艦船(ロシアから5隻)と21機の航空機が参加するという。南シナ海で戦争が始まったなら、ロシア軍は「集団的自衛権」を行使して中国軍と一緒に戦うという意思表示だろう。当然、戦争の相手はアメリカと日本が想定されているはずだ。
 
 昨年6月1日に安倍晋三首相は官邸記者クラブのキャップと懇親した際、「安全保障法制」、いわゆる戦争法制は「南シナ海の中国が相手」だと口にしたという。この話は週刊現代のサイトで取り上げられ、国外でも問題になった。そして今年6月後半、中国の程永華駐日大使は南シナ海に関する要求で譲歩したり主権を放棄することは戦争が勃発する事態になってもありえないと日本側に警告していたと伝えられている。
 
 この海域では資源支配をめぐってアメリカ資本と中国とが対立している。例えば、エクソン・モービルが中国の警告を無視して掘削を強行、それに対して中国は2014年5月2日に石油掘削装置「海洋石油981」を南シナ海のパラセル諸島に持ち込んでいる。
 
 そうした資源争いだけでなく、海上輸送路の問題もある。何度も書いているように、中国は「一帯一路(シルク・ロード経済ベルトと21世紀海のシルク・ロード)」という交易ルートの構築を計画、その海上ルートが始まる場所が南シナ海である。
 
 中国の計画が実現した場合、世界経済の主導権をアメリカは奪われてしまうため、どうしても潰したい。そこで、アメリカは海上ルートの出発点である南シナ海を支配し、陸上ルートが通過する中央アジアをアル・カイダ系武装集団などを使って不安定化させようと目論んでいると見られている。
 
 南シナ海でアメリカは「東アジア版NATO」を創設、その中核として日本、ベトナム、フィリピンを考え、そこへ韓国、インド、オーストラリアを結びつけようとしている。7月8日には韓国へTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムを配備することが決まったが、これもその一環。「防衛」という文字が含まれているが、このシステムは攻撃用へすぐに変更できる。
 
 アメリカ側の戦略は今年6月に揺らぎ始める。フィリピン大統領がアメリカの傀儡と言われたベニグノ・アキノ3世から自立派のロドリゴ・ドゥテルテへ交代したのだ。新大統領は先日、バラク・オバマ大統領に対して「あの野郎(son of a bitch)」という表現を使っている。オバマの両親が東南アジアで行ったことをドゥテルテが知っていることも、そうした発言の背景にあると言われている。その一方、ドゥテルテ政権は中国との交渉を進め、中国はフィリピンのインフラを整備するために多額の投資を提案しているという。
 
 中国の杭州でG20サミットが開催された際、空港でオバマ大統領にはタラップが用意されず、赤い絨毯も敷かれていなかったことは本ブログでも紹介した。中国政府のアメリカ政府に対するメッセージではあるが、それだけでなく、世界に対してそうした中国の姿勢を見せるという意味もあっただろう。「脅せば屈する」というネオコン/シオニスト流の戦術は機能しないという警告にも見える。
 
 本来なら、ネオコンのような好戦派の動きを日本政府は諫めねばならないのだが、同調どころかエスカレートさせるようなことをしてきた。正気とは思えない。