2016年8月11日木曜日

日本会議系右翼にとって皇室典範改正は

 この度の天皇の生前退位問題に関連する こたつぬこ氏のツィッター記事です。
 同氏はその中で生前退位について、故 奥平康弘東大名誉教授が「天皇の退位は非人間的地位からの脱出で、天皇の退位の自由否定することは違憲の疑いがある」と述べていることを紹介し、戦後教育を受けた者の大多数にとって「自分たちにはある人権が、なぜ天皇にはないの」という素朴な疑問として受け止められているとしています。
 天皇の「お気持ち」は皇室典範を改正すれば実現できることなので、それを今まで放置してきたのは政府・国の怠慢であったと言えます。 
 
 こたつぬこ氏はその一方で、安倍首相や日本会議にとっては、まさに皇室典範こそが「右翼の憲法9条」に当たるもので、それに手をつけたら彼らのアイデンティティが崩れてしまうが故に、絶対に受け入れられないことだとしています。
 彼らにすればようやく悲願の憲法改正に辿り着いた矢先に、思いもよらずに皇室典範改正に追い込まれて戸惑っているというものです。
 
 それにしても、皇室典範が改正される事態になればアイデンティティが失われかねない・瓦解しかねない組織理念とは、なんとまあ脆弱にして時代錯誤的な観念の上に築かれたものなのでしょうか。
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日本会議系右翼にとって皇室典範改正は「反日サヨクによる国体解体謀略」
こたつぬこ 晴耕雨読 2016年8月9日
僕の出身学科は天皇制研究の拠点だったわけで、天皇制を機能・構造で論じるか「それ自体」として論じるかで万華鏡のように姿が変わる天皇制の厄介さを捉えようと議論したことに思いを馳せれば、いまこの歴史的局面でつぶやかないなどありえるかと。
つまり安倍さんや日本会議にとって皇室典範は「右翼の憲法9条」なのかもしれませんね。
それに手をつけたらアイデンティティが崩れるような。
これまで全力で改正を阻止してきたが、天皇と左翼リベラルが改正派になるという、憲法と逆のパターンが。
日本会議系右翼にとって皇室典範改正は「反日サヨクによる国体解体謀略」に他ならないわけです。
彼らは今の「天皇」にだけ生前退位を認めることで「天皇制=国体」を守り抜こうとするでしょう。
 
>本秀紀 天皇制を「憲法番外地」と捉え、したがって「天皇の人権」なるものは論題設定自体がナンセンスと論じた故・奥平康弘は、だからこそ、非人間的地位からの脱出=退位の自由の否定を「違憲の疑いがある」と解した(奥平『憲法Ⅲ』41頁参照)。
 
今回の天皇発言をめぐり、自民から共産党まで等しく「天皇の声に応えた」かのようにいわれていますが、全然違います。
自民は「臣民的反応」、共産、社民はこの奥平康弘の「脱出の自由」の人権アブローチに近いもの。
この奥平康弘説は実は国民多数の感覚にフィットしやすい。
戦後教育を受けた者の大多数は「自分たちにはある人権が、なぜ天皇にはないの?」という素朴な疑問をもつ。
だから9割が生前退位に賛成なわけで、天皇はその民主主義感覚に働きかけたわけです 
日本会議系右翼にとって、天皇は天皇制のもとで憲法の枠外にある「特別な権威」でなければいけない。
しかし大衆感覚からすると、天皇は憲法の枠外におかれ、退職する自由さえ認められない「かわいいおじいちゃん」なわけです。
この「かわいい天皇」「かわいそうな天皇家」イメージは、女性週刊誌などで普及しました。
 
他方右派論壇は皇室に復古的権威を要求するDV野郎の役割を果たしてきました。
皇室典範改正をめぐる議論は、この二つの天皇像の争いを激化させます。
保坂正康のコメントがまさにそれ「戦後、憲法は国民に個人の自由や市民的権利を認めた。しかし典範は変わらなかった。われわれが市民的権利を享受していながら天皇には終身在位を求めて一切隔絶された空間に置き、知らん顔しているのはむちゃな話だ」
今の天皇は、自分の路線に「天皇制」を変えようとしているわけです。
 
「天皇」ではなく「天皇制」にアイデンティをおいてきた右翼は、遂に悲願の憲法改正に辿り着いた瞬間に、皇室典範改正により梯子を外されようとしているわけです。
大混乱ですよ。
なおここでいう「天皇制」は日本会議系右翼が想定する「天皇制」であり、帝国憲法に規定され日本国憲法の下でも残存した「天皇制」です。
今の天皇はこの帝国憲法の遺制を粉砕し日本国憲法に基づく象徴天皇制を完成させる最後の闘いを仕掛けたわけです
 
>田川滋‏「生前退位」の問題は文字通り「生前」に解決しないとしようした行為自体が無意味になる。だから刻限は切迫している。皇室典範改正がややこしいならまず特別法もアリ、と思ったけど、考えてみれば典範を「そこだけ追加」しても同じですよね。足りないと思えばその後また改正すれば良い。
>田川滋‏続)皇室典範を「軽々に何度も変えるものではない」と考える必要も無い。法的な齟齬が起きなければいい。現憲法では皇室典範は一般の法律と同じ。国会の過半数で改正できる。つまり「時の与党」が変えたければ変えられるもの。これが「天皇を残した」憲法に実は仕込まれていた「国民主権」の証明。
>想田和弘「天皇陛下のお言葉なのだから国民は重く受け止めなければならない」的な言説や態度、ムードには、たとえ「お言葉」の内容がいかに優れたものであったとしても、違和感と危険性を覚えざるを得ない。もっとフラットに捉えないと、天皇制ファシズムはいとも簡単に復活しますよ。
 
こういう「とりあえずファシズムと言っときゃいいや」みたいなお手軽なのは、事態を見る目を曇らせますね。
 
>本秀紀日本社会の自由を心底念願したからこそ「天皇制なるもの」にこだわり抜いた奥平先生は、まさか天皇自身の「お気持ち」表明を契機として、自己の卓抜なる見解が注目を浴びるなんて、思いもしなかっただろうなぁ。「お気持ち」が聞けないのが残念・・・
 
ほんとそうですよね。奥平先生が残してくれた矢で、日本会議系右翼を射ぬけます。
今の天皇はずっと戦後民主主義を基盤とした象徴天皇制の確立を目指してきたわけだが、それと並行して戦後民主主義を否定する新右翼が台頭し、ついに安倍政権で支配権を握ったわけです。
広くみれば天皇はこの「ねじれ」を解消しようとしている。
これまで天皇は二度、ビデオメッセージで直接国民に語りかけていますが、いずれも311後。
311後、あらたな社会運動が台頭し、戦後民主主義を再評価し、そして「国民なめるな」というスローガンを掲げた。
天皇はこの「311後の国民」に語りかけているようにもみえる。
 
>牛茶‏主権回復記念の式典で万歳されたときの表情が忘れられない。

これですよね。とくに美智子氏の顔には激しい嫌悪感が浮かんでいます。写真及び関連個所省略
 
>原武史8月7日午後4時30分から御所応接室で天皇の「お言葉」が収録されたさい、皇后はすぐ近くで収録の模様を見守っていたという。今回の文章も事前に皇后が念入りにチェックしていたように感じる。だがその存在は、まるで簾を垂らしているかのように見えないし、誰も指摘することはない。
>達増拓也象徴天皇制は人間天皇制。人間は生老病死から逃れられない。それをふまえた制度設計が必要。民主主義も憲法も、人間性を守り人間性を発展させるための制度。国民も天皇も、人間として、憲法に基づく国のあり方を実践しなければならないのだと思います。
>赤旗政治記者‏《八木秀次教授「大幅な変更必要」》NHK〈「仮に退位されるとなると天皇制の仕組みの大幅な変更が必要になってくる〉 https://t.co/7yL1KVWbX1 安保法制や安倍改憲を後押しする学者を登場させたNHK。「生前退位」に便乗し、“必要なら改憲”につなげる意図か。(津)
>やまブし 天皇が見ているのかもしれないのか、我々のことを。
 
われわれはこの二ヶ月選挙活動をやりましたが、天皇は生涯「投票日のない選挙活動」を全国まわってやってるわけです。
 
>デス・バレリーナ ≪皇太子殿下も2月の記者会見で戦後70年について質問され、次のように答えられている。「戦争の惨禍を再び繰り返すことのないよう過去の歴史に対する認識を深め、平和を愛する心を育んでいくことが大切ではないかと思います」  http://t.co/hUCjAdSymd 
 
右翼は皇太子も嫌いなわけで、じゃあこれからどうすんのかといえば、とにかく皇室典範を維持し、憲法改正し、宮家復活し、マイ天皇を育てたいんでしょうね。
 
>デス・バレリーナ‏「雅子さまの人格否定」を皇太子が告発した時も、「そもそも雅子さまは皇族の役割を理解していない」「皇太子夫妻は次期天皇皇后に相応しくない。皇籍離脱して、次期天皇は秋篠宮に」とか言ってる右翼の知識人もいましたね。https://t.co/mEd4MpiBSj 
>TOKYO DEMOCRACY CREW 天皇への一切のシンパシーや政治利用を拒絶する厳格な左派・リベラルの拘りをよそに、天皇生前退位問題は否応なしに政局になろうとしています。天皇自身が憲法に抵触する危険を犯してまでもたらしたこの局面に対して、ネグレクトはあり得ません。コミットするのみです。
>sava コミットは必至ですね。コミットのしかたですね。シンパシーにひきずられすぎず、天皇制への厳格な態度に頑なになりすぎず。
 
そうです。天皇へのシンパシーはいらないが、他方で主体的にコミットすれば「天皇制にとりこまれる」みたいな批判も的外れです。「とりこまれる」論者は天皇制が自動崩壊する日までなにもしないでしょう。
改憲阻止の文脈で主体的に関与すればいい。
八木秀次、大原康男ら右翼論客は、天皇の話を必死に聞こえないふりして「やはり退位はなしで摂政おくしかない」と言い張ってる