2016年5月6日金曜日

NHKの 憲法記念日報道 がヒドすぎる!

 憲法記念日またはその前日の護憲イベントと改憲イベントについてのNHKの報道ぶりについて、LITERAが取り上げました。
 護憲イベントへの参加者数は常に改憲イベントへの参加者数を圧倒的に上回っているのですが、NHKは国民にそのことが伝わらないようにして報じているということです。
 実に巧妙な印象操作が行われているわけです。
 この印象操作はNHKにおいては実は日常的に行われているもので、見解の割れるテーマについては常に政府与党の言い分を最後にもってきて完結させる、国会論戦のハイライトの報道では、必ず政府側答弁をもって終わらせることが徹底されているということです。
 まことに巧妙です。こうしたサブリミナル(意識下に働きかける)なテクニックは商品の広告などで使うことは禁じられていますが、「公共放送」の政治的活用面ではふんだんに悪用されているというわけです。恐るべきことです。
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NHKの「憲法記念日」報道がヒドすぎる!
「改憲反対」が増加した世論を無視し改憲派の盛り上がりだけを強調
LITERA 2016年5月4日
 本サイトでもすでにお伝えしたように、NHKの最新世論調査で、憲法改正について「改正する必要があると思う」が27%、「改正する必要はないと思う」が31%という数字が出た。これは過去5回行われた同様の調査のなかでも、「改正の必要なし」の回答がもっとも多く、「改正の必要あり」の回答がもっとも少ない結果となった。
 
 9条改正も「必要ある」が22%だったことに対して「必要なし」が40%、「集団的自衛権行使可能」も「賛成」25%、「反対」27%と、どちらも改憲必要なし、安保法も反対が上回っていることを示した。とくに「立憲主義を重視すべきか」という問いには、「重視すべき」69%、「重視する必要ない」12%という結果が出ており、国民が安保法成立に際して立憲主義を無視した安倍政権に不信感を募らせているかがよくわかるものだった。
 朝日・毎日新聞、共同通信社でも改憲については同じ傾向が出ていることからも明らかなように、安倍首相が改憲に意欲を示していることに対し、多くの国民が危機感を覚えているのだ。
 
 ところが、そのNHKの憲法記念日前夜と当日の報道は、こうした民意とはまったくかけ離れたものだった。それも、国民の改憲への危機感が高まっていることを無視したというようなレベルではない。護憲、改憲を公平に扱うことすらせず、明らかに改憲が盛り上がっているかのような誘導を行ったのだ。
 たとえば、5月2日の『ニュース7』と『ニュースウオッチ9』(以下『NW9』)では、一応、この世論調査結果を伝えていた。しかし、そのあと“この結果を専門家はどう見るのか”とナレーションが入るのだが、最初に登場したのは「改憲に向け議論を」と訴える、改憲派の憲法学者である井上武史九州大学准教授だったのだ。
 
 井上准教授は、安保法を違憲ではないとした数少ない憲法学者のひとりだが、この日も、「70年間憲法が変わっていないということは70年間の社会の変化を憲法がまったくとらえてないということ」「誰が読んでもわかるかたちに変えるのは立憲主義の観点からも望まれる」と解説。つづけて、「いまは改憲すべきではない」という立場をとる石川健治東京大学教授のVTRが流れた
 これはいわゆる"両論併記"ではない。意見が多いほうから取り上げるのが"通常"のルールであるうえ、今回は「憲法改正は必要がない」という意見が前年より多くなったのだから、まず、その分析を行うべきだろう。ところが、『ニュース7』『NW 9』はなぜか数としては少ない「改正の必要あり」の主張をまず流して、調査結果をごまかしてしまったのである。
 
 だが、もっと醜かったのは、憲法記念日当日の『NW9』だ。憲法記念日は護憲派・改憲派がそれぞれ集会を開いたが、実は両者のイベントの盛り上がりには極端な差があった。
 たとえば、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」や「市民連合」などによる護憲派団体が主催したイベントには主催者発表で約5万人が集まった。一方、安倍首相がビデオメッセージを送った「民間憲法臨調」と日本会議のダミー団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」による改憲派イベントの参加者は主催者発表でたったの約1100人
 民放各局はこの2つのイベントを公平に並べて報道していたが、なぜか『NW9』ではそれらの集会には触れず、昨年、自治体の施設で開かれた憲法の催しが増えたという調査の結果をクローズアップ。
 
 しかも、それはたんに自治体調査の結果を伝えただけではなかった。レポートの最初に登場したのは、改憲派である「新しい憲法をつくる国民会議」が3日に開いた集会。「大勢の人たちが集まっています」「およそ500人が集まりました」と隆盛ぶりをアピールするのだ。一方、護憲派については1日に開かれた映画上映会の模様を放送したが、何人が集まったかといった説明はなかった。
 レポート内容は自治体施設の利用実態についてだったが、その扱い方は明らかに"改憲側に風が吹いている"という印象を残すものだった。また、自治体調査の結果を報道するにしても、その前に3日に開かれたイベントに触れないというのは、いかにも不自然。5万人が集まった護憲派イベントは日本テレビやフジテレビでさえ伝えていたが、この映像を『NW9』はどうしても流したくなかったとしか思えない。
 
 このように、一見、両論併記に見せかけた上での"憲法学者も改憲にお墨付きを与えているし、改憲イベントにも大勢詰めかけて盛り上がっている"というイメージづくりは、改憲を国民運動化したい日本会議系の極右陣営にとっては都合の良いものに違いない。そして、そうした"極右寄り"報道の最たる例が、2日に放送された『クローズアップ現代+』だろう。
 この日の『クロ現+』のテーマは、「密着ルポ わたしたちと憲法」。改憲派の後には必ず護憲派の主張が差し挟まれるという忙しない構成で、「誰からも文句が出ないよう両論併記しました!」と言わんばかり。
 しかも、改憲の国民運動化に邁進する「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の設立を主導したのが日本会議であるとし、「中心メンバーは60年代から改憲を訴え、旧軍人や宗教団体などの保守系の組織を統合してこの会を設立しました」と紹介するなど、改憲派の実態に踏み込む内容でもあった。なかでも、"日本会議の中心メンバー"として百地章日本大学教授が登場し、「首相が突然(改憲議論に)入ってきたわけではなく、これまでの運動のなかで首相が誕生した」と発言したことは、"改憲運動あってこその安倍首相"という実相を明示するものだった。
 
 そのほかにも日本青年会議所や「頑張れ日本!全国行動委員会」、神社本庁などという政治や宗教、歴史修正主義などの団体が混ざり合いながら改憲運動が進んでいるという点を取り上げたことは、意味がないとは思わない。しかし、この『クロ現+』が歪なのは、そうした団体の主張を無批判に紹介し、それぞれの団体に属する"個々人の考え"としてまとめ上げた点だ。
"首相もかかわる団体による改憲運動とその主張"という切り口ならば、当然、戦前回帰を目指す現政権の改憲内容の危険さに話題は及ぶ。だが、"個人の考え"というエクスキューズのせいで、改憲の問題点はまったく浮かび上がってこない。改憲派が推進する自民党憲法改正草案は、個人の権利を剥奪し、人権さえ制限される可能性があるという"危険な内容"も、結局は個人の意見というかたちに収められ、矮小化されていってしまったのだ。
 
 現に、VTRに登場した前出の百地氏は、菅義偉官房長官が「(安保法制を)合憲だとする憲法学者はたくさんいる」と大ホラを吹いた際に真っ先に名を挙げた憲法学者だが、番組中、そうした百地氏のプロフィールは一切紹介されなかった。それは、極右の政治運動に長くかかわってきた人物が憲法学者として政権をバックアップしているという事実を隠すためだったのではないか
  司会の伊東敏恵アナウンサーは番組の最後に「主権者はわたしたち」と強調し、「そのために議論を積み重ねていく必要がある」とまとめたが、いま、改憲内容を具体的かつ国民に広く説明すべきは安倍首相であり、なのにその論議から安倍首相が逃げているのが、いま現在の状況だ。
 
 いや、逃げているのは安倍首相だけではない。憲法記念日の特別番組として3日に生放送された『憲法70年 9党代表に問う』で、前述したNHKの世論調査結果についてどう読み解くか?と質問された高村正彦自民党副総裁は、数秒間フリーズ状態に。そのあと高村副総裁が絞り出したのは「平和安全法制ができて集団的自衛権の一部を限定的に行使できるようになったため、喫緊の必要性が減じたということは言えるかもしれない」という、無理矢理にも程がある話だった。
 その上、高村副総裁は「急に数字を読み解けと言われても」と、司会のNHKアナにキレだす始末。安保法制での暴走は棚に上げて「(改憲の)発議で強引なことをするなんてありえない」と言う一方で、「憲法改正をどこかしたい」と漠然すぎる回答を行った。
 
 政権には何のツッコミも入れられず、両論併記と見せかけて改憲へ誘導する──。3月24日に行われた高市早苗総務相の「電波停止」発言に抗議するジャーナリストたちによる会見では、岸井成格氏が「(NHKは)いつも最後に政府与党の言い分をくっつけることでニュースを完結させようとしている」と指摘し、大谷昭宏氏も「(国会論議のニュースは)必ず政府側答弁で終わらないといけない」と、NHK内部でルールができあがっていることを滲ませていた。しかし、NHKの憲法関連の報道を観ていると、さらに政権への忖度ぶりに拍車がかかり、世論さえ無視しはじめている。かろうじてドキュメンタリーでは政権に一矢報いるような番組も少なからずあるものの、今回、憲法にかんするドキュメンタリーが放送されることはなかった。
 
 こうして危険な憲法改正の中身が報じられないまま、7月の参院選になだれ込めば、どうなるのか。そう考えると、NHKは公共放送の有名無実化を認め、国営放送なのだと開き直ってもらったほうがまだ害が少ないのではないか。そんな気さえしてくるのだった。 (水井多賀子)