2016年4月5日火曜日

TPPのISD条項こそが一番の問題 国家主権がなきものに

 米国がTPP協定を批准するかどうかについては、大統領候補のトランプやサンダースが反対を表明し、クリントンも今や反対を表明せざるを得なくなっています。そんな風に米国の見通しが不明な中で、安倍首相だけがなぜか批准に向けて一人突出していて、4日も、政府与党連絡会議で、日本が率先して動くことでTPP協定の早期発効に向けた機運を高めていきたいと発言しました。全く何を考えているのでしょうか。不可解というしかありません。
 まさかいま八方ふさがり状態にある政権が、ここでいいところを見せようとでもいうのでしょうか。何もかもが大間違いにできている人間です。
 
 自民党は野党時代にはTPPの危険性をよく認識していました。2012年の(政権交代につながった)衆院選の公約でも、TPPについては「国家の主権を損なうようなISD条項には反対する」とキチンと明記していました。
 そうすると安倍首相にはその意味が分かっていなかったということなのでしょうか?
 
 ISD条項こそが米国にとっての「打ち出の小づち」であって、TPP条文に規定されていないことであったとしても、ISD条項で提訴しさえすれば米企業のあらゆる欲望が思いのままに達成されるのです
※  3月26日 TPP批准阻止に全力をつくすしかない
 
 TPP協定に中野剛志氏などとともに最も早い時期から警鐘を鳴らしていた鈴木宣弘東大教授も、「TPP条文に規定されていなくてもISD条項で提訴される危険性を忘れてはならない」と述べています。
 4年前に米韓FTAを発効させた韓国の惨状がそれを物語っています。韓国民は批准国会の前にそのことをよく認識していて大反対運動を行いましたが、強引に批准されてしまいました。
 
 TPPを取り上げたしんぶん赤旗の2つの記事とNHKニュースの記事を紹介します。
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TPPのISDS(投資家対国家紛争)解決条項
自治体が不利益被る 「遺伝子組み換え表示」など提訴も
しんぶん赤旗 2016年4月3日
 後半国会の焦点になる環太平洋連携協定(TPP)問題で、大きな懸念として浮かび上がっているのが、企業が国を訴えることのできるISDS(投資家対国家紛争解決)条項です。国や都道府県、政令指定都市の行政や公共事業にも不利益を与える可能性があります。
 
 「米国企業などに対する海外市場でのいっさいの差別と不利益を認めないことが、TPPの大原則です。『遺伝子組み換えでない』という食品表示なども、TPP条文に規定されていなくてもISDS条項で提訴される危険性を忘れてはなりません」。鈴木宣弘東京大学大学院教授(農業経済学)はいいます。
 
 たとえば、政令市の学校給食で国産・地元産の食材を確保しているところが多くありますが、これを米国企業への差別だといってくることがありえます。
 実際、韓国のソウル市では学校給食条例で遺伝子組み換えでないものを使うとなっていましたが、米韓FTA(自由貿易協定、2012年韓国で発効)により、米国企業から訴訟に持ち込まれたら負ける訴訟費用も高いというので、同市は前もって条例を変更してしまいました。
 韓国では食料にかぎらず米国産を「差別」する可能性が指摘され、数多くの地方自治体レベルの条例を「自主的に」廃止・修正することになりました。
 米国ではTPPは連邦法にしか影響しないので、州法による公共事業の国産義務づけは影響を受けません。
 
 一方、日本ではTPPにより国の公共事業だけでなく、県・政令市の事業も国際入札にかける、入札のさい地元の業者を優先することを「差別」だと訴えられる可能性があり、地方の雇用にも影響を与えることになります。
 
 
TPP推進 国の姿勢異常 市民団体報告会 批准阻止を訴え
しんぶん赤旗 2016年4月4日
 環太平洋連携協定(TPP)の承認案と関連法案の国会審議入りを前に、アジア太平洋資料センター(PARC)など市民団体が3日、協定分析報告会を東京都内で開き、TPP批准阻止を訴えました
 報告会は、TPP署名直後に次ぐ2回目。冒頭、PARCの内田聖子事務局長は、米国議会でTPP審議の見通しが不透明な中で、1国だけ突出して批准を急ぐ日本政府の異常な姿勢を批判。国会審議に向けて「各方面へTPP反対を働きかけていきたい」と述べました。
 
 会合では、市民団体のTPPテキスト分析チームの報告集「TPP協定の全体像と問題点」の増補・改訂版(第4版)が公表されました。報告会は、(1)農産品関税、食の安心・安全(2)医療・医療品、国民皆保険(3)政府調達・国有企業(4)金融・投資・サービス貿易―の4部にまとめてTPP分析の結果を紹介。薬価の決定過程に製薬企業が影響力を及ぼす仕組みが導入されるなど、多国籍企業本位となっているTPPの特徴を解明しました。
 
 
首相 TPP協定早期発効へ与党側に協力要請
NHK NEWS WEB 2016年4月4日 
安倍総理大臣は政府与党連絡会議で、TPP=環太平洋パートナーシップ協定の承認を求める議案などが5日から国会で審議が始まるのを前に、日本が率先して動くことで協定の早期発効に向けた機運を高めていきたいとして、与党側に協力を求めました。
 
後半国会の焦点のひとつ、TPP=環太平洋パートナーシップ協定の承認を求める議案と協定発効後の農家への支援策などを盛り込んだ関連法案は、5日の衆議院本会議で安倍総理大臣も出席して質疑が行われ、審議に入ることになっています。
これについて、安倍総理大臣は政府与党連絡会議で、「日本が率先して動き、早期発効に向けた機運を高めていく。後半国会において、与党の引き続きの協力をよろしくお願いしたい」と述べ協力を求めました。
また安倍総理大臣は、来月の伊勢志摩サミットについて「世界経済が最大のテーマとなる。世界経済の不透明感が増すなかG7・主要7か国が、世界経済の持続的かつ力強い成長をけん引しなければならない」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は、「G7による政策協調が求められているなか、日本としてどのような貢献をしていくべきか、世界のリーダーたちと議論を尽くしながら見極めていきたい」と述べ、伊勢志摩サミットでの議論を踏まえ、新たな経済対策の具体的な検討に入る考えを重ねて示しました。

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