2016年4月22日金曜日

<熊本大地震> 首相の地元山口県での「激甚災害指定」と著しく異なる対応 

 安倍首相は熊本大地震は「大震災級の事態」ではないとして、消費税の増税を延期の要因にはならないと、18日、衆院TPP特別委員会で答弁しました。15日から出されている熊本県の蒲島知事から『激甚災害指定』の要請に対しても依然として消極的です。
 
 LITERAは、それは2013年7月28日に発生した、安倍首相の地元山口県と島根県での豪雨災害のときの対応とは大違いで、この時には4日目に官房長官が事実上激甚災害指定を約束していたことを明らかにしました。
 
 今回のような大地震の連鎖は観測史上初めてのことだと言われますが、安倍首相は何故か事態を小さく小さく見せようとしています。一度は現地視察を思い立った筈なのに今では視察の話は出てきません。
 このまま現地に行くこともなく月末に欧州訪問に旅立つつもりなのでしょうか。
 
 LITERAの記事を紹介します。
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熊本大地震「激甚災害指定」に消極的な安倍官邸が3年前、
山口県の豪雨ではすぐに指定を明言していた! なぜ?
LITERA 2016年4月20日
 もしかして、安倍首相は今回の熊本大地震を必要以上に小さく見せたい理由でもあるのだろうか。一昨日、18日の衆院TPP特別委員会で、熊本大地震を受けて消費増税見送りの可能性を聞かれた安倍首相がこんな答弁をした。
「大震災級の事態にならない限り予定通り引き上げていくという基本的な考え方に変わりはない」
 ようするに、熊本大地震は「大震災級の事態」ではない、というのである。20日時点で死者48人、重軽傷者1000人以上、避難者19万人以上、全壊家屋は益城町だけでも750棟にもおよぶ。これのいったいどこが大震災ではないのか。被災地の人々の感情を考えると、あまりに無神経な発言と言っていいだろう。
 
 これだけではない。安倍首相の熊本への消極的姿勢を示すのが、例の「激甚災害指定」をめぐる問題だ。
 激甚災害指定については、熊本県の蒲島郁夫知事が15日の段階で早期指定を求めていたが、安倍政権は現時点でも指定を行っていない。そして、そのことを国会で追及された安倍首相は、やはり18日の国会で、「事務的な数字を積み上げていかないと法律的にできない」と弁解した上、「(激甚災害指定が)今日、明日、明後日ということになったとしても災害支援には何のかかわりもないこと」と突き放すような発言をしている。
 ネット上の安倍応援団も同様の主張をして、安倍首相を後押ししている。曰く「激甚災害指定は予算措置であって、慌てて指定する必要はない」「民進党は、激甚災害指定の意味がわかっていない」……。
 
 しかし、こうした安倍官邸が3年前の自然災害では、今、語っていることとまったく対照的な発言、行動をしていたのをご存知だろうか。
 それは、2013年7月28日に発生した、山口県と島根県での豪雨災害のときのことだ。死者・行方不明者は4人、家屋被害は全壊49棟、半壊66棟におよび、安倍首相の地元・山口県も大きな被害を受けた。
 すると、それから4日後の8月1日の会見で、菅義偉官房長官が「山口、島根両県で先月起きた記録的な豪雨被害を激甚災害に指定し、復旧を支援する」という考えをはっきり示したのだ。
 しかも、菅官房長官はこのとき、「激甚災害の指定には時間がかかっていたが、できるだけ速やかに地元の要望に応えるようにと指示した」と、迅速化のために指定の手続きを変えることまで明言したという。
 当時の報道には、〈被害額が確定していない段階でも速やかに激甚災害に指定できるよう運用改善を指示したことを明らかにした〉(毎日新聞)とある。「事務的な数字を積み上げていかないと法律的にできない」という今回の安倍首相の答弁と完全に矛盾する対応ではないか。
 菅官房長官の、地元の要望を先回りするような素早い態度表明は、おそらく、山口県が安倍首相の地元だからだろう。
 
 実際、安倍首相自身の態度も今回とはまったく違うものだった。安倍首相は熊本大地震ではいまだ視察を見送っているが、このときの豪雨災害では、避難勧告が一部でまだ出ていた8月4日に現地を視察。山口県のJR山口線や県道萩津和野線の被災現場を視察した際、報道陣に対し、「早く復旧が進むよう全力を挙げる」と言い、被災地復旧のために交付税の繰り上げ交付、そして激甚災害指定をすると明言した上、こうはっきり語っている。
「激甚災害指定に向けた作業を加速化させるよう関係閣僚に指示した」
 この態度は今回の「今日、明日、明後日ということになったとしても災害支援には何のかかわりもないこと」という発言と大違い。ようするに、安倍首相も菅官房長官も、首相の地元の問題となったら、「手続きが」などと面倒なことは一切言わず、閣議決定のないままに指定を明言。やり方を変えて、迅速に指定することまで口にする、サービスぶりを見せるのだ。
 
 激甚災害指定を急がせる発言をしていた自民党幹部は他にもいる。民主党政権下の2011年9月、台風12号で和歌山県などが甚大な被害を受けたが、その和歌山県を地元とする自民党の大物、二階俊博・現自民党総務会長だ。
 9月1日から5日にかけた記録的な大雨で、和歌山では56名の死者(そのうち6名は災害関連死)が出たが、二階氏は9月7日の時点で「復旧に必要な資金を用意することを発信するだけでも現地は安心する。それが政治の役割だ」と、激甚災害の早期指定を訴えた。9日の災害対策特別委員会においても、野田佳彦首相および平野達男防災担当相に対して早期の激甚災害指定をこう迫った。
「総理大臣がわざわざ現地へ行かれるならば、ちょうどいい機会ですから、総量はなくても、見ればわかるんですよ」
「これが激甚災害でなければ、何を激甚災害というか」
 その後、この台風12号は激甚災害指定を受けたが、これを二階議員はHPで、〈平野防災担当大臣に被害額が集まって来るのを待って激甚災害の指定をするのではなく、総理大臣も現地入りするのだから被害の大きさは見ればわかる、指定しない理由があれば説明してもらいたいと、一刻も早い迅速な対応を強く求めていた〉と自慢げに記述している。
 つまり、このときは、自民党の重鎮が「事務的に数字を積み上げている場合じゃない。見れば被害はわかるだろう!」と追及し、激甚災害指定を勝ち取っているわけだ。それが熊本では、そんな声はほとんどなく、安倍首相の「事務的な数字を積み上げていかないと法律的にできない」というような官僚的対応を放置している。
 
 実際の閣議決定は先だとしても、早い時期に明確に「指定」を明言すれば、地元の安心感と動きはまったく違ってくる。安倍応援団は激甚災害指定は予算措置にすぎないというが、しかし、予算のお墨付きを与えることは、被災地に想像以上に大きな力を与えるのだ。
 しかし、熊本では、山口県や和歌山県のときのような動きはほとんどない。いったいなぜか。
 両者のあまりに違う対応の差を見ていると、熊本県の被災地選出議員に安倍首相を動かせる自民党の有力議員がいないからなのか、という気さえしてくる。地元選出の議員の力で、激甚災害指定への姿勢が決まるなんてことはあってはならないのだが……。(田部祥太)