2016年3月22日火曜日

日中関係を壊す伊勢志摩サミット 安倍首相は落第生の典型(天木直人氏)

 尖閣諸島に中国漁船が出没するようになって以降、安倍首相は国際会議や外国訪問時のトップ会談で常に中国を排撃してきました。
 その後中国による南シナ海の人工島問題が生じると、今度はそちらに攻撃のポイントを移しましたが、いわば中国主敵論は一貫しています。その思いは異常で、先般多数を頼んで極めて強引に集団的自衛権の行使の法制化を行ったのも、その目的は南シナ海に出撃できるようにすることにあると酒席で述べた(オフレコ)のは有名な話です。
 しかし安倍氏がどんなに中国攻撃の熱に浮かされようとも、諸外国のリーダーたちの間には別に中国排撃論などはなくて、安倍首相の口吻だけが浮き上がっているという感じです。
 
 元外交官の天木直人氏が、5月に行われる「伊勢志摩サミット」でも安倍首相が中国包囲網の形成を目指していることについて、2回に渡って厳しく批判するブログを書きました。
 安倍氏のそういう態度は、「あれこれ手を出してどれ一つ合格点を書けない落第生のようなものであり、伊勢志摩サミット場違いな対中包囲網の舞台にしようとするのでは、日中関係は破滅的に悪化する。安倍首相が議長となる伊勢志摩サミットは、歴史に残る最悪のサミットになるに違いない」と述べています
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伊勢志摩サミットで張り切る安倍首相は落第生の典型だ
天木直人 2016年3月21日
 きょう3月21日の日経新聞の経済面「核心」というコラムで,平田育夫記者が「安倍議長の器量を問うG7」と題して書いている。 
 「毎年のお祭り行事と化して久しい主要7カ国(G7)首脳会議だが、5月末の伊勢志摩サミットは議長役の安倍晋三首相にとっては幸か不幸か、とても大事な会議になりそうだ・・・」
 
 そういう見出しで始まる平田記者のその記事の要旨はこうだ。
 すなわち、アベノミクスの金融緩和策が円安誘導ととられかねない日本は、サミットで苦境に立たされる、米国議会のTPP批准にも悪影響を及ぼしかねない、さりとて積極財政に舵を切ると、ただでさえ政治的に消費税増税見送りに傾いている時に、財政再建に逆行することになる、果たして安倍首相は伊勢志摩サミットで主要国の経済政策協調を実現できるのか、と。 
 こんな記事を読むと、やはり伊勢志摩サミットの最大の問題は、日本にとっても世界にとっても、経済問題であることがうなずける。 
 そうであれば、世界経済問題に専念すればいいのに、安倍首相は、中国包囲網や対ロ外交など、緊急必要性のないものまでやりたいと張り切って、中国や米国との関係を悪化させようとしている。
  まさしく劣等生の受験勉強のごとくだ。 
  あれこれ手を出して、どれ一つ合格点を書けない落第生の典型だ。 
  不幸な伊勢志摩サミットとなること間違いない(了)
 
 
日中関係をぶち壊す事になる伊勢志摩サミット
天木直人 2016年3月20日
 特大のスクープを見つけた。
 きょう3月20日の栃木県の地方紙「下野新聞」が報じた。
 中国が、5月の伊勢志摩サミットで、南シナ海問題を取り上げないように日本側に要請していた事が19日にわかったと言う。
 2月末に行われた外務次官級協議で申し入れていたという。
 これは大スクープだ。
 地方紙である下野新聞がそのような大スクープを独自で書けるはずがない。
 おそらく共同通信の大スクープに違いない。
 やがて大手メディアが報じるだろう。
 
 こんな重要な中国側の申し入れについて、次官級協議ではもちろん結論が出るはずもない。
 これは安倍首相の決断次第だ。
 外務官僚はあわてて官邸に報告し、官邸は頭を抱えて相談している最中に違いない。
 私だったら南シナ海問題などサミットの議題にはしない。
 中国に貸をつくる。
 これをきっかけに日中改善を一気に進める。
 サミットの議題は世界経済問題の解決とテロ対策で十分だ。
 サミット参加国の首相の中で南シナ海問題を選挙区的に取り上げたいと考える首脳は皆無だ。
 米国でさえ、この問題をサミットで取り上げたいとは思っていない。
 この問題は米中の二国間で解決すべき問題だ。
 
 しかし、安倍首相は、この中国の要請に応じないだろう。
 中国による人工島造成や軍事拠点化は国際社会は容認しないと世界に喧伝したがる。
 かくして、伊勢志摩サミットは、場違いな対中包囲網の舞台となり、日中関係は破滅的に悪化する。
 安倍首相が議長となる伊勢志摩サミットは、歴史に残るサミットになるに違いない。
 もちろん、これまで日本が議長国として開催して来たサミットの中で、外交的に最悪、最低のサミットとして、である(了)