2016年3月20日日曜日

20- 政府がワーキングプアーの根源であってはならない。

日々雑感 2016年3月18日 
 政府は平均給与が21万円と民間企業平均より10万円も低い保育士の給与改善を目指すという。しかし、その対策として出て来た予算は平均給与を2千円上げる程度の僅かな賃上げに過ぎない。
 官僚や公務員は民間給与平均よりも高額な報酬を手にしているにも拘らず、その委託事業で働く保育士や介護士の給与は彼らが手にしている平均給与の半分以下だ。彼らがワーキングプアーを作り出している元凶だという自覚があるのだろうか。
 
 委託事業だけではない。公的機関に大量に雇用されている臨時職員や嘱託職員の給与の低さも問題だ。同一労働同一賃金という大原則が蔑にされ、むしろ正規公務員よりも酷い単純労働を強いられたり、あるいは受付窓口といった若い女性のみを置く「性と年齢」差別が公然と行われ、それを可能にするために一年契約の臨時職採用をするのが慣行になっているという。
 そして彼らが手にする賃金は正規公務員給与の半分にも満たない、というのが現状だ。ワーキングプアー対策を推進すべき政府や地方自治体がワーキングプアーを作り出している現実を政府は御存知なのだろうか。
 
 それだけではない。政治家の地元私設秘書の給与が低いのも問題だ。もしかすると最低賃金基準を下回っているのではないか、と思われるほど低い給与しか手にしていない私設秘書もたくさんいる。だから彼らは私設秘書を手掛かりとして地方自治体の議員に立候補することになり、地方議員に国会議員の私設秘書出身者が多くなっている。
 地方議会も国会議員の系列化が進んでいるのも上記のような私設秘書の劣悪な雇用が関係している。私設秘書上がりの地方議員たちは国会議員の集票マシンとして選挙時には動き、地方市民の代弁者というより国会議員の代弁者として市民に君臨するようになる。
 
 最低賃金を安倍自公政権が引き上げる目標を示したのは正しい政策だが、彼らが繰り出す政策は常に口先だけで終わっている。ワーキングプアーを作り出さないためにも最低賃金の引き上げは必要だし、同一労働同一賃金という大原則を社会の隅々にまで浸透させる必要がある
 子供の貧困率の上昇は格差の固定化をもたらす。安倍氏は給付型の奨学金に否定的のようだが、資源の乏しい日本にとって国民への高等教育は世界に通用する人材を得るためにも必要不可欠だ。そのために貧困が優秀な人材の勉学への道を閉ざす原因になってはならない。能力があって本人が望むなら誰でも高等教育が受けられる給付型奨学金を整備拡充する必要がある
 
 格差縮小にもっと強力な政策を打ち出す必要がある。そのためには企業の生産性を高め、豊かな社会を実現するためのエンジンを磨き上げる税制構造を創らなければならない。生産設備投資や技術・研究開発の減税を効果的なものにするため、法人税本税を引き下げるのではなく、そうした方向で努力した企業には減税で報いる税制へ移行すべきだ。
 個人消費を直撃している消費税を5%に戻して、富裕層への超過累進税率を復活させるべきだ。当然配当収入などに適用されている20%分離課税の税制を総合課税に戻すべきだ。金持ち優遇の税制を「応能負担原則」に戻すべきだ。
 
 自民党は愚かなことに消費増税に関して米国の著名な経済学者を招いて意見を聴取しているが、なぜ自分たちで勉強して、財務官僚の意思ではなく政治家自らの意思で税を決めるべきではないだろうか。米国人のご意見を聴かなければ政策を決められないという姿勢は外国による内政干渉を招くことにもなりかねない。まったくの愚行だという自覚すら持たない自民党国会議員たちのバカさ加減には驚きというより怒りすら覚える。
 日本は決して米国の貧困格差社会をお手本としてはならない。米国人の経済学者の意見を拝聴するよりも、日本を世界先進諸国と伍す国家に作り上げた明治の先人の行動に学ぶべきだ。