2016年2月21日日曜日

消費によるインフレは期待する方が無理

 虚妄のアベノミクスは破綻し、もはや収拾がつきません。
 安倍・黒田戦略と投機筋が協働して株価のバブルだけは達成しましたが、実態経済と無関係な株価のバブルがいつまでも続くはずはありません。当初から指摘され懸念されていた『異次元からの出口』の悲劇が迫っています。
 
 痛烈な皮肉で知られているあいば達也氏が、20日のブログで、なぜ政府が血眼になって目指しているインフレに向かうことがないのかを、簡単明瞭に説明しています。
 将来の見通し・老後の安定が約束されない政治の下では、庶民の財布が緩むことは決してないという話です。真っ当な政治を伴わない中であれこれと金融の策を弄してみても効果は上がりません。
 
 常に本筋の経済論で安倍政治を批判してきた植草一秀氏は、やはり20日、「政治は弱い者を支えるためにあるという原点」 と題するブログを書きました。あいば氏の主張に通じるものです。
 
 植草氏はブログの中で社会派経済アナリスト森永卓郎氏の書評を紹介しています。
 安倍・黒田で行われた乱脈な経済政策は本筋に立ち返ることでしか修復されないのでしょう。
 
(追記) 文中に「例の事件」とあるのは、植草氏が当時トップレベルの経済学者として、小泉・竹中(平蔵)内閣の新自由主義経済政策を徹底的に批判したために2度の痴漢行為をでっち上げられて、社会的に葬られようとしたことを指しています。
 政府にとって困る批判者が不可解な痴漢行為で葬られた例としては、近年の「東洋経済」編集長の痴漢事件があります。良く知られていたNHKアナウンサーも同じ目に会いました。
 痴漢事件は、1人の被害者(と出来れば1人以上の目撃者)がいれば簡単に構成することできるのでフレームアップには持ってこいです。
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欲張り爺な安倍の国 飄々たる国家のパイオニアになれる国
世相を斬る あいば達也 2016年02月20日
今夜は、見出しほど自信のある考えがあるわけではない。ただ、成長の時代を終えた日欧米の経済先進国においては、意図的に、日本の土地バブルや米国のリーマンショックのようなバブル経済を、作り上げない限り、虚飾の経済成長を成し遂げることは、明らかに無理な段階に入っている。日本では、安倍政権との相性の良い、政治的性向の強い黒田氏が総裁に就き、異次元金融緩和やマイナス金利政策を導入、意図的にバブルを生みだそうと試みている。しかし、笛や太鼓を持ちだし、企業の設備投資や研究開発関連の躍動を期待したが、まったく踊る気配すら見せない。 
 
最も大きなGDPを稼ぎ出す、個人消費においては、日銀のバルブ醸成政策が打ち出されたにも関わらず、株や為替市場で一時の騒ぎを起こさせたが、ベースとなる一般生活者の消費を促すことはなかった。消費増税の目的であった、社会保障の見直しは、削減志向だけが突出しているのだから、「自助」という印象を国民に強く印象づけてしまった。つまり、老後の拠りどころは、「銭だけだ」と、国民に受けとめられたと云うことになる。まして、中高年の勤労者も、ワーキングプワー化する非正規雇用の勤労者も、押しなべて、実質賃金を下げ続けているのだから、この状況で消費に精を出す人種は、一種クレージーだと云うことになる。 
 
国民が、国の為政を信用しなくなれば、当然だが、個人消費は伸びるどころか縮小方向に向かう。今の日本人の心は、「自助と共助」だけを拠りどころに、生活設計している傾向が強く、「公助」は人生のラッキーとして捉える傾向さえある。つまり、アベノミクスも日本政府も国会も、国民は信用に値しないと見限っているような状況だと言える。マスコミは、霞が関文学に彩られた、怪しい東大話法を紙面やテレビニュースで展開するが、その多くを眉唾的に見聞きしていると云うことだろう。政治や霞が関が動くたびに、利権構造が増殖するだけで、国民に利益回ってくる頃には、予算はあらかた、食い尽されている実態を理解し始めているのが現状認識と考えている。 
 
特に、高齢者の場合、日本の土地バブルを実体験している人が多いので、国家を信用した人々が滅びていった現実を目の当たりにしている。ゆえに、金を持っている年齢層の人々が、“私は貝になりたい”ではないが、一切、国の政策に踊ることはしないと、決心しているようだ。「持家での老後でも、年金以外に3千万円必要」等と喧伝されれば、余程のバカでもない限り、消費に回す人はいない。高齢者の皆様の老後は国家が、これこれ然々の政策を導入することで、墓場まで面倒みますよ!多くの高齢者が、これなら、不必要なまでに「銭」に執着しなくてもイイかも?と思える政策を出す。それがとば口になるに過ぎない。そのくらい、国民は官僚や政治家を信用していない。 
 
ゆえに、金融政策で、国民の個人消費を喚起すると云う発想は、如何に馬鹿げたものか、素人でも判ることだ。このような、単純明快な事実が判らないのが、専門馬鹿と云うもので、金融や電通のような広告宣伝手法で、国民を煽ればなんとかなるは通用しないのだ。政治の煽りに乗っかれば、外道な道に進むことになると、現在の裕福な高齢者たちは思っているし、中間層の人々も、年金でカツカツの生活の人々も、政府や経済諮問会議に居並ぶ有識者よりも、ゼネラリストとして、賢者だと言える。 
(後 略)
 
 
政治は弱い者を支えるためにあるという原点
植草一秀の「知られざる真実」 2016年2月20日
経済アナリストの森永卓郎氏が拙著 『日本経済復活の条件 金融大動乱時代を勝ち抜く極意-』 ビジネス社/1600円+税 http://goo.gl/tpuazU の書評を週刊ポストに掲載くださった。
この場を借りて深く謝意を表したい。
 
本書ではアベノミクスの問題点を指摘し、抜本的な政策転換の必要性を主張している。
政府批判に分類されることからか、積極的な販売姿勢を示してくれる書店が少ないのは事実である。そのような位置づけにある拙著をわざわざ取り上げてくださったことを大変にありがたく思う。
以下にその内容を転載させていただく。
 
【書評】 『日本経済復活の条件 金融大動乱時代を勝ち抜く極意』 植草一秀/ビジネス社/ 1600円+税
【評者】森永卓郎(経済アナリスト)
 著者は、かつて優秀なエコノミストとして、メディアから引っ張りだこの存在だった。それが、例の事件の後、大学を追われ、メディアからも遠ざかっている。しかし、失職後の著者を支えたのは、投資家たちだった。投資家はドライだから、経済分析の中身が優れていれば、それに対して対価を支払う。著者がリリースしているレポートは、そうした読者に強く支持されてきた。
 
 そうした経緯から、本書も投資家のための経済分析という体裁を取っている。しかし、その中身は、著者の日本経済論であり、経済政策論だ。それも、きちんとしたデータに基づき、論理的で、説得力のある経済分析に仕上がっている。
 著者の分析の切れ味は、前より上がっていると思う。それは、権力に媚びる必要が一切なくなったからだろう。著者が既得権勢力と呼ぶ、米国、官僚、大資本、利権政治勢力、マスメディアという権力を、著者は本書のなかで徹底批判している。誰にも縛られないから、的確な分析ができるのだ。
 
 そして、安倍政権の政策の基本を「弱肉強食」だとし、資本優先の成長戦略は、中短期的には株価を上げるが、長期的には消費の低迷で経済が疲弊すると警告する。その打開策として、すべての働ける人材を低賃金の労働力として引きずり出すことで、GDPの拡大を図る。それが一億総活躍社会の本質だというのだ。その通りだと思う。
 
 そして、本書の指摘で、もう一つわが意を得たのは、来年4月からの消費税増税は、断念すべきだという著者の主張だ。いまでさえ、消費が大きく落ち込んでいる状況で、再増税はできない。
 私は、今年6月、翌月に控えた衆参同時選挙の直前に安倍総理が増税凍結を発表すると考えていたが、著者は参院選後に、凍結発表の可能性もあると言う。8月以降に消費税凍結を打ち出して総選挙を行えば、東京オリンピックの時に、安倍総理が総理でいられる可能性が出てくるからだ。固くなった頭を解きほぐす柔軟剤としても、本書は、役立つのだ。
※週刊ポスト2016年2月26日号
 
因みに、森永氏が記述された投資家向けレポートとは、
『金利・為替・株価特報』 http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html  のことである。
安倍政権の経済政策を支持する人もいるだろう。一方に反対する人もいる。当然のことだ。
重要なことは、政策の本質を把握したうえで、主権者が自分自身の判断を持つことだ。
自分の目でものを見て、自分の頭で判断する。これが大事だと思う。
 
歴史作家の塩野七生女史が『ルネッサンスとは何だったのか』(新潮文庫)
http://goo.gl/k7mvS2  のなかで、「ルネッサンスとは、一言でいえば、すべてを疑うこと」
と記している。すべてを疑い、自分の目で見て、自分の頭で考える。この変化が生じたのがルネッサンスであったと指摘している。
いま私たちに求められていることはこれだろう。
メディアの誘導に惑わされずに、自分で考え、自分で判断することだ。
 
メディアは安倍政権の経済政策をアベノミクスと称して絶賛する。しかし、その内容は本当に絶賛に値するものであるのかどうか。
メディアが流布する論説を鵜呑みにせずに、その内容を確認し、自分の頭で考えることが大事だ。判断するのはそのあとでいいだろう。
政策の是非を判断するときに、一番大切なことは、その政策が誰のために行われるものであるのかを考察することだ。
安倍政権の経済政策の根本には、「大資本の利益を増大させること」が置かれている
そして、このことは同時に、「一般労働者の利益を減少させること」につながっているのである。
この本質を把握したうえで、その政策の是非を考察することが重要だ。
 
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