2016年1月24日日曜日

明文改憲の企て、緊急事態条項改憲論のまやかしを警告 宗教者九条の和集会

 「宗教者九条の和」と宗教者平和ネット」は20日、参議院議員会館で今年初めての「戦争法の廃止を求める宗教者祈念集会」を開きました。
 その様子を伝えるクリスチャン・トゥデイの記事を転載します。長文のため一部を割愛してありますので、詳細は記載のURLにアクセスしてご覧になってください。
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「安倍政権の明文改憲の企て、緊急事態条項改憲論のまやかし」を警告
「宗教者九条の和」集会で高田氏
クリスチャン・トゥデイ 2016年1月22日
仏教者やキリスト者などが作る平和運動団体「宗教者九条の和」と「平和をつくりだす宗教者ネット(宗教者平和ネット)」は20日、参議院議員会館(東京都千代田区)で今年初めての「戦争法の廃止を求める宗教者祈念集会」を開いた。
 
この中で高田健氏(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)は、「安倍政権の明文改憲の企て、緊急事態条項改憲論のまやかし」と題して状勢報告を行い、約40名の参加者に対し、「緊急事態条項は憲法には全く不必要」「非常事態条項改憲論を、戦争法、9条改憲と一体のものとして捉え、反撃を」と訴えた。
 
2012年の自民党改憲草案「第9章 緊急事態」の98条には、次のように記されている。
 
98条 緊急事態の宣言
 1項 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
 2項 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言にかかる自体において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。
 
これらの条項については、昨年5月にクリスチャンの若手弁護士である伊藤朝日太郎氏が、東京で行った講演の中で「9条の改憲よりも危険だ」「立憲主義の危機」だなどと警告している。(本紙関連記事:「クリスチャンの若手弁護士、立憲主義の危機について警告 『宗教者、教会が抵抗の拠点に』」)
 
長年にわたる護憲運動で昨年12月に韓国で第3回李泳禧賞を共同受賞した高田氏は、自民党による明文改憲策動の経過について語るとともに、「緊急事態条項附加の明文改憲論の急浮上と立憲主義の破壊」について説明。そして、「安倍政権による『9条改憲』→『新しい人権』→『96条改憲』→『集団的自衛権に関する憲法解釈の変更』→『緊急事態条項の導入』などというめまぐるしいほどの改憲の動きの変転は、彼らの改憲論がいかに立憲主義を無視、破壊して、憲法を自らの政権に都合の良いものに変えるための姑息きわまりないものであるかを示している」と述べた。
 
高田氏はまた、衆議院解散と国会の召集・参議院の緊急集会を規定した日本国憲法54条2項・3項に言及し、「万が一、衆議院議員が存在しない事態に緊急のことが生じた場合には、臨時の措置として、参議院がそれに対応できるし、参議院は選挙においても半数ごとの改選であり、国会が全く空白というようなことはあり得ない」「災害対応については『災害対策基本法』があり、首相は閣議で『災害緊急事態』を決め、布告を出して、緊急措置をとることができるとされている」と指摘。「戦争は自然災害とは異なり人災であり、防ぐことは可能だと考える」と主張した。
 
そして、緊急事態条項改憲論が「いかにまやかしの議論であるか」については、憲法学者の長谷部恭男氏・早大教授が月刊『世界』(2016年1月号、岩波書店)で「日本国憲法に緊急事態条項は不要である」という論文で論破し尽くしていると述べるとともに、1月10日付朝日新聞で長谷部氏が杉田敦・法大教授と行った「緊急事態条項は必要か」という対談で、「(日本は)憲法に緊急事態条項を設ける必要はありません」と述べていることに言及した。
 
また高田氏は、ナチスが「全権委任法(授権法)」を成立させ、ドイツのワイマール憲法が保障していた国民の諸権利を「永久停止」させて独裁政権を樹立した歴史に言及。「自民党の改憲草案の第3項のように『緊急事態』を理由に特別な統治状態を認め、『憲法の一時停止』を容認して民主主義を崩壊させたこの歴史的経験は忘れてはならない。この歴史が、今や安倍政権のもとで単なる歴史ではなくなり、現実の危険性を帯びたものとなりつつあることに注意を払わなくてはならない」と警告した。
 
さらに高田氏は、「この参院選に安倍政権が緊急事態条項の導入などを掲げて、改憲に必要な議席の確保に打って出ようとしていることは重大だ。緊急事態条項導入の改憲論を徹底的に暴露することで、この安倍改憲政権に反撃し、安倍政権与党を敗北させる課題は、この社会の針路を左右する、当面する政治闘争の最大の課題になった。戦争か、平和か。独裁か、民主主義か。この対置は決して大げさではなくなった」と述べた。
 
その上で高田氏は、「『戦争させない、9条壊すな!総がかり行動実行委員会』をはじめ、昨年の22015年安保闘争を闘った勢力が共同して、『安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合』という新しいプラットフォームを生み出し、参議院選挙において、野党の共同を要求し、安倍政権に挑戦している闘いは歴史的な闘い」だと結んだ。
 
その後、日本カトリック正義と平和協議会事務局長の大倉正美神父は、「今はある意味で“緊急事態”だ。重大なことを他のことにすり替えて、有名なタレントの事件のほうが大きく取り上げられて、政治状況が今どうなっているかはほとんど隠されている。結局私たちは昔と同じように全部だまされている。そういうのに負けてはいけないと思う。9条改憲よりも緊急事態条項のほうがもっと恐ろしい。なぜかというと、一切の権限を内閣が握って何でもできるから、三権分立など意味がなくなる。そういうことを受け止めていかないと、日本は本当に大変なことになるので、宗教者としても命をかけてやらなければならないと思う。これからも一緒に頑張りましょう」と語った。
 
また、「平和を実現するキリスト者ネット」(キリスト者平和ネット)事務局副代表の村瀬俊夫氏(日本長老教会牧師)は、「教会の中の雰囲気はこことは少し違うんじゃないか。皆さんもう少しのんびりしているし、あまり教会の中では政治的な話はしてもらいたくないということを何となく感じる。だから、私もこうした働きをしているこの緊張した空気を、何としてでも多くの信者の方たちに伝えたいと努力をしている」と語った。
 
村瀬氏はまた、1月4日と19日に東京都内で行われた大規模なデモに言及し、「多くの方々が集まっていらっしゃったので、すごい励ましをいただいた。その中に教会関係の方々がどれだけいたのかと思うと何となく心細くなるので、教会の善良な方たちにこうした問題意識を持ってもらいたいと、日頃一生懸命になっている」と語った。
 
「私自身が昨年11月ごろから心して実行していることがある。それは、宗教者として大事なことは祈り。短い聖書の言葉が書いてある『日々の聖句・ローズンゲン』(ベテスダ奉仕女母の家刊)を読んで食事の感謝をして食事をしていたときに、『安倍政権の暴走をやめさせてください。そして戦争法を廃止させてください。そういう力を与えてください』ということを祈っている。そうすると祈りの効果はやっぱりある。私の中からそういう気持ちが失せなくなった。そういう祈りをささげることによって、本当に安倍政権の暴走を止めなければいけない。戦争法も廃止に導かなければいけない。そのためには、一番大事なのはやっぱり参議院選挙で野党が共闘して勝利を得て、過半数をとれるよう頑張らなければいけないとひしひしと感じている」と村瀬氏は述べた。
 
その上で村瀬氏は、総がかり実行委員会が呼び掛けている「戦争法の廃止を求める2千万人統一署名」に言及し、「だから2千万人署名運動に参加して、お願いをしていこう。みなさんも頑張って2千万署名を達成しながら、夏の参議院選挙で野党共闘が本当に実っていくように、頑張っていこうじゃありませんか。できることをやっていこうじゃありませんか」と呼び掛けた。
(中 略)
集会の終わりに、日本キリスト教協議会(NCC)議長の小橋孝一氏(日本基督教団牧師)は、「私はいつも、宗教者の本領というのは『あせらず、諦めず』ということだと思っている。私たちは永遠の真理に立って物を考え、物を見て、そして行動しているわけだから、それは必ず実るということを覚えて励んでいきたい」と語った。
(後 略)