2016年1月21日木曜日

官製相場の破綻・年金積立金の巨額の運用損

 株価は21日も全面安となり、円は一時1ドル115円台になりました。
 東証株価が16,000円を切ると底割(底抜け)れし、円高になって1ドルが115円を切ると減益企業が続出すると言われています。
 アメリカの利上げ、中国の景気の減速、先の見えない原油安等と、いろいろと要因は挙げられていますが、日本のこれまでの株高は官製のもので、円安と年金積立金による株の買い支えに、海外の投機筋が便乗しそれに一般投資家も相乗りして演出されたものでした。その虚構が一旦くずれると暴落に歯止めがかからなくなります。
 
 夏の参院選に向けて政府は再び“官製相場”を仕掛けることが予想されますが、そう簡単に実現できるのか、もうそれを演出するだけの余力残っていないのではないかと見られています。投機筋が簡単には乗ってこないだろうということです。
 またそんな党利党略のために国民の積立金が空費されてはたまったものではありません。
 年初からの株価の下落で年金積立金の運用損7兆円を超えたと言われています。昨年の7~9月期にも約7兆9000億円の運用損を出しました。
 
 日刊ゲンダイが20日、株安についての考察と年金積立金の無謀な運用に警報を発する二つの記事を出しました。
 東京新聞の記事と昨年の日刊ゲンダイの記事も併せて紹介します。
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参院選まで爆騰狙うも 安倍政権の「官製相場」に余力なし
日刊ゲンダイ 2016年1月20日
 今年夏の参院選に向けて安倍政権は“官製相場”を仕掛け、株高になる。年初からの暴落は仕込みの好機だ――そうあおるメディアもチラホラあるが、そもそももし不発に終わったら……個人投資家はまたぞろ大損させられる羽目になる。
 
 「大した根拠もないのに株高を演出できたのは、日銀とGPIFの買い支えだけが理由じゃない。株価が下落しても『買い支えがあるから安心だ』と買いに走る投資家がいればこそ。そういう幻想の上に成り立っていたのが官製相場というわけで、日銀に対する信頼が失われ、投資家の心理が冷え込んだらジ・エンド。年初からの暴落が、それを象徴しています」と大手証券会社関係者はタメ息をつく。
 
  日銀は年3兆円だったETF(上場投資信託)の買い入れ枠を、今年から3.3兆円に増額。大発会(4日)に369億円、6、7、12、14日にそれぞれ352億円と計1777億円を投じ、せっせと買い入れたものの、暴落に歯止めがかからない。まさに焼け石に水の状態だ
 
 さすがに日銀の黒田東彦総裁も焦ったのか、18日の支店長会議で「リスク要因を点検し、必要な調整を行う」などと追加緩和を排除しない姿勢を強調してみせた。ところが、18日の平均株価は3営業日続落で、3カ月半ぶりに終値で1万7000円を割り込んだ。ざまあない。
 
 「ETFを3000億円増額といっても、日銀は02~10年の金融不安で銀行から買い取った株式を4月から年3000億円ペースで売却するので、行って来いです。そもそも次で最後とされる“黒田バズーカ”も、市場では『それほど効果は期待できない』ともっぱら。日銀に対する信頼はとっくに失われています」(日銀番記者)
 
  135兆円の年金資産を運用しているGPIFにしたって、それほど余力は残っていない。
 「昨年9月末時点で国内株式は22%、30兆円運用していますが、基本ポートフォリオは25%。官製相場の演出に使える額は単純計算で差し引き残り3ポイント、約4兆円です。参院選に向けて株高を演出しようと、仮に40営業日かけて突っ込んだとして1日1000億円。1日の売買金額2兆数千億円の東証で、売買の約6割を占める外国人投資家に売り浴びせられたら、とても太刀打ちできませんよ」(前出の大手証券会社関係者)
 安倍政権が躍起になって笛を吹き、日銀とGPIFが買い支えようとしても、投資家が踊らなければ官製相場は成立しないのだ。株式評論家の倉多慎之助氏が言う。
 
 「株価の底値と天井をつけるのは、個人投資家です。株高を後押しする投資家の信頼を失えば、いくら“官”がお金を突っ込んでも、相場は動きません。日銀にもGPIFにも、もはや“神通力”はない。やれ参院選相場だ何だと騒いだところで、不発に終わる可能性が高いでしょう」
 
  政権の思惑だけで市場を動かし、投資家をないがしろにしてきたツケが回ってきそうだ。
 
 
株暴落でGPIF運用損 「消えた年金」は2週間で7兆円突破
日刊ゲンダイ 2016年1月20日
 平均株価の下落幅は、大発会からの10営業日で2000円を超えた。この間、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用損が7兆円を超えたというショッキングなデータが飛び出した。国民の年金はいよいよヤバくなってきた。
 
  金融評論家の近藤駿介氏(アナザーステージCEO)がこう指摘する。
 「GPIFの2015年7~9月期の公表資料をベースに試算したところ、年初から先週末15日までの間に約7兆3800億円の損失を出した可能性が高いことが分かりました。日経平均の大幅安に加え、海外株や外債も値を下げているからです。7~9月期の運用損約7兆8899億円に迫る勢いです」
 
  約135兆円の運用資産を持つGPIFは昨年、基本ポートフォリオ投資先比率を大幅に組み替えた。国債35%、国内株25%、外債15%、海外株25%などで構成されている。
 近藤氏は7~9月期のポートフォリオを維持しているとの仮定で、昨年末時点の資産推計額をハメ込み、収益率のベンチマークごとに試算を行った。すると、GPIFの運用資産は年初から15日までの時点で5・26%も目減りしていたのである。
 
  国内市場の値動きを見ただけでも運用成績はヒドイありさまだ。国内株、外債、海外株は軒並みマイナスだし、円高も進行している。唯一プラスなのは、皮肉にも6割だった構成比率を一気に引き下げた国債だけだった。株安、円高がさらに進めばGPIFの損失はさらに大きくなる。
 
 「安倍首相は国会答弁で〈民主党政権下の累積収益額は4.1兆円だったが、それ以降の収益は33兆円プラス〉〈年金運用は長期的に見てどれぐらい収益を上げているか〉などと強弁していましたが、問題は収益だけではありません。国民が知りたいのは、将来の年金支払額に対してGPIFの資産がどれほど残っているのかということ。保険料が引き上げられ、支給額が切り下げられている現状からいって十分な資産が残っているとは考えにくい。その状況でハイリスクな株式への投資割合を引き上げている場合なのか。野党はこのあたりをガンガン攻めるべきです」(前出の近藤駿介氏)
  これでGPIFの自主運用を認めさせたら、年金は藻屑と消えかねない。
 
 
東京株今年最大632円安 投資マネーの逃避加速
東京新聞 2016年1月20日 
 20日の東京株式市場の日経平均株価(225種)は急落し、節目の1万7000円を大幅に下回る前日比632円18銭安の1万6416円19銭で取引を終えた。下げ幅はことし最大。終値は日銀が追加金融緩和を決定した2014年10月31日以来、約1年3カ月ぶりの安値で、追加緩和の株高効果が帳消しとなる水準に近づいた。
 
 米国の利上げをきっかけに、投資資金は株式市場からの逃避傾向が加速し、国債などの安全資産に向かっている。


損失額は21兆円に倍増…年金資産の運用見直しは大失敗
日刊ゲンダイ 2015年1月15日
 年明けから低迷しっ放しの東京株式市場。巷に流れる「株価2万円台回復」どころか、14日の日経平均株価は前日比291安の1万6795円と、1万7000円を割り込んだ。こうなると、不安になるのが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用比率の見直しを決めた年金資産だ。
  約130兆円の年金資産を運用するGPIFは昨年10月、「国内株式」の投資比率を12%から25%に引き上げることを決めた。そこで民主党の長妻昭衆院議員が、運用見直しで想定される今後の損失額を質問主意書で問いただし、9日付で政府答弁書が閣議決定したのだが、その中身にビックリ仰天だ。経済「中位」のケースで、「確率95%で予想される最大損失額」は約21・5兆円となり、見直し前の損失額(約10・4兆円)と比べて2倍に膨らんだからだ。
 
  答弁書によると、仮に「リーマン・ショック」が起きた2008年度に当てはめた場合、損失(想定)額は約26・2兆円で、当時の損失額(約9・3兆円)の3倍近くになる。
 今の国内相場は日銀が上場投資信託(ETF)を通じて株式を買い支えている「官製相場」だ。日銀が金融緩和策のブレーキを少しでも踏めば、あっと言う間に下落する。原油安や米国、欧州景気の先行き懸念など海外の不安材料もワンサカだから、リーマン・ショック以上の衝撃が市場を襲っても不思議じゃない。
 
  株式評論家の杉村富生氏がこう言う。
 「今の市場の大きな懸念材料は2つです。1つはギリシャのユーロ離脱。仮に離脱となれば、IMF(国際通貨基金)やEUなどの財政支援は打ち切られ、ギリシャは約40兆円の借金を抱えてデフォルト(債務不履行)になる。リーマン・ショックどころの騒ぎじゃ済みません。2つ目のリスクはロシアです。今の状況は、79年に旧ソ連がアフガニスタンに侵攻し、その後、原油安で旧ソ連が崩壊した当時の状況と似ています。つまり、昨年のクリミア侵攻が引き金となり、原油安が起きている。仮にプーチン政権が崩壊となれば、世界経済に与える影響は計り知れないでしょう」
 
  リーマン・ショックでもみられたが、日本市場は「海外発ショック」に脆弱だ。失う年金資産は20兆円や30兆円じゃ済まないだろう。年金資産の“ギャンブル運用”はホント、やめてほしい。 
ベノミクス相場で大幅上昇した日本株は、欧米以上に売りが集中しやすい。(共同)