2016年1月3日日曜日

03- 二つの海外関係ブログ記事に見る 侵略国家アメリカ

 年頭に公開された二つの海外関係のブログ記事を紹介します。
 
 一つは「マスコミにのらない海外記事」の「シリア〝内戦″という虚構」に関するもので、それは「内戦」ではなく ことの始まりから外国による干渉戦争であるという主張です。
 
 米国はアサド政権が自分に従おうとしないことから、ISを攻撃するという口実で同政権の反対を押し切りシリア国内への空爆を敢行しています。
 アサド政権の要請を受けたロシアが、3ヶ月前にISやその他のテロリスト集団への空爆を開始しました。そのことで明らかにされたのは、有志国連合は2年弱の間に2万回近くの空爆を行ったにもかかわらず、ISに打撃を与えたりトルコからの兵站線を破壊することはしなかったということです。
 
 しかし、日本のメディアはいうまでもなく、西欧のメディアもただひたすら米国の言い分を垂れ流すだけなので、シリアで起きていることは、不正なアサド政権を倒すために戦っている反政府勢力を応援し併せてISを駆逐すべく有志国連合がシリアを空爆している、ということに依然としてなっています。そこには他のケースと同様に「民族自決」を尊重する精神が皆無です。
 
 もう一つは櫻井ジャーナルの比較的短い記事で、やはり侵略国家米国の実態(本性)を明らかにするものです。そしてそうした侵略国家と同盟関係を結ぶことは、米国の侵略に荷担することになると警告しています。
 
 米国は先住民(アメリカインディアン)の殲滅から始まり、その後もひたすら戦争・侵略を続けてきた国であるとして戦略空軍総司令部(SAC)が1956年に作成した核攻撃計画に関する報告書で、水爆・原爆300個をソ連の100都市に投下するとした例を挙げています。
※ 2月28日 アメリカは建国後合計222年間=93%の年間 戦争をしてきた
 
 今回の記事では、米国で今も生きている「唯一の超大国を目指すウォルフウィッツドクトリン」には触れていませんが、同ブログはこれまでしばしばこのドクトリンに言及しています。
 米国は、この近年は直接的な戦争ではなくて、リビアやウクライナのように、周到に準備した後に強烈に働きかけて「内戦」を起こさせて、それを応援する形で政権を倒していると述べています。
 そしてこうした構図は世界的に知られはじめていて、英語圏におけるアメリカへの信頼感は限りなくゼロに近づいているのに、日本の支配層は「言語」という壁に守られてその認識に至っていない(ふりをしている)と批判しています。
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内戦ではなく、内戦であったことなどなかったシリア
マスコミにのらない海外記事 2016年1月 2日
Ulson Gunnar New Eastern Outlook 2015年12月28日
兵器は外国製で、戦士は外国人で、狙いも外国のためだ。シリア軍が国家の支配を取り戻し、国境内で秩序を回復するため戦っている中、“シリア内戦” 神話は継続している。シリア政府に反対するシリア人や、政府に反対し、それゆえシリア国民に対し、武器を持って立ち上がるシリア人すらいるだろうことは疑う余地はないが、最初から (実際は、始まる前から) この戦争は外国によって動かされてきたのだ。これを“内戦”と呼ぶのは、武器を持って戦っている連中を反政府勢力”と呼ぶのと同様、間違った呼び方だ。これは“内戦”ではなく、シリア政府と戦っているのは反政府勢力”ではない。
これを内戦と、シリア国家と戦っているテロリストを反政府派”と呼んでいる連中は、その言説を聞いている人々が、連中のウソの先までは決して考えず、それが始まる前から行われていた動きや、そうした動きが一体どこで作られているのかという、この紛争の大きな文脈を理解しないことを願っているのだ。
 
これは一体いつ始まったのか?
これが、一体いつ実際に始まったのかというのは、もっともな疑問だ。冷戦時代、アメリカ合州国とヨーロッパ(NATO)と、ソ連のみならず、成長しつつある中国との間の東と西の間の戦いが一進一退を繰り返していた。しかし冷戦そのものは、世界対する様々な権力の中心の間で、何世紀にもわたり続けられてきた地政学的闘争の単なる継続だ。中枢には、ヨーロッパのパリ、ロンドンとベルリン、もちろんモスクワ、そして過去二百年間、ワシントンが含まれる。
ところが、この文脈で、地域紛争として描きだされているものは、これらの各特定利益集団中枢の間の、より広大な地政学的闘争の中にびったり納まるのが見えてくる。シリア紛争も例外ではない。
 
シリアは、冷戦中、ソ連と緊密な関係を維持してきた。つまり、ソ連崩壊後でさえ、シリアは、ロシアとつながりを維持していることを意味している。シリアはロシア兵器と戦術を使用している。シリアは、ロシアと、経済的、戦略的、政治的つながりを維持しており、秩序国家主権の優先を強調する多極的世界の優勢志向を含め、利害が一致している。
このおかげで、欧米の権力中枢は、何十年も (他の多くの国々とともに) シリアをこの軌道から引き離そうとしてきた。オスマン帝国の崩壊とともに、分裂した中東は、ヨーロッパ独立を求める民族主義者の蜂起によって飲み込まれるまで、最初は植民地主義者連中に支配されていた。自分たちが切った植民地とのつながりを、切れたままにしておきたいと願う人々は、ソ連の支援を求め、どんなことをしても権力の座につこうと狙う連中は、概して、欧米の支援を求めたのだ。
 
2011年の紛争は、シリアにとって最初のものではない。オスマン帝国崩壊以来、イギリス帝国が生み出し、育成したムスリム同胞団は、70年代末と80年代始め、現在のバッシャール・アル・アサド・シリア大統領の父親で、当時のシリア大統領ハフィーズ・アル-アサドを打倒しようとした失敗した企てでも支援されていた。この紛争に参加した武装過激派は、その後の取り締まり強化で散り散りとなり、ムスリム同胞団の多くのメンバーが、アルカイダと呼ばれる新たなアメリカ-サウジアラビアの組織を形成した。同胞団と、アルカイダが、それ以来、現在に到るまで、独立した中東の運命の後を追い続け、阻止しようとつとめることになる。
 
シリアの戦争には“内戦的”なものは皆無だ 
この文脈で、シリアの最近の紛争は、この広範な闘争の一環であり、力の真空の中で展開している、紛争がはじまった後、始めて外部権益組織が引き入れられた“内戦”では決してないことがはっきりとわかる。
 
2011年以来ずっと、ムスリム同胞団と、それから派生したアルカイダが存在しており、そのせいだと説明されてきた。2011年末には、アルカイダのシリア支部(ヌスラ戦線)が、他のいわゆる反政府集団を小さく見せる、全国規模の作戦を遂行することになる。しかも彼等がここまで大成功したのは、彼等がシリア国境内で見つけた資源と支援のおかげではなく、国境外から、彼等へと流れ込む膨大な資源と支援のおかげだ。
サウジアラビアは、シリアで活動している過激派集団の多くに、当初から、あからさまに武器を供与し、資金提供し、政治的支援をしている。実際、最近、アルカイダそのものの同盟者を含む、こうした集団の多くが、サウジアラビアのスポンサーと連中の共同事業の将来を議論すべく、リヤドに集まった。
 
ヌスラ戦線とともに、自ら任じる「イスラム国」(IS)がある。ISは、シリア紛争そのものと同様、欧米マスコミによって、できる限り長期間、どこからともなく生じたものとして描かれてきた。連中の軍事的、政治的な強さの根源は、他のことでは全知の欧米諜報機関にとって、謎のままだった。ロシアが紛争への関与を強化して。ロシア戦闘機が、トルコ領から出入りし、ISに向かう車列に猛攻撃を加え始めると、ヒントがあらわれだし、謎はとうとう解決した。ISは、シリアで活動している他の全ての過激派集団と同様、世界中から送り込まれる、気前良く、果てしのない大量の兵器、装備、現金や戦士の受け手だったのだ。
 
シリア紛争は、外国権益中枢によって、シリア国民の未来のためでなく、彼等を作り出した外国の世界秩序に、より都合良く調和するシリアにするべく、断続的に戦闘をしてきた、何十年も前に生み出された諸組織によって生じたのだ。紛争は、シリア国民自身からではなく、リヤド、アンカラ、ロンドン、パリ、ブリュッセルや、ワシントンにある、外国の特別権益集団の中枢から送られる兵器、現金、支援、更に戦士に到るまでの奔流に支えられてきたのだ。
 
ありもしない内戦で、どのように和解するのだろう?
もしシリア紛争が、何十年も (シリア内外で) 外交政策を実施するための道具として利用してきた過激派集団をあおってきた外国権益集団によって生み出されて、内戦でなく、本質的に代理侵略となっているのであれば、一体どうすれば“和解”が実現できるだろう?
和解するために、シリア政府は一体誰と交渉すべきだろう? ダマスカスシリアの首都と戦っているヌスラ戦線や、ISなどの過激派を明らかに支配している幹部と交渉すべきなのだろうか? それとも、シリア政府は、紛争を永続化させる上で、傑出した要因であり続けてきた連中、リヤド、アンカラ、ロンドン、パリ、ブリュッセルやワシントン、こうした過激派集団の中でも最も過激な連中の支援に関与しているらしき全員と交渉すべきなのだろうか?
もし、ダマスカスが、こうした外国の首都の政治指導者連中と交渉するようなことになれば、ダマスカスは、“内戦”を、それとも、これら外国勢力と戦っている戦争を、終わらせることになるのだろうか? 世界の舞台では、これら外国首都は完全に過激派の肩を持っているのは明らかで、誰も驚きはしないが、これらの過激派連中が、まさに、こうした海外の首都が望んでいることを望んでいるように見える。
 
シリアが実際に戦っているのは一体どのような紛争なのかに関し正直になることが、それを終わらせるための本当の解決策を見いだす第一歩だ。欧米は、これは“内戦”だと主張し続けている。これにより連中が、紛争の結果と、結論が出た時点で、シリアがいあわせることになる政治的状況に影響を与えようとし続けることが可能になる。シリア政府は、あらゆる正統性を失ったと主張することで、欧米はこの文脈で立場を強化できるのだ。
外国権益枢軸が、シリア政府に対して隊列を組ませた武装過激派集団立ち上がり、戦っている事実を根拠に、シリア政府から正統性を剥奪しようという企ては、非常に危険で、受け入れがたい前例となろう。もし“シリア・モデル”が成功すれば、次は自国の番であることを、他の国々が理解しているがゆえに、この戦いでシリアの同盟国が増えているのも不思議ではない。
 
シリアで継続中の紛争は、ダマスカスに対する外国による攻撃の結果であることを認めることで、解決は非常に単純になるだろう。解決策は、国連あるいは戦場で、シリアを狙う暴力に油を注ぐ国々に対して措置を講じながら、ダマスカスが国境内で秩序を回復するのを認めることだ。おそらく、この解決策の明晰さこそが、この紛争の背後にいる連中が、これを内戦として描き出そうと必死になっている理由なのだ。
2011年以来、シリア“内戦”の意味を理解してようとしてきたが、うまく行かなかった人々にとって、説明は単純だ、それは内戦でなく、内戦であったことなど決してなかったのだ。そもそもの始めから(あるいは、そもそも始まる前から)代理紛争なのだと理解することで、理解が明晰となり、明らかな解決策は一体何かを理解する上で、計り知れないほどの助けになるだろうが、それも、人々が、この理解に至った場合に限られる。
 
Ulson Gunnarは、ニューヨークを本拠とする地政学専門家で、作家で、特にオンライン誌“New Eastern Outlook”に寄稿している。
 
 
 
集団的自衛権の相手である米国は侵略国家であり、テロリストを利用してきたことも自覚する必要    
櫻井ジャーナル 2016年1月1日
 アメリカが日本を守ってくれると主張する人がいる。強そうに見えるアメリカに服従するための口実にすぎないだろう。何しろ、そのアメリカは侵略国家。そうした国と同盟関係を結んで集団的自衛権を行使することになると、日本もアメリカの侵略に荷担せざるをえなくなる。「敵に攻められたら」という話ではない。「アメリカが他国を侵略したら」日本はどうするかを議論しなければならない
 
 アメリカの同盟国であるトルコなどは一般に「テロリスト」と呼ばれているアル・カイダ系武装集団やIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)を支援、ロシア軍機を待ち伏せ攻撃で撃墜している。ロシアが反撃しても不思議ではない状況であり、もし反撃したならNATOとロシアとの戦争に発展、NATOの中心的な存在であるアメリカもロシアと戦争をはじめることになり、日本も巻き込まれてしまう。しかも、歴史を振り返れば、アメリカは先住民の殲滅から始まり、侵略を続けてきた国だということがわかる。
 
 アメリカの戦略空軍総司令部(SAC)が1956年に作成した核攻撃計画に関する報告書(SACAtomicWeaponsRequirementsStudyfor1959)とその分析をアメリカの研究機関が公開したが、それによると、ソ連、中国、東ヨーロッパの最重要目標には水爆が使われ、ソ連圏の大都市、つまり人口密集地帯に原爆を投下することになっていた。軍事目標を核兵器で攻撃しても周辺に住む多くの人びとが犠牲になる。1957年初頭に作成された「ドロップショット作戦」も先制攻撃が想定され、300発の核爆弾をソ連の100都市で投下、工業生産能力の85%を破壊する予定になっていた。「核の傘」という議論はナンセンスなのだ。
 
 フランクリン・ルーズベルトやジョン・F・ケネディのように侵略を否定的に考えている大統領はいたが、例外的な存在だ。ルーズベルトは大統領就任の前に銃撃され、就任直後にウォール街を支配していた勢力はクーデターを目論んでいる。1945年4月、ドイツが降伏する直前にルーズベルトは執務室で急死、その後はウォール街がホワイトハウスで主導権を握る。また、ソ連との平和共存を訴えたケネディは暗殺された。
 
 現在、アメリカでは議員の大半が買収されていると言われている。西ヨーロッパ諸国も同じであり、当然、日本の議員にも疑惑はある。ロシアでは政府や政府系機関の幹部が外国で銀行口座を持つことを厳しく規制しているようだが、買収を警戒しているのだろう。1970年代にロンドンのシティを中心として築かれたオフショア市場のネットワークは追跡が困難で、富豪や巨大企業は課税の回避、不正資金の隠匿、マネーロンダリングなどに使ってきた。犯罪組織もその恩恵に浴している。
 
 買収に失敗したなら本当に命を狙うヒットマンが送り込まれるそうだが、最近、例えばリビアやシリアではワッハーブ派/サラフ主義者、ウクライナではネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)を中心とする戦闘員を「傭兵」として使って攻撃を仕掛けている。リビアやウクライナでは実際に政権を倒した。リビアの場合、NATOによる空爆とアル・カイダ系のLIFGによる地上戦が連携していた。
 
 こうした構図は世界的に知られはじめた。日本の支配層は「言語」という壁に守られているようだが、英語圏におけるアメリカへの信頼感は限りなくゼロに近づいている。ドルが基軸通貨から陥落、軍事力の優位という幻影が消えたなら、信頼されていないアメリカは崩壊するしかない。ネオコンは恫喝して屈服させるしか能がないようなので、最後は世界を道連れにすると脅してくるかもしれない。