2015年12月3日木曜日

沖縄知事が「国民すべてに問いたい」と 高裁那覇支部で 辺野古代執行訴訟 

 米軍普天間基地辺野古への移設を巡る政府の代執行訴訟で2日福岡高裁那覇支部で第1回口頭弁論が行われ、翁長沖縄県知事は、「裁判で問われるのは承認取り消しの是非だけでない。日本に地方自治や民主主義はあるのか。沖縄に負担を強いる日米安保体制は正常といえるのか。国民すべてに問いかけたい」「新基地は完成するまで約10年、場合によっては15年、20年かかる。その期間、普天間基地が動かず危険性が放置される状況は固定化そのものではないか」などとする意見陳述を行いました。
 また、戦後アメリカ軍に強制的に土地が接収されて基地が造られた歴史に触れ「政府建設を強行しようとする姿勢はアメリカ軍施政権下と何ら変わりない」、「問われているのは埋め立て承認の取り消しの是非だけではない。沖縄にのみ負担を強いるのは正常と言えない」と訴えました。
 
 政府寄りの判決が出されるとみられている裁判で、知事が敢えて第1回目の意見陳述に臨んだのは、沖縄の立場を、裁判官に対してとともに、国民に向けて訴えたいと考えてのことと思われます。
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沖縄知事、基地問題「国民すべてに問いたい」  辺野古代執行訴訟で陳述 
日経新聞 2015年12月2日
 米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡る政府の代執行訴訟で、2日に福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)で開かれた第1回口頭弁論に沖縄県の翁長雄志知事が出廷し、意見陳述に臨んだ。
 
 翁長氏は沖縄戦などの歴史的経緯を踏まえながら、戦後70年を経ても沖縄に米軍専用施設が集中する現状を説明。「裁判で問われるのは承認取り消しの是非だけでない。日本に地方自治や民主主義はあるのか。沖縄に負担を強いる日米安保体制は正常といえるのか。国民すべてに問いかけたい」と述べ、基地問題も重要な争点として審理するよう裁判所に訴えた。
 
 さらに辺野古移設は普天間の早期の危険性除去のためとする政府側の主張に対しても反論。「新基地は完成するまで約10年、場合によっては15年、20年かかる。その期間、普天間基地が動かず危険性が放置される状況は固定化そのものではないか」と疑問を呈した。
 
 
米軍基地 辺野古移設 代執行訴訟で初弁論
NHK NEWS WEB 2015年12月2日
沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設先とされている名護市辺野古沖の埋め立て承認の取り消しを巡り、国が撤回に向けて代執行を求めた裁判は、2日、最初の弁論が行われました。この中で沖縄県の翁長知事が意見を述べ、計画を進めようとする政府の対応を批判したうえで、沖縄の民意を尊重するよう訴えました。
 
名護市辺野古沖の埋め立て承認を巡っては、沖縄県の翁長知事が承認を取り消したことに対し、国は先月、地方自治法に基づき、知事の代わりに取り消しを撤回する代執行を求めて行政訴訟を起こしました。
裁判の最初の弁論は2日午後、福岡高等裁判所那覇支部で始まりました。冒頭、裁判長から意見陳述を求められた翁長知事は、戦後、アメリカ軍に強制的に土地が接収されて基地が造られた歴史に触れたうえで、「沖縄がみずから土地を提供したことは一度もない。政府は建設を強行しようとしており、アメリカ軍施政権下と何ら変わりない」と述べ、政府の対応を批判しました。そのうえで、「裁判で問われているのは埋め立て承認の取り消しの是非だけではない。沖縄にのみ負担を強いるのは正常と言えるのでしょうか」と述べ、沖縄の民意を尊重するよう訴えました。
 
一方、国の代理人は、埋め立てにあたって専門的見地から環境影響評価が実施され、前の知事が行った承認に違法性はないとしたうえで、承認の取り消しを放置すれば、普天間基地周辺の住民の危険性が除去できなくなるうえ、日米の信頼関係に亀裂が入り、外交・防衛上、重大な損害が生じて、著しく公益を害するなどと主張しました。そして、外交や防衛に関わる問題を県知事が判断する権限はないなどと述べました。
次回の弁論は来年1月8日に行われます。 
 
裁判の争点と双方の主張
今回の裁判では、前の知事が名護市辺野古沖の埋め立てを承認した手続きが適正だったかどうかが争点の1つになっています。
国は、前の知事が国の環境影響評価に基づいて適切に承認したもので、違法性はないと主張しています。これに対して沖縄県は、国の環境保全策は十分とは言えず、それにもかかわらず前知事が承認したのは法律上の問題があると主張しています。
さらに、辺野古沖の埋め立ての必要性についても双方の主張が対立しています。
国は、承認の取り消しを放置すれば、普天間基地周辺の危険性が続くうえ、外交・防衛上の重大な損害が生じると指摘し、埋め立ての必要性は国の防衛に関する問題で、県知事に判断する権限はないなどと主張しています。これに対して沖縄県は、埋め立てが行われれば貴重な自然が破壊され、軍用機の騒音などで住民の生活環境が悪化するうえ、沖縄の過重な基地負担を将来にわたって固定化することになるなどと主張しています。
また、国が求めている代執行は、「放置すると著しく公益を害する」場合にしか認められないため、今回の承認取り消しがそれに該当するかどうかも争点になるとみられます。
 
辺野古では工事続く ゲート前で抗議の声
名護市辺野古沖の埋め立て承認の取り消しを巡る裁判が始まったなか、埋め立て予定地に隣接するアメリカ軍基地では、2日も工事が進められ、基地のゲート前では反対する人たちが抗議の声を上げていました。
名護市辺野古沖では、沖縄県の翁長知事が埋め立て承認を取り消したことに対し、国土交通省が沖縄防衛局の申し立てを認めて、取り消しを一時停止し、移設に向けた工事が進められています。裁判が始まった2日も、埋め立て予定地に隣接するアメリカ軍基地では、クレーンなどの建設用機械を使って作業をする様子が確認されました。
 
基地のゲート前では、移設計画に反対する人たち数百人が座り込みを行い、「政府は工事をやめろ」などと抗議の声を上げていました。
浦添市の76歳の女性は「県民の多くが移設計画に反対しているので、翁長知事には、ぜひその思いを裁判で表明して、貫いてほしいです」と話していました。うるま市の67歳の男性は「新しい基地が半永久的にここに居座ることになり、絶対に許せない。抗議活動を通して裁判を支援していきたい」と話していました。
 
 
辺野古 ゲート前に500人 市民ら知事支援で絆確認
琉球新報 2015年12月2日
 【辺野古問題取材班】翁長雄志知事による名護市辺野古の埋め立て承認取り消しをめぐり、国が県を提訴した代執行訴訟第1回口頭弁論がある2日午前、米軍キャンプ・シュワブのゲート前には建設に反対する市民ら約500人が座り込んだ。雨の中、市民らは「現場から知事を支えていこう」などと気勢を上げた。
 
 毎週水曜日の「大行動」の一環。普段午前7時前には、座り込む市民らを機動隊員が排除した上で、工事車両が基地内に入る。しかしこの日は、工事車両の進入や機動隊員の大量動員は確認されなかった。市民らは喜びのカチャーシーを舞った。
  集会の先頭に立つ沖縄平和運動センターの山城博治議長は「闘いに勝ち続けていることを確認しよう。(人数が集まれば工事を)止められることは分かった。水曜日以外も拡大していこう」と呼び掛けた。
  ゲート前で抗議を続ける島袋文子さん(86)=名護市辺野古=は代執行訴訟について「国が県を訴えること自体がおかしい。知事は正当な判断をした。やましい点がないから裁判も受けて立つことができる」と言葉に力を込めた。