2015年12月30日水曜日

30- 政府のTPP効果試算は偽り

 日本を標的にしたといわれるTPP交渉において、何一つ国益を守るための主張をしなかった日本政府が、TPP協定の発効によって国益が増す、あるいは国益に適うというような試算を捏造するのは笑止です。
 このことについては27日にも共産党の小池政策委員長の指摘を取り上げましたが、29日の南日本新聞が「TPPの影響ー甘い試算は不信を買う」とする社説を掲げました。
 
 同紙も、「政府は交渉参加前の2013年3月、GDP押し上げ効果を3兆2000億円、農業減少額を3兆円程度とはじいたのに、今回の試算ではGDPが4倍超へ膨れ上がり、逆に農業へのダメージは10分の1以下に激減している。驚くばかりだ」と、小池氏と同じような指摘をしています。
 国民の懸念にまともにこたえないで欺瞞の試算を公表するなどは「恥の上塗り」というべきです。
 
 薬価基準制度が壊されて、薬価が暴騰することから招来される国民皆保険制度の崩壊、保険診療制度の崩壊からも明瞭なように、TPPの害悪は計り知れません。たとえ協定が調印されたとしても批准することは絶対に避ける必要があります。
 ※  12月27日 TPPの経済効果 政府試算は全く信用できない
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社説: [TPPの影響] 甘い試算は不信を買う
南日本新聞 2015年12月29日 
 甘い試算では不安の解消どころか、不信を買うだけではないか。野党は年明けの国会で試算の根拠を厳しくただしてもらいたい。
 
 政府は環太平洋連携協定(TPP)の影響を試算し、先週の経済財政諮問会議で示した。
 実質国内総生産(GDP)は3%近く増え、金額換算で13兆6000億円ほど押し上げられる。一方、懸念される農林水産物の生産減少額は最大でも2100億円にとどまる。
 率直に言って、甘すぎるのではないか。
 
 政府は交渉参加前の2013年3月、GDP押し上げ効果を3兆2000億円、農業減少額を3兆円程度とはじいた
 今回の試算ではGDPが4倍超へ膨れ上がり、逆に農業へのダメージは10分の1以下に激減する。あまりの差に驚くばかりだ。
 
 政府は2年前の試算は、すべての物品関税が発効後すぐに撤廃される前提だったとする。
 しかし、前提条件の違いだけで説明がつくとは思えない。農家から「うのみにできない」と、不信の声が上がったのは当然だ。
 象徴的な品目がコメである。米国産などの輸入枠が新たに設けられても、輸入増に相当する国産米を政府が備蓄用として買い増すので、生産減少額を「0円」と見積もった
 関税が大幅に削減される牛・豚肉などの影響は大きいとしたが、国内対策や差別化などで、おおむね当面輸入の急増は見込みがたいとする。
 影響はないとした食料自給率にしろ、TPP発効後しばらくはそうかもしれない。だが、安価な農産物が海外から入ってくるのに、中長期の影響もないとするのは不自然だ。
 農水分野の試算対象は関税率10%以上、国内生産10億円以上の品目に限っている。これも丁寧さに欠ける
 10月の大筋合意後、政府は詳しい中身を明らかにしないまま、翌月には対策大綱を取りまとめた。利点のみ強調した今回の試算も同じ流れにあるのだろう。
 
 共同通信社の先月の全国首長アンケートによると、TPP反対が賛成を大きく上回った。特に深刻な影響を受ける九州や北海道、東北での反発が目立つ。
 来年の国会審議や夏の参院選をにらんで、お手盛りの試算で反発をかわそうとの思惑であるなら、その場しのぎも度が過ぎよう。
 政府は重要5項目を関税撤廃の例外と位置付け、交渉に臨んだ。「聖域」は守られたのか。まずはその検証からである。