2015年11月25日水曜日

25- シリア空爆は正当なのか 伊勢谷友介氏が批判

 これまでの1年半、約9000回に及ぶ有志国連合の空爆で殺害されたシリア市民は20,000人に上るといわれます。
 先のパリ銃撃事件では市民130人が殺害されるという大変に悲惨な結果となりましたが、その100倍以上のシリア人がすでに空爆で殺害されているわけです。そしていまもその報復ということでフランス空軍等によって一層大々的に空爆が行われています。
 
 それなのにいわゆる西側の世論はパリの市民の死傷は極めて痛ましいことであるが、シリア(=IS)への空爆は当然のこととして、空爆下で起きている市民の死傷は一顧だにされません。
 パリ銃撃事件については一方的にシリア・IS側が悪いが、フランス空軍等によるISへの猛爆は当然であるというのは、あまりにも欧米側の価値観に毒された、間違った考え方ではないでしょうか。
 
 そもそもパリの銃撃事件は、有志国連合の空爆に対する反撃であった筈です。
 更に言えばその遠因は第二次世界大戦以前に、仏・英などがシリアやイラクを占領し分割統治したことにあると言われています。
 銃撃事件を非難する前に、9000回にも及ぶシリア空爆が本当に正当であって非難に値しないものであるのかどうかよく考えてみる必要があるのではないでしょうか。
 
 LITERAが俳優の伊勢谷友介氏の主張を取り上げました。
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伊勢谷友介が対テロ戦争を真っ向批判! 子供が殺されたら黙っていられないのは相手も同じ、正義の武力はない
LITERA 2015年11月24日 
パリで起こった同時多発テロを受けて、案の定、安倍政権はテロへの危機感を煽り、テロ発生以前から安倍首相が「極めて重く、大切な課題だ」と発言してきた緊急事態条項の創設に向けて本格的に動き出す見込みだ。同時に、メディアも難民や在日外国人までをもテロリスト呼ばわりし、緊急事態条項なくしてはテロに対抗できないと触れ回っている。
 一気に噴出した排斥主義と、対テロ戦争の“正当化”──。だが、こうした高まる声に抵抗の姿勢を示したのは、俳優の伊勢谷友介だ。
テロを非道だと思うのは、その行為からだ。しかしその行為に至るのには必ず理由になる彼らに対する非道があったからだ。それを無視して、非道だからと怒りに任せて攻撃するのは、これまでの歴史的事実を知っていれば、解決にならない。子供が殺されたら黙っていられない。それは相手も同じ。〉
 
 伊勢谷がこのように述べたのは、今月16日のツイッターでのこと。政権もメディアも、そしてツイッターなどのSNS上でも、テロ行為への非難が溢れかえっているが、一方、シリアでは“正当化”された空爆によって多くの市井の人びとが命を落としている。そもそもISを産みだしてしまったのは、すでにアメリカの欺瞞が暴かれているイラク侵攻に原因がある。この現実に目を向けなければ、負の連鎖はつづいていくだけ──ヒートアップする「対テロ戦争こそ解決策」という意見に、伊勢谷は問題の深層を直視することを呼びかけたのだ。
 
 じつは伊勢谷は、テロ発生の翌日である14日にも、このようにツイートしている。
〈環境に殺し、殺される前に、自滅への強烈なアクションが始まったのか。。。今回のパリの事件は、どこにでも起こる可能性がある。人が人に銃を向けた事の人類のツケだ。正義の武力はないのだ。この繰り返しを過去の物にしなければならない。〉
 
 だが、この伊勢谷の投稿には、“理想論では?”“武力でナチスの非道を止めた歴史もある”などの意見が寄せられた。しかし、伊勢谷はそれらの声に対しても、冷静にこう返した。
 
〈時代が変わるとは、人間が変わるということです。〉
 〈何故彼らは戦うのか、それを知ってごらん。彼らは命を捨ててまでテロを起こす。エゴではない。平和の創造の為に、国家で攻撃を加える事で成しえないのは、歴史を見れば明らか。それを一人一人が考えるから、世の中が変わる。〉
 そして、“テロによって親や子ども、恋人が殺されたら、負の連鎖だとわかっていても報復に出るものでは?”という意見には、〈それが普通〉と同意を示した上で、このように続けた。
〈つまり、それが普通だから、戦争は無くならないんだ。平和を創るには普通じゃない人が増えなくてはいけない。〉
 
 負の連鎖を止めるためには、どこかでそれを断ち切る必要がある。ほかでもない、私たちが平和を求めるのならば──。いつの時代も戦争は「普通のこと」「当然の行為」と肯定されて繰り返されてきたが、その「普通」こそを変える必要がある、と伊勢谷は述べるのだ。
 こうした伊勢谷の言葉からは、彼がいかにただの理想論ではなく「戦争」を見つめ、ひとりひとりの意識の変革を訴えていることがよくわかる。実際、伊勢谷は俳優業と同時に「人類が地球に生き残るためにはどうするべきか?」を考え、実践する「リバースプロジェクト」という社会運動を始動させ、つねに“考え、実行することが大事”だと主張している。
〈無理だとしたら諦めるしかない。それが生きる事ならば、即刻やめたい。違うんだよ。諦めない人が世の中を変える。〉
 〈人生は苦しい。社会も不具合だらけ。受け入れ難い事実もある。でも現在はそれが人間というものであり、事実そのもの。見つめることで、できることを見つける。人間が作る不具合は、今を生きる人が改善する。その行動が「志事」となり、社会を支え、未来を創る。〉
 
 社会を変えるにはどうすればいいか。それを考えてきた伊勢谷にとって、今回のテロ問題に反応したのも、“対テロ戦争は仕方ないこと”だと思考停止する人びとに“諦めるな”と警鐘を鳴らしたかったのかもしれない。
 もちろん、その思考の先には対テロ戦争を肯定する政権への不信感もあるだろう。現に2013年11月には、特定秘密保護法に対して、このように意見を述べていた。
〈特定秘密保護法案を可決しようとしている現政権。知らなければ、問題を考えられない人が増えて行く。そして、国民は馬鹿になってゆく。馬鹿になれば、問題は為政者に任せるだけになる。参加型民主主義に逆行中の日本。9万件のパブリックコメントの約9割は反対。それを反故にしてる現政権
 
〈参加型民主主義に逆行中の日本〉という指摘は、この発言から2年後であるいま、まさにどんどん進行している事態だ。とくに安倍首相が進める緊急事態条項は、国民は国の指示に従うことが強要され、人権さえ制限される可能性がある“国民に考える余地を与えない、馬鹿にするための”規定だ。
 
 これ以上、考えることを止めて政権の言うがままになれば、どんな未来が待っているのか。今回、伊勢谷が発した“平和を創るには普通じゃない人が増えなくてはいけない”“世の中を変えるためには諦めてはいけない”という声が、多くの人びとの考えるきっかけになることを切に望むばかりだ。  (水井多賀子)