2015年11月24日火曜日

24- フランスに見る「非常事態宣言」の実態

 フランスでは「非常事態宣言」は憲法に明文規定はなく、1955年にアルジェリア独立戦争を受けて制定された「緊急状態法」という法律が根拠になっているということです。緊急に制定されたであろうことは想像できますがよく分かり兼ねる話です。
 
 それは兎も角、現下の「非常事態宣言」で行われている内容がTHE PAGEに載りましたので紹介します。
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フランスが3カ月延長した「非常事態宣言」って何?
THE PAGE 2015年11月22日 
 フランス議会は20日、全土に発令されている「非常事態宣言」を3カ月延長することを決定した。13日のパリ同時テロ発生直後から発令されている「非常事態宣言」には、どのような効果があるのか。
 13日夜にパリ市とその近郊で発生した同時テロは130人の犠牲者を出した。発生直後、オランド仏大統領は非常事態を宣言。美術館や図書館が閉鎖され、集会やデモの許可が取り消された。住民には不急の外出を控えるように通達された。
 
憲法ではなく法律上の規定
 フランス憲法では国家の非常時、大統領に強大な権限が集中する「非常措置権」や、秩序維持の権限が行政から軍隊に移される戒厳状態が認められているが、今回の「非常事態宣言」はこのどちらでもなく、憲法に明文規定はない。「非常事態宣言」の根拠は1955年に制定された「緊急状態法」という法律で、アルジェリア独立戦争を受けて制定されたものだ。
 「非常事態宣言」は公の秩序に対する重大な脅威があると判断された場合に大統領が宣言でき、期間を限定して警察権限を強化することなどが可能となる。1962年のアルジェリア独立戦争終結後は、1985年に仏領ニューカレドニアの暴動で宣言されたほか、フランス本土では2005年にパリ郊外で移民の若者による暴動があった際にも発令されている。
 非常事態宣言は、12日以上の延長をする場合には議会の承認を得て法律を制定する必要がある。今回は、20日に議会で非常事態宣言を延長する法案が可決され、来年2月25日まで3カ月延長された。
 
宣言で何が起きる?
 「非常事態」が宣言されると、人々の生活にはどのようなことが起きるのか。
 大きな特徴は、警察権限の強化だ。内務大臣は「公の秩序と安全に対し危険な活動をしている人々」を自宅軟禁することができる権限を持つ。20日の上院でバルス首相は、これまでに164人を自宅軟禁状態としたことを明かしている。
 
 また、裁判所の令状なしに、昼夜問わずに家宅捜索したり、武器を押収したりすることも可能となる。バルス首相によると、これまで793件の家宅捜索がなされ、174件の武器押収があった。公権力の行為を妨害しようとする者に対し、地域の全部または一部の滞在禁止を命じることもできる。
 市民にとっては、命令のあった場所・時間における人や車の交通が禁止されたり、安全地帯が設定されたりすることで、移動の自由が制限される。コンサートホールなどの興業場、酒類の小売店、集会場の閉鎖命令や一定の集会の禁止が命じられるなど、行動の自由も制限される。
 「緊急状態法」では、新聞、出版、放送、映画の上映、演劇の上映の規制も認められている。しかし表現の自由を制限するこの規定は1955年から一度も適用されておらず、今回も規制が見送られている。
 
他国での「非常事態宣言」
 大きな自然災害や紛争などの非常時に、国が平時とは違う権限を行使することは「国家緊急権」と呼ばれ、各国の憲法や法律で定められていることが多い。アフリカのマリでは20日に起きたホテル襲撃を受け、10日間の非常事態宣言が発令されている。
 アメリカでは州知事が地域レベルでの非常事態を宣言する権限を持ち、ハリケーンや大雪など自然災害の場合にも宣言されている。日本では憲法や法律の明文規定はない。2011年の東京電力福島第一原発事故では、原子力災害対策特別措置法に基づく原子力緊急事態宣言が発出されたが、災害や紛争などあらゆる非常時に対応できる「非常事態宣言」の包括的な明文規定はない。非常時の国の緊急権の濫用を防ぐためにも、発動要件や期間、取りうる具体的措置などについて明文化する必要があるのではないかとの指摘も上がっている。  (安藤歩美/THE EAST TIMES)