2015年10月18日日曜日

米の無人機攻撃による死者の90%は標的外の犠牲者

 アメリカはブッシュ前政権時代に無人機(ドローン)攻撃を開始し、オバマ政権になってから兵士の損耗がない状態で標的を殺害できることからこれを大々的に拡大し、対テロ戦略の中心的な手段と位置付けてきました。
 国連は早くからその犯罪性を指摘し、「国の主権を侵している」、「人権への影響が懸念される」、「国際人道法に則っていない」等の点を繰り返し警告してきました。
 昨年の3月にも国連の自由権規約人権委員会が、米国による無人機攻撃の見直しを勧告し、犠牲者の遺族に対する補償や攻撃対象となる人物の選定基準についての情報の開示、国際人権規約の全面的順守、民間人保護の措置等々を求めています。
    (関係記事)
2014年3月30日 米の無人機攻撃 見直し勧告 国連人権委 
 
 しかしそれに対して何らの改善も見られないまま今日に至っています。
 
 16日のハフィントンポスト紙は、ドローン攻撃による死者の90%は真の標的ではなかったと明らかにしました。まことに許すことの出来ない殺人行為です。
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アメリカはドローンで、ターゲットではない人を殺していた(最新報告)
The Huffington Post 2015年10月16日
アメリカが中東で繰り広げる無人機(ドローン)による攻撃には、非難の声が集まっている。ドローンによる攻撃はテログループの指導者たちを殺害するために必要だとアメリカは主張し、攻撃を続けている。しかし、アメリカのニュースサイト「インターセプト」が新たに発表した資料から、「殺害の標的」としてドローンによる攻撃で殺された人たちの中には、本来の標的よりはるかに多い数の民間人が含まれていることが明らかになった。
 
レポートでは、アフガニスタンで最近行ったドローン攻撃による死者の90%近くが攻撃の標的ではなかったと伝えている。
アフガニスタン北東部で行われているアメリカの特殊軍事作戦「ヘイメーカー作戦」の詳細を伝えた資料によれば、2012年1月から2013年2月の間に、200人以上が空爆によって殺害されたが、そのうち標的はわずか35人だった。また、ある5カ月の間に空爆によって死亡した人のうち、90%近くが標的ではなかった。イエメンとソマリアでは、死者が標的だったかどうかを確認するための諜報能力がもっと低いため、標的以外の死者数の割合はさらに高いかもしれない。
 
レポートは、各国政府の情報機関をまとめる「インテリジェンス・コミュニティー」が公表した機密文書を基にまとめられたものだ。ドローンの攻撃で民間人が死亡したことを伝える多数のニュース記事が、レポートの裏付けとなっている。2009年以降、アメリカがドローン攻撃でアフガニスタン、パキスタン、イエメン、ソマリアの大勢の市民を殺害してきたことがわかる。
イエメンでは2013年12月に、結婚式から帰る途中だった14人の人たちがドローンによる攻撃に遭って死亡した。政府当局者が、犠牲者の車をアルカイダの車と勘違いしたのが原因だ。またパキスタンでは、親がドローンの攻撃を恐れて、子どもたちを学校に行かせないようになっているという。
 
9.11以降、アメリカ政府はテロ対策とアルカイダやタリバンへの報復を理由に、標的を定めた攻撃を実施してきた。オバマ政権下ではドローンが多用されているが、多くの民間人が犠牲になっており、作戦の不透明性が批判されている。しかし、オバマ大統領はドローン攻撃を繰り返し擁護してきた。2013年には「我々が標的とするテロリストは、一般市民を標的としている。彼らのテロ行為によって死亡するイスラム教徒の数は、ドローン攻撃による一般市民死者の推定数よりはるかに多い」と発言している。
 
アメリカの政府当局者は、ドローン攻撃は正確で一般市民を傷つけることはほとんどない、と主張する。しかし、1人の標的を殺害するつもりでも、周囲の人を殺害したり、負傷させる危険がある。
「犠牲になった人は、その場にいたから巻き添えになったんです」と資料の情報筋は話している。「ドローンで攻撃すれば、当然複数の人が死にます。誰が死ぬのかなんてわかりません。ドローンによる攻撃は、イチかバチかのギャンブルなんです」
 
 
「米の無人機攻撃で殺害 約9割が別人の時期も」報道
NHK NEWS WEB 2015年10月17日
アメリカのオバマ政権が対テロ作戦で行っている無人機攻撃について、アメリカのメディアが、軍内部の機密報告書とされる文書を公開し、アフガニスタンでは標的として殺害された人の9割近くが別人だった時期があったなどと指摘して、議論を呼んでいます。
 
アメリカのインターネットメディア「インターセプト」は、情報機関の匿名の情報源から入手したとして、アメリカ軍が無人機攻撃の分析結果をまとめた、機密報告書とされる文書を公開しました。
文書では、アメリカが2011年から2013年の間に、アフガニスタンとイエメン、それにソマリアで実施した無人機攻撃について、どのように標的を選び攻撃したかが詳細に記されています。
これらの文書を基に、「インターセプト」は、攻撃の標的は主に通信傍受に頼った情報で選ばれていたとしたうえで、アフガニスタンで2012年の5月から9月までに殺害された人の9割近くが標的以外の別人だったとしています。
また、誰か分からないまま殺害したあとに、その人物がテロリストではないと分かっても、軍の内部では敵として報告していたとしています。
無人機攻撃は、オバマ政権下の対テロ作戦で急増する一方、これまでも誤爆がたびたび問題となってきました。
今回の報道について、国防総省は「コメントしない」としていますが、大手メディアは内幕を暴露した記事として伝えており、議論を呼んでいます。