2015年10月14日水曜日

14- 安保法「聴取不能」の議事録に 与党判断で「可決」と追記

 9月17日夜の参院特別委での「採決」といわれるものは、議場が騒然として委員長の発言内容が全く聞き取れない状況のなかで、自民党理事の合図で与党議員らが起立を繰り返したもので、野党議員は何を採決しているのか分からず、翌日の議事録(未定稿)にも、「……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)」となっていました。
 しかしながら与党側は、その状態で安保法案の全部と付帯決議が採択されたとして、翌日の参院本会議に上程しました。
 
 それに対して醍醐聡東大教授らは9月25日、「安保関連法案の採決不存在の確認と法案審議の再開を求める申し入れ」の署名を32000筆以上集め、参院議長と参院特別委員長に提出しました。
 
 ところが11日参院ホームページで公開された参院特別委の議事録を見ると、安保法を「可決すべきものと決定した」と付け加えたほか、付帯決議を行ったことも書き加えられていました。
 全てがデタラメのまま済まされようとしています。
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安保法「聴取不能」の議事録 与党判断で「可決」追記
東京新聞 2015年10月12日
 安全保障関連法を採決した九月十七日の参院特別委員会の議事録が、十一日に参院ホームページ(HP)で公開された。採決は委員長の宣告後に行われるのが規則。採決を宣告したと主張する委員長発言を「聴取不能」と認めておきながら、安保法を。採決に続き、議事録の内容まで与党側が決めたと、野党は反発している。 (篠ケ瀬祐司)
 
 野党議員によると、参院事務局は、追加部分は「委員長が認定した」と説明しているが、野党側は事前の打診に同意していない。
 
 九月十七日の特別委では、委員長不信任動議が否決されて鴻池祥肇(こうのいけよしただ)氏が委員長席に着席。民主党理事の福山哲郎氏が話しかけたところ、自民党議員らが委員長の周囲を取り囲んだ。野党議員も駆け付け混乱状態の中、委員長による質疑終局と採決の宣告は全く聞こえず、自民党理事の合図で与党議員らが起立を繰り返した。野党議員は何を採決しているのか分からない状況だった。
 
 九月十八日に正式な議事録の前に未定稿が各議員に示された。鴻池氏の発言は「……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)」となっていた。
 議事録は「聴取不能」までは未定稿と同じ内容。しかし「委員長復席の後の議事経過は、次のとおりである」との説明を追加。審議再開を意味する「速記を開始」して安保法制を議題とし、「質疑を終局した後、いずれも可決すべきものと決定した。なお、(安保法制について)付帯決議を行った」と明記した。
 
 福山氏によると、今月八日に参院事務局担当者が、この議事録を福山氏に示した。福山氏は「委員長が追加部分を議事録に掲載するよう判断したとしても、理事会を開いて与野党で協議する話だ」と了承しなかった。
 福山氏は議事録公開について「与党議員らが先に委員長席を取り囲んで『聴取不能』にし、後から速記を開始して可決したと追加する。これでは議事録の信頼性が揺らぐ」と指摘した。
 
 議事録には、安保法の委員会可決だけでなく、付帯決議を行ったことも書き加えられた。この付帯決議は、自衛隊の海外派遣の際の国会関与強化を盛り込む内容で、次世代の党など野党三党と与党が合意した。法律に付帯決議を入れる場合は、委員会で読み上げられるが、野党側は全く聞き取れなかったと主張する。
 特別委委員だった福島瑞穂議員(社民)は「可決ばかりか付帯決議もしたと書くのは許されない」と批判する。
 
 委員会採決の翌日、委員会可決について「法的に存在したとは評価できない」との声明を出した弁護士有志メンバーの山中真人氏は、議事録の追加部分について「議員や速記者が委員長の声が聞こえていない以上、採決は存在しない」と強調した。


そんなのアリ?!「聴取不能」な議事録に誰かが加筆しちゃったみたい 
明日の自由を守る若手弁護士の会(あすわか) 2015年10月13日
議決不存在(議決してない)としてご紹介した、安保法案の参院特別委員会ですが、
その委員会の議事録に、誰かが「可決した」と加筆してしまったようです。
 
 安保法「聴取不能」の議事録 与党判断で「可決」追記
(記事引用)
  安全保障関連法を採決した九月十七日の参院特別委員会の議事録が、十一日に参院ホームページ(HP)で公開された。採決は委員長の宣告後に行われるのが規則。
 採決を宣告したと主張する委員長発言を「聴取不能」と認めておきながら、安保法を「可決すべきものと決定した」と付け加えた。
 採決に続き、議事録の内容まで与党側が決めたと、野党は反発している。 (篠ケ瀬祐司)
 (引用ここまで)
 
つまり、国会の会議録(記録する人が聴いた、会議の内容を記録する)には「聴取不能」と書いてある(実際に聞こえなかったから)。
→その後で、「委員長復席の後の議事経過は、次のとおりである」という説明を、議事録に追記した(誰がそう説明してるのかはわからない)。
その内容は、大きくいうと
 ・審議再開を意味する「速記を開始」して安保法制を議題とし、「質疑を終局した後、いずれも可決すべきものと決定した」。
・「安保法制について、付帯決議を行った」
 
もう一度言いますが、この議事経過というもの、誰が「経過はこうだったんですよ」と言っているのかは、書いていません。
あと、「可決すべきものと決定した」人が誰なのかも、書いていません。
ここが書いていないと、本当にその人に「可決すべきものと決定」する権限があるのかどうか、
また、その人が「可決すべきものと決定した」のはどうしてか、
それから、「経過はこうだったんですよ」と説明した誰かの説明に従って、会議録に経過を書くことが本当にできるのか、
 全部あいまいになってしまって、検証できません。
 
 そもそも、会議録っていうのは、憲法に根拠があるんです。
 第五十七条  両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
○2  両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
○3  出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
 国会の内容、誰が何に賛成し、反対したか、を公開するために会議録があるのに、
その会議録がテキトーに作られていたら、私たち主権者は、国会で本当は何が起こったのか、検証できませんね。
 
 「国民向けには形さえ整えればいい」というバカにした態度で臨まれることを、私たちはもっと怒っていいと思います。
 参議院特別委での議決については、弁護士有志225名が、議決不存在(議決そのものをしていない)という声明を出しています。