2015年9月16日水曜日

安保法案 裁判官OB75人が反対声明 元最高裁判事の否定メモも出る

 全国の地裁、高裁などを経験した裁判官OB75人が15日、「政府・与党による解釈改憲や違憲の安保法案は、立憲主義や法の支配という民主主義の根本原則に反する」との反対声明を発表し、参院議長宛てに陳情書を提出しました。
 
 同安保法案については、衆院憲法審査会に呼ばれた3人の学者が全員違憲と述べたことに端を発して、法案に反対する学者の会のアピール賛同者は既に1万3千9百人を超えました。
 13日のNHK日曜討論で、首都大学東京の木村草太準教授は元最高裁判事元法制局長官著名な憲法学者・・・つまり憲法解釈の専門的なトレーニングを受けた方の殆どがこの安保法案に違憲な部分があると言っている」と述べて、安保法案の違憲性は既に決着済みだとしました。
 
 政府が唯一合憲の根拠としているものは1959年の砂川事件最高裁判決で、「違憲かどうかは学者ではなく最高裁が判断することである」と述べていますが、それは暴論であって、山口繁・元最高裁長官は「判決が集団的自衛権を意識していたとは到底考えられないし、集団的自衛権や個別的自衛権の行使が認められるかを判断する必要もなかった」として、否定しています。
 
 ところで極く最近、当時の最高裁判事の一人である入江俊郎氏の遺留品の中から「『自衛の為の措置をとりうる』とまでいうが、『自衛の為に必要な武力か、自衛施設をもってよい』とまでは、云はない」などとするコメントを書き込んだ文書が見つかました。砂川判決に関する政府の主張を覆す決定的な証拠といえます。
 それを伝えた14日の『報道ステーション』に出演した木村草太氏は、「砂川判決が根拠にならないということは今回のお話でハッキリとわかっ」たし、「それをわざわざもってきたというのは、その程度の根拠しかないということを逆に示している」と断じました。

 また政府やそれに迎合する法案賛成論者たちは、しきりに情勢の切迫を主張し中国脅威論を煽りますが、それは本来法案の合憲性とは次元の異なる問題です。
 そもそも日本と決定的に対立すれば自国の工業生産が壊滅し経済が破壊されることを熟知している中国がことを起す筈もありません。政府の主張はあらゆる面で破綻しています。

 時事通信とLITERAの記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
裁判官OB75人が反対声明=安保法案「立憲主義に反する」
時事通信 2015年9月15日
 参院で審議が大詰めを迎えている安全保障関連法案について、全国の地、高裁などを経験した裁判官OB75人が15日、「政府・与党による解釈改憲や違憲の安保法案は、立憲主義や法の支配という民主主義の根本原則に反する」との反対声明を発表し、参院議長宛てに陳情書を提出した。
 
 呼び掛け人の1人で元仙台高裁秋田支部長の守屋克彦弁護士(80)=仙台市=は「裁判官は退官後も政治的発言をしないという雰囲気があったが、理性的な議論に役立てるために意見を言う必要があると思った」と話した。
 裁判官OBでは既に、浜田邦夫、那須弘平両元最高裁判事らが法案に反対する意見を表明しているが、OBがまとまって声明を出すのは初めて。守屋弁護士らが9月に入って知り合いのOBらに連絡を取り、賛同を募ったという。
 
 
「砂川判決」最高裁判事が遺した“自衛隊の武力認めず”の判決メモ発見! 安倍首相の唯一の拠り所がひっくり返った!
LITERA 2015年9月15日
 安保法制の強行採決が目前に迫る中、安倍政権の主張を根底からくつがえす新事実が明らかになった。
「平和安全法制の考え方は砂川判決の考え方に沿ったもので、判決は自衛権の限定容認が合憲である根拠たりうる」
 「砂川判決は明確に必要な自衛の措置は合憲であると認めた。憲法の番人としての最高裁の判断だ」
 これらは、憲法学者や専門家の違憲論に対して、安倍首相が国会やテレビインタビューで耳にタコができるくらいに繰り返してきたセリフだ。1959年に、米軍の駐留が合憲かどうかが問われた砂川裁判。その判決で最高裁が日本の自衛権を認めているのだから、集団的自衛権も安保法制も合憲だと言い張ってきた。
 
 ところが、昨日の『報道ステーション』(テレビ朝日系)が、その砂川判決を出した最高裁判事、入江俊郎氏が書いたとされる判決メモの存在をスクープした。
 入江氏は、戦後法制局の中心人物として日本国憲法にかかわり、法制局長官を経て最高裁判事に就任。歴代でもっとも長く最高裁判事を務め、数多くの憲法裁判にかかわってきた人物だ。書斎から発見されたこのメモは、その入江判事が、砂川判決にどんな意味を込めたのかを、判決の3年後まだ現役の最高裁判事だったときに解説したものだという。
 ところが、そこにはこんな文言が書かれていたのだ。
〈「自衛のための措置をとりうる」とまでいうが、「自衛の為に必要な武力、自衛施設をもってよい」とまでは云はない〉
 ようするに、安倍首相が合憲の根拠としている判決を下した判事が、集団的自衛権どころか、自衛隊の存在、武力自体について「もってよい」とは判断しなかったと明言しているのだ。
 
 『報道ステーション』によると、さらに、メモはこう続いていたという。
〈自衛の手段はもちうる それまではいっていると解してよい ただそれが(憲法9条)2項の戦力の程度にあってもよいのか又はそれに至らない程度ならよいというのかについては全然触れていないとみるべきであらう〉
 これは、判決が戦力の不保持をうたった憲法9条第2項に自衛隊が合致するかどうかについても触れていないということだ。
 
 安保法制合憲の根拠に砂川事件の最高裁判決を持ち出すことには、以前からほとんどの専門家が疑問を呈してきた。それはそうだろう。前述したように、砂川判決は米軍の駐留が合憲かどうかを問うものだ。判決で語られているのは“米軍に助けてもらうことは違憲ではない”という解釈であり、自衛隊が米軍や他国のために武力を行使するという安保法制とはまったく、問題がちがう。
 砂川判決は、合憲とする根拠のない安保法制を無理矢理合憲に見せかけるために安倍政権が持ち出した詐術、インチキに過ぎなかったのだ。
 そして、ここにきて、判決を下した当事者のメモが出てきたことで、このインチキは決定的になった。自衛隊の武力保持すら認めていない判決を、どうやって、自衛隊が海外で武力を行使する「集団的自衛権」「安保法制」合憲の根拠にできるのか、という話だ。
 
『報道ステーション』では、憲法学者・木村草太氏がこう総括していた。
砂川判決が根拠にならなということは今回のお話でハッキリとわかっていただけたと思いますし、それをわざわざもってきたというのは、その程度の根拠しかないということを逆に示していると思いますね」
 安保法制にはもう、正当性のかけらも残っていない。 (野尻民生)