2015年8月30日日曜日

安部政権がこれまで行ってきた戦争体制の構築 (五十嵐仁氏)

 30日の「安保法案反対10万人国会包囲と100万人大行動」を前にして、五十嵐仁氏が29日のブログで、これまで安部政権が進めてきた既成事実の数々をリストアップしました。
 
 例えば防衛庁の防衛省への昇格国家安全保障会議(日本版NSC)と国家安全保障局の新設武器輸出の解禁、防衛省内の「文官統制」規定廃止日本版海兵隊の新設、辺野古での巨大新基地建設の計画、オスプレイの購入、イージス艦の建造、新型空中給油機の取得そして首相官邸によるマスコミへの懐柔と干渉、さらには特定秘密保護法の制定「教育改革」による「戦争する心」作り等々というわけです。
 
 そしてそのような道を拒むためにも戦争法案を廃案にする必要があるとして、30日に全国で行われる一斉行動に参加することを訴えています
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戦争法案の準備とともに進められてきた既成事実化の数々
五十嵐仁の転成仁語 2015年8月29日 
 安倍首相ど「軍事大好き総理」は、今までいなかったと言って良いでしょう。確かに、岸首相や鳩山一郎首相なども憲法改正と再軍備を主張しました。
 また、中曽根首相も「日本列島不沈空母論」や「三海峡封鎖論」を唱えました。安倍首相もその「伝統」を受け継いでいます。
 しかし、安倍首相の場合は、発言だけではありません。実際の政策変更によってその具体化を急速に進めてきており、この点に大きな特徴があります。
 
 安倍首相は、これまでのどの首相よりも自衛隊への親近感を示しています。今まで、ヘルメットに迷彩服姿で戦車に乗るというようなパフォーマンスを見せた首相がいたでしょうか。
 航空自衛隊松島基地を訪問した際、細菌兵器の人体実験を行ったとされる旧陸軍の731部隊と同じ機体番号の戦闘機に搭乗して顰蹙を買いました。過去において、このような首相がいたでしょうか。
 このような「軍事大好き総理」で自衛隊への親近感を抱いているからこそ、軍事力の活用を中核にした「積極的平和主義」を打ち出し、「専守防衛」を踏みにじって「海外で戦争する国」に、この国を変えようとしているわけです。
 
 そのために提案されているのが、今国会で審議されている戦争法案です。しかし、それはほんの一部にすぎません。
 「海外で戦争する国」になるために、それ以外にも着々と既成事実化が図られてきたことを見逃してはなりません。その推進主体は、安倍首相です。
 そもそも、「海外で戦争する」ためには、システム、ハード、ソフトという3つの面での具体化が必要になります。これらのうちのどれが欠けても「海外で戦争する」ことは困難になりますから、その整備・具体化が進められてきたのも当然です。
 
 第1に、法・制度の改変による「システム」面の整備です。その中核をなすのは、現在審議されている憲法違反の戦争法制の整備です。
 すでに、第一次安倍内閣の時には防衛庁の防衛省への昇格がなされています。第二次安倍内閣になってからは、国家安全保障会議(日本版NSC)と国家安全保障局の新設による戦争指導体制の整備が行われました。
 これに、武器輸出三原則から防衛装備移転三原則への変更によって禁輸から輸出へという180度の転換がなされ、政府開発援助(ODA)大綱の「開発協力大綱」への変更による非軍事目的の他国軍への支援が容認され、背広組優位を転換して「文官統制」規定を廃止した防衛省設置法12条が改正され、日豪・日露・日英間での外務・防衛担当閣僚会議(2プラス2)の設置などが行われています。いずれも、戦争するために必要なシステムの改変でした。
 
 第2に、自衛隊の「戦力」化と在日米軍基地の強化などの「ハード」面の整備です。2013年12月には国家安全保障戦略が閣議決定されましたが、このとき同時に、新防衛計画の大綱や新中期防衛力整備計画(5年間で25兆円)も閣議決定されています。
 自衛隊の「戦力」化という点では、5機のヘリが同時に発着できる海自最大の「空母型」護衛艦「いずも」(今年3月に就役)と同型のヘリコプター搭載護衛艦の進水式が27日に行われ、旧日本海軍の空母「加賀」と同じ「かが」と命名されました。このほか、「島しょ防衛」を口実にした陸上総隊の新設や「水陸機動団」編成による日本版海兵隊の新設、軍需産業と一体での武器技術の開発・調達・輸出を推進する防衛装備庁の新設、武器に応用できる大学での研究についての防衛省による公募開始などがあります。
 在日米軍基地の強化という点では、沖縄・普天間基地問題の解決を名目とした辺野古での巨大新基地建設や高江でのヘリパッド(ヘリコプター着陸帯)建設、普天間基地への垂直離着陸機オスプレイの追加配備、京都府京丹後市の経ケ岬通信所への弾道ミサイル探知・追尾用レーダー(Xバンドレーダー)の配備、横須賀基地での原子力空母の新鋭艦への交代やイージス艦2隻の追加配備、三沢基地への無人偵察機の初展開などがあります。
 
 また、2016年度予算に対する防衛省の概算要求も4年連続の増加となっています。5兆911億円(15年度当初予算比2.2%増)という概算要求は過去最大のものとなりました。
 この中には、垂直離着陸輸送機オスプレイの購入イージス艦の建造新型空中給油機の取得なども計上されています。航続距離が長く、大量の物資を遠くまで運べる装備の充実がめざされていることは明らかです。
 いずれも、海外展開を視野に入れた要求に見えます。「海外で戦争する」ための部隊の編成と装備の充実が図られようとしており、戦争法案が成立すれば国家予算の使い方も大きく変容するにちがいありません。
 
 第3に、世論対策と教育への介入などの「ソフト」面の整備です。この点では、首相官邸によるマスコミへの懐柔と干渉が際立っていると言って良いでしょう。
 ご存知のように、NHK会長や経営委員に安倍首相の「お友達」が選任され、アベチャンネルとなってニュースの報道が政府寄りに歪められてしまいました。このほか、特定秘密保護法の制定による軍事機密の秘匿、情報の隠蔽と取材規制、改正通信傍受法案(盗聴法案)や司法取引を導入する刑訴法改定法案の提出なども相次いでいます。
 また、教育への介入という点では、教育再生実行会議による「教育改革」が進められ、愛国心の涵養や道徳の教科化などによる「戦争する心」作りが着手されています。自民党などによる教科書内容への干渉も強まり、育鵬社版教科書の採用への圧力も大きくなっています。
 
 このように、「海外で戦争する国」に向けての準備は、戦争法案に限られません。以上に見たような形で総合的全面的な政策展開がなされ、既成事実化している点に注目し、警戒する必要があります。
 これらの事実を垣間見ただけでも、戦争準備が着々と進められていることが分かります。日本は、すでに「戦後」ではなく「戦前」になろうとしているのかもしれません。
 そのような道を拒むためにも、戦争準備のためのシステム整備の中核となっている戦争法案を廃案にする必要があります。日本はいま容易ならざる段階にさしかかりつつあるということを直視し、行動に立ち上がろうではありませんか。
 
 なお、明日の国会前行動では、憲法共同センターの運営する宣伝カーステージでスピーチすることになりました。場所は国会図書館の裏です。
 渾身の力を込めて話をさせていただきます。多くの方に聞いていただければ幸いです。