2015年8月16日日曜日

天皇陛下 「深い反省」と初めて述べられる 追悼式でお言葉

 終戦から70目の15「全国戦没者追悼式」で、天皇陛下はお言葉で「さきの大戦に対する深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬこと」を切に願うとして、これまでになかった「反省」という言葉を使い、不戦への思いを述べられました
 
 安倍首相は式辞で、一昨年、昨年と同様に歴代首相が盛り込んできたアジアへの加害と反省には触れませんでした
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天皇陛下「深い反省」初言及 終戦70年 追悼式でお言葉
東京新聞 2015年8月15日 
 終戦から七十年を迎えた十五日、政府主催の「全国戦没者追悼式」が東京都千代田区の日本武道館で開かれ、全国から集まった遺族約五千五百人らが、約三百十万人の戦没者を悼んだ。天皇陛下はお言葉で「さきの大戦に対する深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬこと」を切に願うとして、これまでになかった「反省」という言葉を使い、不戦への思いを述べられた。 
 
 また「戦争による荒廃からの復興、発展に向け払われた国民のたゆみない努力と、平和の存続を切望する国民の意識に支えられ、わが国は今日の平和と繁栄を築いてきました」と言及。昨年のお言葉は「国民のたゆみない努力により、今日のわが国の平和と繁栄が築き上げられました」としていたが、戦後七十年の平和の歩みが国民の願いに支えられてきたことをより強調した。
 
 安全保障法案が国会で審議され、「戦争ができる国」への懸念が高まる中で迎えた戦後七十年の節目の記念日。式典には天皇、皇后両陛下や各界の代表も参列。正午の時報に合わせ参列者が、戦死した軍人や軍属約二百三十万人と、空襲などで亡くなった民間人約八十万人の計三百十万人に黙とうをささげた。
 
 安倍晋三首相は式辞で、「戦争の惨禍を決して繰り返さない」と述べた。ただ、一昨年、昨年と同様に歴代首相が盛り込んできたアジアへの加害と反省には触れなかった
 
◆お言葉全文
 ( 8月15日 天皇陛下おことば(全文) 
 
◆平和の継承 強い願い
 <解説> 戦後七十年の全国戦没者追悼式で天皇陛下が読み上げられたお言葉は「平和の存続を切望する国民の意識に支えられ」「さきの大戦に対する深い反省とともに」など、過去の追悼式より踏み込んだ表現が随所に盛り込まれた点が強い印象を与えた。
 
 追悼式のお言葉は陛下自らが筆を執っている。「深い反省」という言葉が戦没者追悼式のお言葉で使われたのは、陛下の即位後は初めてのことだ。追悼式以外の場で「深い反省」と述べたのは、一九九二年に訪中した際の晩さん会や、九四年に韓国大統領を迎えた宮中晩さん会のあいさつがある。ただ、最近の追悼式では、前年の内容をほぼ踏襲していただけに、今回の表現の変更には、戦後七十年がたって、陛下が戦没者追悼と平和の継承に危惧の念を抱いている証しといえるだろう。
 
 「平和の存続を切望する国民の意識に支えられ、わが国は今日の平和と繁栄を築いてきました」。お言葉にこの一文を入れたことは、不戦を誓う憲法の下で、戦争をしない国であり続けた国民の意思に対する陛下の強い気持ちがにじんでいるように思う。
 
 今年四月には天皇、皇后両陛下のパラオ訪問が大きな注目を集めた。
 
 陛下が平和を希求するようになった原点は、戦後に疎開先の日光(栃木県)から帰京し、原宿駅から一面の焼け野原を見て衝撃を受けたことだったとされる。
 七十年間の平和への歩みを積み重ね、将来もそういう国であり続けてほしいという陛下からのメッセージをどう受け止めるか。「世界の平和とわが国の一層の発展」を担うこれからの世代に問われている。 (水谷孝司)
 
◆昨年のお言葉
 本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。
 
 終戦以来既に六十九年、国民のたゆみない努力により、今日のわが国の平和と繁栄が築き上げられましたが、苦難に満ちた往時をしのぶとき、感慨は今なお尽きることがありません。
 
 ここに歴史を顧み、戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い、全国民とともに、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心から追悼の意を表し、世界の平和とわが国の一層の発展を祈ります。 (全文)