2015年6月26日金曜日

TPA法案が米上・下院で可決 史上最悪の協定が成立へ

 一時は米議会で成立させるのは無理ではないかという観測も流れたTPA(貿易促進権限)法案が米上院で可決されました。同法案は下院でも17日に可決されているため、大統領の署名で成立します。
 これによってTPPについての米国側の障害はなくなりました。

 一方、安倍政権はこの協定の妥結に全く躊躇していないので、他の国々次第でいずれまとまるものと見られます。

 TPP協定はアメリカの多国籍企業にとってこれ以上は望めないほど旨みがあるので、条文の作成には数百名の社員を割いてそれに当てて来ました。

 これまで度々触れてきましたように、協定の内容は発効後4年間秘密にされ、協定実施後に生じる紛争はアメリカの数人の弁護士が裁き、その裁定はどんなに過酷なものであっても国家の主権を超えて強制的に執行されます(ISD条項)。
 しかも一旦取り決めた協定の内容は緩和できず(ラチェット条項)、脱退することは全加盟国が同意しない限り認められないというもので、闇社会の掟と見まがうばかりの非道な協定です。
 
 アメリカ以外の加盟国の中では日本のGDPや貿易額がダントツに大きいので、当初から日本を標的にしたものと言われていました。
 
 NHKニュースと植草一秀氏のブログを紹介します。
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TPPで政府に強力権限 米上院で法案可決
NHK NEWS WEB 2015年6月25日
TPP=環太平洋パートナーシップ協定を巡り、アメリカ政府に強力な交渉権限を与える法案について、議会上院の本会議で採決が行われ、野党・共和党の多数と、与党・民主党の一部の賛成多数で可決されました。法案はすでに議会下院の本会議でも可決されているため、オバマ大統領の署名で成立することになり、今後TPP交渉は加速するものと見られます。
 
TPPの交渉の加速に欠かせないとされる、アメリカ政府に強力な交渉権限を与える法案について、議会上院の本会議で24日、採決が行われ賛成60票、反対38票の賛成多数で可決されました。法案はすでに先週、議会下院の本会議でも可決されているため、オバマ大統領の署名で成立します。
アメリカ政府に強力な交渉権限を与えるこの法案はことし4月に提出され、野党・共和党はTPPを推進する立場でしたが、与党・民主党の議員の多くはTPPで自由貿易が拡大すれば国内の雇用が脅かされるとして反対を続けました。
このためオバマ大統領は、ふだんは対立する共和党指導部と足並みをそろえて、民主党の議員の説得にあたってきました。
今回、ようやく法案が可決されたことを踏まえ、TPPの交渉参加12か国の間では閣僚会合の開催に向けた調整などが本格化し、交渉の妥結に向けた動きが加速するものと見られます。 
 
共和党「米経済の将来に勝利」 民主党からは失望の声も
TPP=環太平洋パートナーシップ協定を巡り、アメリカ政府に強力な交渉権限を与える法案が賛成多数で可決されたことについて、法案を推進してきた野党・共和党の議会上院のハッチ財政委員長は24日、声明を発表し、「議会上院は歴史的な行動をとり、アメリカの人々と、この国の経済の将来に勝利をもたらした。超党派による今回の法案は、21世紀のグローバル経済の要求に応えるものだ」と歓迎しました。
また共和党のトップ、マコネル上院院内総務も声明を出し「議会は、アメリカの雇用や経済が強くなることを望んでいる人たちのために、勝利を勝ち取った。法案はまもなく法律として成立し、行政や貿易交渉に対する議会の監視力を高めるだろう」として、法案が可決された意義を強調しました。
一方、与党・民主党の議員の多くはこの法案に反対しており、議会上院のブラウン議員は声明で「失望している。今後、アメリカの労働者を裏切るようなことがないよう、TPPの交渉に臨まなければならない」として、今後、アメリカ国内の雇用が脅かされることがないようTPPの交渉の行方を注視していく考えを示しました。
 
法案可決で交渉は
去年11月に中国で開かれたTPP=環太平洋パートナーシップ協定の首脳会合で採択された首脳声明では、「妥結に向けて最終段階に入った」という文言が盛り込まれました。しかし、交渉はこう着状態が続きました。
その要因と指摘されていたのが、アメリカ政府に強力な交渉権限を与える法案成立のめどがたたなかったことです。
この法案がないままアメリカ政府と交渉を進めると、あとでアメリカ議会が交渉内容に変更を求める可能性があるため、交渉参加国が大きな決断に踏み切るのは難しい状況にありました。
去年12月以降、5度にわたって開かれた首席交渉官会合では、知的財産の分野で医薬品のデータの保護期間などを巡って、各国の交渉官たちがこの法案を理由に譲歩案を検討することに消極的だったとされ、結果として協議は大きくは進展しませんでした。
また先月、アメリカのグアムで開かれた首席交渉官会合の直後に閣僚会合を開く案が浮上しましたが、各国は法案成立のめどがたっていないことから、閣僚会合開催に慎重な姿勢を崩さず、見送られました。
甘利経済再生担当大臣も「交渉を妥結させるためには法案の成立が必須要件だ」と述べていました。
アメリカ政府に強力な交渉権限を与える法案が可決されたことを受けて、各国は今後、首席交渉官会合と閣僚会合を開催するための調整に入ります。
日本政府もアメリカと2国間協議を再開させ、主食用のコメの日本への輸入量やアメリカが自動車部品にかける関税の撤廃時期など、対立が続いている分野の交渉を行う考えです。そのうえで12か国全体の閣僚会合で大筋合意を目指すことにしています。


TPP容認はグローバル強欲巨大資本派の証し
植草一秀の「知られざる真実」 2015年6月25日
原発、憲法(戦争放棄)、TPP という三つの問題を基本政治問題と位置付けている。
政治の対立軸として、この三つを明確に位置付けることが重要であると考える。
その際、TPPは自由貿易を推進するもので、主権者に恩恵を与えるものであるから、容認しても良いのではないかとの主張がある。
つまり、TPPは容認して、原発再稼働と憲法(戦争)破壊に反対しようという主張がある。
しかし、この主張は極めて危険である。
三つの問題のなかで、日本の制度、規制、国民生活にもっとも広範に、かつ、重大な影響を与える問題が、実はTPPなのである。
TPPの実体は、日本の米国化であり、日本の国家主権の簒奪(さんだつ)である。
TPPが恐ろしいのは、その「強制性」にある。
三つの問題のなかで、根源的にもっとも重大で、もっとも深刻な影響を国民生活に与えるのがTPPなのである。そして、このTPPこそ、米国の対日侵略戦略の中核に置かれている最終兵器とも言える政策戦略なのである。
 
TPPの早期妥結のカギを握るTPA法が米国で成立することが確実な情勢になった。
TPA法は通商交渉の権限を大統領に委ねる貿易促進権限法のことである。大統領が通商交渉で条約に合意しても、議会がその内容を認めなければ、条約は修正を迫られる。
貿易促進権限法は、政府が合意した自由貿易協定を議会に諮る際、合意内容に修正を加えることを認めないとするものである。
議会は政府が合意した協定を認めるか認めないかの判断しかできなくなる。
協定参加国は、合意内容に変更が加えられないとの前提で、最終合意をすることができるため、TPP交渉の合意成立には米国でTPA法が制定されることが必要不可欠であるとされてきた。TPA法が成立すると、TPP交渉参加国は7月中にも閣僚会合を開き、合意を成立させる可能性がある。
TPPがいよいよ現実のものになる可能性が高まっているのである。
 
TPPが日本国民に幸福をもたらすものであるなら反対する必要はない。しかし、TPPは間違いなく、日本国民に重大な不幸をもたらす。だからこそ、日本国民は総意でこれに反対し、できるだけ速やかにTPPから脱退しなければならない。
TPPの何が問題なのか。
一部農産品の関税が撤廃されたり、関税率が引き下げられたとしても、それは、保護されてきた農家が困るというだけの話であって、安価な輸入品を購入できるようになるわけだから、一般国民にとっては歓迎すべきことではないのか。これが、TPPに対する一般的な受け止め方であるだろう。日本のマスメディアが、こうした事実を矮小化し、事実を歪曲する情報操作を行ってきた結果である。
しかし、農産物について、関税を撤廃し、輸入を制限しないという方針を掲げる国の方が実は少ない。食料は生存のための根源的な資源である。人間は食糧なしに生きてゆくことができない。逆に言えば、一国の食料を支配してしまえば、その国を支配することも可能になる。
 
だからこそ、農産物については、「経済的安全保障」の最重要の項目として、各国が特段の配慮を行なっているのが現実なのである。
日本の農業を改革し、生産性を高め、持続可能な発展性のある産業に強化しなければならないことは当然のことだ。しかし、それは日本が主体的に取り組む課題であって、外国政府や外国資本に強制される筋合いのものではない。
 
TPPがもたらす問題は農業にとどまらない。
すべての分野において、日本の諸制度、諸規制が、強制的に変更させられてしまう点に最大の問題がある。
現時点ですでに明らかになっている懸案事項のなかで、とりわけ重大であるのが、医療制度と食の安心・安全が根底から崩壊する可能性が極めて高いことである。
すべての国民に必要十分な医療を供給することを保障する制度が破壊される。食の安心、安全を守る諸規制が破壊される。
そして、何よりも重大な問題は、ISD条項によって、日本の諸制度、諸規制を決定する権限を日本が国家として失うことである。
原発にしても、TPPによって再稼働を止めることが不可能になる可能性が高いのである。
TPPこそ、三大政治問題のなかの「核心」であると言っても過言ではないのである。
 
「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」 http://tpphantai.com/  が5月15日、国を相手に、TPP交渉の差し止めと違憲確認を求める訴訟を東京地裁に起こした。
一人でも多くの国民がこの運動に参加して、日本を破壊し、外国資本が日本を収奪するための強制性を持つ枠組みから日本が脱却することを、必ず実現してゆかねばならないと考える
(以下は有料ブログのため非公開)