2015年6月29日月曜日

安倍政権は報道への干渉をやめるべき

 25日の自民党若手議員「文化芸術懇話会」で、安保法案を批判するメディアを懲らしめるために、広告料収入をなくすべきだなどと議員たちが発言したことは、政権与党が言論統制に言及したもので、このままでは済まされません。当然今後の国会運営=安保法案審議にも大きく影響します。
 自民党執行部は、急遽責任者の木原稔青年局長を1年間の役員停止処分に、また問題発言をした大西英男、井上貴博、長尾敬の3議員を厳重注意処分にしました。そして28日のNHK討論会で野党から追及を受けると、谷垣幹事長は「大変軽率でご迷惑を掛けた。誠にけしからん事件だ」と野党に陳謝しました。
 
 それに対して安倍首相の方は、国会で民主党などから責任を追及されても、言を左右にして明確に謝罪はしませんでした。
 
 この言論統制発言は、翌日、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞は1面トップで、読売新聞、産経新聞、日本経済新聞中面のトップや2番手記事として報じました。朝日と毎日、東京は社会面でも大きく取り上げ、地元沖縄からの抗議の声掲載ています
 また多くの地方紙も社説で批判しています 
 6月28日 各紙及び新聞・民放労連が批判の社説と抗議声明・・・・懇談会
(追記 28日付でさらに6紙が社説・声明で取り上げました)
 
 安倍政権になってから報道に対する干渉が異常に激しくなりました。
 先の選挙のときもTV局などに対して事実上の報道規制を行い、それを国会で追及されると安倍首相は「その程度のことでメディアが萎縮する筈はない」などと抜けぬけと答弁していました。
 今度の件は明らかに報道の自由への干渉を意図したものであり、「その場に居合わせたわけではない。あくまでも当人たちの問題で、私が当人たちに代わって陳謝するわけにはいかない」(安倍首相)というようなことで済まされる問題ではありません。
 
 山形新聞が1面に「言論封殺の暴挙許すなする緊急声明を掲載したことを、日刊スポーツが報じました。
 日刊ゲンダイは、「木原氏更迭では済まない 安倍政権は『勉強会発言』が命取りに」とする記事を出しました。 (註 木原氏=自民党青年局長
 
 もともと安倍氏は小泉政権時代のときにもNHKの番組に対して直接的な干渉を行っていて、それを全く恥じないところがありました。
 今度こそ安倍政権はこれまでのメディアに対する干渉を改めるべきです。
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山形新聞が1面で「言論封殺許すな」と緊急声明
日刊スポーツ 2015年6月28日
 山形新聞は28日付朝刊1面に、安全保障関連法案をめぐり自民党勉強会で沖縄県の地方紙2紙の報道に圧力をかける議論があったことを受け、「言論封殺の暴挙許すな」との見出しで寒河江浩二主筆・社長名の緊急声明を掲載した。
 
 声明は、勉強会で政権に批判的なマスコミには広告料収入の締め付けが必要などとの意見が交わされたことを「誠に遺憾で、残念なこと」とした上で、沖縄2紙だけでなく、民主主義の根幹である言論・報道の自由、新聞の独立にかかわる問題と指摘。「(山形)県民にその是非を問いたい」と訴えた。
 また、報道の自由のために新聞が倫理綱領を制定して自己規制していることを強調し、「自分の意見にくみしないからつぶしてしまえ、収入を絶ってしまえ、というのではあまりにも暴論過ぎはしまいか」と批判した。(共同)
 
 
木原氏更迭では済まない 安倍政権は「勉強会発言」が命取りに 
日刊ゲンダイ 2015年6月28日 
 自民党の若手議員が25日に開いた勉強会で、「マスコミを懲らしめるには広告収入をなくせばいい」などの暴論が相次いだことが、安倍政権の大ダメージになりそうだ。安倍首相は26日の国会で「事実であれば大変遺憾」と答弁、佐藤勉国対委員長は会を主宰した党青年局長の木原稔衆院議員(熊本1区、当選3回)を呼び、「大変なことをしてくれたな」と怒鳴りつけた。自民党は木原青年局長の更迭し、1年間の職務停止の処分に。問題の発言を行ったのは大西英男(東京16区)、井上貴博(福岡1区)、長尾敬(比例近畿ブロック)の各衆院議員(いずれも当選2回)だとして、3人を厳重注意とするなど火消し躍起なのだが、これで一件落着になると思ったら大間違いだ。
 
  問題の会合に出席していたのは加藤勝信官房副長官(岡山5区・当選5回)をはじめ、約40人。「マスコミを懲らしめるには……」以外にも「不買運動を働きかけてほしい」などの暴言が相次いだ。会合に呼ばれた作家の百田尚樹氏は「沖縄の2つの新聞社は絶対に潰さなあかん」「もともと普天間基地は田んぼの中にあった。そこに商売あると住みだした。そこを選んで住んだのは誰やねん。沖縄は本当に被害者やったのか。そうじゃない」などと語った。
「マスコミを懲らしめるには……」と発言した大西英男衆院議員は、過去に維新の会の上西小百合議員に対するセクハラやじで陳謝した“フダツキ”だ。
 
  とんでもない会合があったものだが、これは幼稚な若手議員の暴走ではない。この会は安倍応援団の会合で、官房副長官や安倍側近の萩生田光一筆頭副幹事長(東京24区・当選4回)が出席していた。実質的に会を仕切ったのは萩生田氏とされている。
 
 「そこでこういう発言が出たということは、安倍首相の考え方を代弁するんだ、総理の代わりに我々が言おう、そうすれば、首相の覚えもめでたくなる。こんなムードがあったのは間違いないと思います」(ジャーナリストの横田一氏)
 
■言論弾圧政党の正体暴露
  実際、安倍自民党と官邸はメディアコントロールと言論機関への“圧力”に血道を上げている。「報道ステーション」で古賀茂明氏が官邸からの圧力を暴露し、菅官房長官は否定していたが、やっぱり圧力はあったわけで、だから、若手からこういう発言が出る。
「安倍首相自らがジャーナリストとの会合で、アベノミクスを批判した藻谷浩介氏を酷評、“アイツだけは許さない”と言っているわけですからね。この政権が最大限に力を入れているのがメディア対策と断じてもいいくらいです。自民党の外交・経済連携本部国際情報検討委員会は昨年出した報告書で“報道の自由”を“制約”と表現し、そういう“制約”のない国際放送の設立をうたった。安倍応援団のメディアの記事を翻訳発信することにも取り組んでいる。気に入らないメディアは排除し、世の中、安倍シンパメディアだけにしたいのでしょう」(横田一氏)
 
  言論の自由を否定するような安倍・自民党で、若手の暴論が飛び出すのは必然というわけだ。ついでに言うと、百田氏の発言の裏にはこれまた安倍首相のお友達、桜井よしこ氏が昨年11月に沖縄で行った講演会が見え隠れする。
 
 「日本を取り巻く状況というのを、地元の琉球新報も沖縄タイムスもほとんど報道しない。新聞と言わないのです。琉球新報も沖縄タイムスも翁長さんを応援している。翁長さんを応援しているのは誰ですか。共産党じゃないですか」
 桜井氏はこう言って、地元紙を批判した。こうしたお友達に支えられている政権が秘密保護法を通し、戦争法案をゴリ押ししたらどうなるのか。さすがに国民も「ヤバイ」と気づくはずで、案の定、自民党には抗議が殺到しているという。今後は内閣支持率がさらに下がるのは必至で、要するに追い詰められている政権がまた墓穴を掘った。この政権のいかがわしさは口先でごまかし切れるものではない。