2015年4月15日水曜日

アメリカの正義を知る (武田邦彦氏)

 優れた文明評論家でもある武田邦彦氏が、「アメリカの正義を知る」というシリーズで9日付で「その1」、13日付で「その2」を書いています。
 
 アメリカは、1620年にメイフラワー号でイギリスの難民らがアメリカ大陸に渡ったのをきっかけとして、のちに600万人の先住民族であるインディアンを駆逐して国を作りました。殺されたインディアンは1000万人を超えるという説もあります。
 カナダ、オーストラリア、ニュージーランドも全てイギリスを母国とする人たちが、それぞれの大陸や島の先住民(有色人種)を滅ぼして自分たちの国にしました。アングロサクソン人と呼ばれる人たちです。
 
 そういう風に先住民を皆殺しにして自分たちの国を作るということは日本人の倫理観(正義感)とはとても相容れないものですが、アメリカ人などから反省の言葉を聞くことはありません。
 それはアメリカ人の正義感と日本人のそれが違っていることによります。
 大多数のアメリカ人が原爆投下について特に反省をしていないのも、同じような「価値観」の違いによるものでしょう。

 要するに「強者は何をしても良い」というのが彼らの根本原理であって、それではあまりに実も蓋もないのでその都度それなりの理屈付けをするわけです。従って常に間に合わせの理屈のために20年もすればそのデタラメさが明らかになるのですが、そのときには又新たな理屈付けをすればすむという考え方です。
 日本人のように「和をもって尊しとなす」という原理を聖徳太子以来維持している文化・文明とは大いに違わけです。

 アメリカの建国以来の歴史は戦争:ほとんどが他国への侵略の一色ですが、その一つひとつに彼らは「彼らなり」の正義の口実を設けて来ました。
 そしていまも・・・ いまは「テロとの戦争」を正義の御旗にして、中東などを空爆したり無人攻撃機で無数の人たちを殺戮しています。
 
 安倍首相も「テロとの戦争」に正義があることを信じる点ではアメリカ人に劣らないようですが、一体アメリカの歴史について思いを致したことがあるのでしょうか。
 それとも彼の正義感はアメリカ人と一致しているということなのでしょうか。
 
 武田邦彦氏の二つのブログを紹介します。
 例によって音声ブログがメインで、文章はその梗概を示したものです。
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正義を知る001 アメリカの正義を知る-1 
武田邦彦 2015年04月09日  
音声ブログのURL
 
アメリカの正義は、次のように変わって来ました。
明白な天命→白人の責務→キリスト教徒の義務→ドミノ理論(防共)→テロとの戦い(反民主主義との戦い)
 
1) 明白な天命・・・アメリカ東海岸に流れ着いたイギリスからの難民が、アメリカ本土にすんでいたインディアン(現在ではネイティブ・アメリカンと呼ぶ)をすべて殺戮し、その土地を取るために使った正義の御旗。キリスト教の神が西に進み、そこに居る人を殺して良いという「明白な天命」を与えたとして納得した。殺戮されたインディアン約600万人。
 
2) 白人の責務・・・白人は優れているので、有色人種を抑圧し、教育し、あるいはその領土を奪って白人の世界にするのが「白人の責務」であるという御旗。カリブ海諸島、メキシコ領(テキサスなど)、ハワイを侵略し、あるいは攻める口実として使った。
 
3) キリスト教の義務・・・キリスト教ではない国を占領し、キリスト教にするのはアメリカ人の義務であるという思想。フィリピンの植民地化とキリスト教の布教に使ったいいわけ。日本への攻撃は日本の文化があまりに強力だったので、理由を見いだせなかった。
 
4) ドミノ理論・・・第二次世界大戦後、共産主義が一気に広まるのを「ドミノ倒し」になぞらえ、それを防ぐものとして、ベトナム戦争を行った。
 
5) テロとの戦い・・・アフガニスタン、イラクなどへの侵攻の口実として使用した御旗。事実はイラクの大量破壊兵器などもウソだったが、この御旗をもとにどんな侵略や先制攻撃も許されるとした。
 
これらの理論武装と、ウソ、相手への挑発、偽装によって戦争のきっかけを作った。
 
a)  相手をジリジリ追い詰め、切羽詰まった相手が反撃するようにする手法・・・インディアン戦争、メキシコ戦争、対日戦争
b)  偽装をもって戦争を始める・・・メリー号事件とフィリピン侵略、ベトナム戦争とトンキン湾事件、大量破壊兵器とイラク戦争
 
アメリカとは特別な国である。このことはアメリカの学者もアメリカの中で堂々と言っているが、日本では「そんなことを言っては悪い」とか、「アメリカににらまれる」と思って言わない。日本人に正義感があるのか?    執筆 平成27年4月6日)
 
 
正義を知る002 アメリカの正義を知る-2 
武田邦彦 2015年04月13日  
音声ブログのURL
アメリカの対外政策の基本は、「理想を唱え、覇権を獲る」ということだが、このような「恥ずかしいこと」を正面から堂々と言う社会であるところにアメリカの強さがある。
 
このような二重人格性はアングロサクソンの特徴で、イギリス人の二枚舌を、当のイギリスの劇作家バーナード・ショーは次のように言っている。
 
「彼等は何か欲しいものがあっても、それが欲しいとは自分自身にさえ言わない。辛抱強く待つ。そうするうちに、彼らが欲するものの持ち主を征服することが自分の道徳的宗教的義務であるという確信が心の中に生じてくる。そうなると、彼らの行動は大胆不敵なものとなる。」
 
NHKが大々的に報じたハーバード大学の「正義の講義」はまさにこのようなアングロサクソンの正義(いかにして本音を隠して正義らしく見せるか)という技法だった。
 
アジアがヨーロッパとアメリカの植民地になったのは、軍事力が弱かったことに加えて、「正直だった」ということがある。しかし正直だったということは良いことだけではない。自分が正直だから妻や子供が植民地の奴隷になるのだから、それは良いことではなく、悪い場合もある。
 
もう少し正義というのを広く考えないと、私たちはこれからもアメリカ、ヨーロッパと対等につきあっていくことはできないだろう。今でも、ドイツがやっているからといって、リサイクル、原発廃止などを唱える人がいるが、これも白人コンプレックスの正義だろう。
執筆 平成27年4月6日)