2015年3月29日日曜日

米における戦争への策動と反戦運動への攻撃

 この記事の前半はPaul Craig Roberts氏がミシェル・チョスドフスキー教授最新刊について紹介したもので、戦争国家アメリカの現状を伝えるものです。
 
 ワシントンはオバマ時代に入ってから戦争をグローバル化させたとし、そ手段として核兵器先制第一撃で使用するように「格上げ」しました。勿論宣戦布告などなしに行うもので戦争のルールからの大変な逸脱ですが、相手から報復を受けないように第一撃で完璧に破壊してしまうという身勝手な考え方によるものです。
 
 対テロ戦争においては、強制収容所、標的暗殺と拷問部屋を公然の手段としていまや隠すこともなく、それによって‘欧米民主主義’を流布しようとしています。
 
 国内の反戦運動は、ワシントンや財団などが反対団体に資金提供をし、指導部取り込み、役職や報酬を与えることで結果として反対運動を破壊しています。
 環境保護団体についても同様です。
 
 その結果いまではアメリカの外交政策論議から反対意見は消滅しまし
 かつて9/11事件の公式説明を進歩派、左翼や反戦団体が“無批判に受け入れたことが、今日のワシントンによる戦争策動を許す基盤なっているということです。
 
 原題の「マニュファクチャリング・ディセント(原訳:反対派をでっち上げる)」は、ノーム・チョムスキー『マニュファクチャリング・コンセント(世論の製造)をもじったもので、直接的には「反対運動破壊の方法」というニュアンスを持っています。
 
 話がスティーブン・コーエン教授に言及するところからPaul Craig Roberts氏自身の意見開陳に入るようで、国内のネオコンによる対イラン戦争の策動や、ネオコンがイランとロシアとの戦争を推進するのをニューヨーク・タイムズ幇助していることなどに触れています。
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マニュファクチャリング・ディセント(反対派をでっち上げる)
 マスコミに載らない海外記事 2015年3月28日
Paul Craig Roberts 2015年3月26日
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ミシェル・チョスドフスキー教授は多数の重要な本を書いている。最新刊は、The Globalization of War: America’s Long War Against Humanity(戦争のグローバル化:人類に対する、アメリカの長き戦い)。チョスドフスキー教授は、ワシントンがアメリカ大統領を、ノーベル平和賞を獲得した世界の平和推進者として描きながら、戦争をグローバル化させたことを示している。ワシントンは軍隊を、150ヶ国に配備し、世界を6つのアメリカ軍司令管区に区分けし、宇宙作戦も含むグローバル攻撃計画をもっている。核兵器はグローバル攻撃計画の一環で、先制第一撃で使用するよう格上げされたが、冷戦における役割からの危険な逸脱だ。
 
アメリカの軍事化には、アメリカ国民に対し、そして、アメリカ経済帝国主義に成り代わって、主権国家の軍事的強制に使うための、地方警察向けの軍用兵器も含まれる。
 
一つの結果は、核戦争の可能性だ。もう一つの結果は、アメリカ外交政策の犯罪化だ。戦争犯罪が、その結果だ。こうしたものは、個々の、ならずもの連中による戦争犯罪ではなく、確立した指針や手順で制度化された戦争犯罪だ。“ブッシュ政権と、オバマ政権との違いは”“強制収容所、標的暗殺と拷問部屋が、いまやあからさまに、‘グローバル対テロ戦争’を維持し、‘欧米民主主義’の流布を支援するための介入用の正当手段と見なされていることだ”と、チョスドフスキーは書いている。
 
チョスドフスキーは、自分の国が軍国主義的警察国家に変貌することに対し、アメリカ国民が、抗議し、抵抗する能力は限られていると指摘している。ワシントンや従順な財団が、今や反対派の運動を支配するために資金提供している。彼はノーム・チョムスキーとエドワード・S・ハーマンの『マニュファクチャリング・コンセント』を引用している。彼は、エリートが、反対派に資金提供をすることで、草の根コミュニティー指導部が取り込まれる結果になっている様子を、ポール・キヴェル説明させている。同じことが環境保護団体でも起きている。黒人も、役職や報酬を与えられる、エリートの金と能力で、指導者を奪われてしまった。
 
チョスドフスキーは、進歩派、左翼や反戦団体が“対テロ戦争”を支持し、9/11事件の公式説明を無批判に受け入れたことが、ワシントンによる戦争の基盤となっていると指摘している。
ウソを受け入れたことで、抗議する基盤も失われた。それで、抗議が存在しないのだ。
 
スティーブン・コーエン教授が指摘している通り、アメリカの外交政策論議から、反対意見は消滅したのだ。反対意見のかわりに存在しているのは、更なる戦争への激励だ。その好例は、今日の(2015年3月26日) ジョージ・W・ブッシュ政権時代にアメリカ国連大使だったネオコン、ジョン・R・ボルトンによるニューヨーク・タイムズ論説だ。
 
ボルトンは、イラン爆撃を呼びかけている。イランへの軍事攻撃以外の方法は“非現実的雰囲気”しかなく、サウジアラビア、エジプトやトルコも、イランから自らを守る為、核兵器を開発することを確実にするだろうとボルトンは言う。ボルトンによれば、イスラエルとアメリカの核兵器備蓄は脅威ではないが、イランの核兵器備蓄は脅威になるのだ。
 
もちろん、イランが核兵器計画を持っている証拠は皆無だが、ボルトンは、ともあれ、そう断言している。しかも、イランと取り付けた、核兵器に必要なレベルよりずっと低いイランの核濃縮計画をやめる協定を、ボルトンは巧みに見過ごしている。イランは、もし原子力発電を許されれば、核兵器計画を隠しおおせるだろうというボルトンの考えは根拠がない。信じ難い主張にすぎないのだ。
 
ネオコンは戦争推進ロビーだ。ある戦争がうまくゆかないと、連中は次の戦争をやりたがるのだ。連中は、戦争リストを拡張し続けている。ネオコンは、イラク戦争は、わずか3週間の“朝飯前”で、経費700億ドルで、イラクの石油収入でまかなえる、と我々に約束した連中であることを想起願いたい。8年もの戦争の経費は、少なくとも3ドルで、アメリカ人納税者が支払っており、アメリカはあきらめ、撤退した。現在、聖戦戦士は、シリアとイラクの一部から新しい国を切り分けつつある。
 
ネオコン・ブッシュ政権のイラク戦争が、他のあらゆるネオコン戦争や、現在のロシアやイランとの戦争衝動と同様に、全くのウソに基づいていたことは周知の事実だ。ウソと失敗の実績にもかかわらず、いまだにネオコンはアメリカ外交政策を支配し、ネオコンのヌーランドは、旧ソ連共和国のアルメニア、キルギスタンやウズベキスタンにおける“カラー革命”やクーデターの醸成に勤しんでいる。
 
ニューヨーク・タイムズの応援がなければ、ネオコンは、イラク戦争を続けることはできなかったろう。現在、ネオコンには誠実だが、アメリカ国民には誠実ではないニューヨーク・タイムズは、ネオコンがイランとロシアとの戦争を推進するのを幇助している
 
友人として、いまだ、ニューヨーク・タイムズを読み、信じている大学学長が何人かいる。ニューヨーク・タイムズがあおっているイランやロシアとの戦争は、イラクやアフガニスタンとの戦争より遥かに危険だ。人類はそうした戦争で生き残れないかもしれない。
 
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