2015年3月29日日曜日

安倍内閣は「わが軍」発言を訂正せず

 憲法9条に違反する集団的自衛権の行使を謳った昨年7月の「閣議決定」を根拠にして「安全保障法制」の立法化を狙っている安倍首相は、20日の参院予算委員会で、ついに自衛隊のことを「わが軍」と口にしました。
 
 自衛隊を専守防衛の組織から通常の軍隊に変えたくて仕方のない安倍氏の本心が暴露されたもので大変な問題です。当然、首相は発言の不適切さを認め、陳謝して撤回するものと思われましたが、菅官房長官は「自衛隊も軍隊の一つだ」と首相を擁護し、首相も27日の参院予算委で同じ認識を示して自らの非を認めようとはしませんでした。まことに驚くべき対応です。
 
 菅氏や首相が言うように「自衛隊も軍隊だ」というのは一面の真理であり、自衛隊は憲法違反ではないのかという意見は創設された当初からありました。
 それに対して「憲法の前文には国民の平和的生存権が謳われ、13条には同じく国民の生命・自由・幸福追求の権利が謳われている」のだから、「急迫不正の侵略」から国民の幸福を守るために、国が戦えないことはあり得ないということから、憲法9条と両立し得るというのが歴代の内閣法制局(および内閣)の見解でした。
 
 要するに「自衛隊は9条の制約によって通常の観念の軍隊とは異なる」というもので、逆に「急迫不正の侵略」に対する自衛権の範囲を一歩でも踏み越えることは許されていません。
 歴代の内閣はそれを厳格に守ってきたのですが、今度の内閣はそれらとは無縁の内閣というわけです。そうなればまさに「不条理」が現前しているということで、それ以外の表現は見つかりません。
 
 28日の沖縄タイムスは、(社説わが軍』『八紘一宇』 緊張欠く慢心発言次々」を、また信濃毎日新聞は(社説)「『わが軍発言』 憲法に照らし許されぬ」を掲げました。
 両紙の社説を紹介します。
 
  追記 北海道新聞も同趣旨の社説を出しましたが紙面の関係で割愛します。
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社説「わが軍」「八紘一宇」 緊張欠く慢心発言次々
沖縄タイムス 2015年3月28日
 安倍晋三首相が国会で、自衛隊を「わが軍」と表現した。菅義偉官房長官は「自衛隊が軍隊であるかどうかは、定義いかんによるものだ。誤りとの見解は全く当たらない」と弁護し、問題ないとの認識を示す。
 ということは、防衛相が「わが軍」だと言っても、何も問題ないということなのか。
 「わが軍」発言があったのは、20日の参院予算委員会。安倍首相は自衛隊と他国の軍隊との共同訓練に触れ、「わが軍の透明性を上げていくことに大きな成果を上げている」と言及した。
 憲法9条は第2項で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と規定している。そのため政府は答弁書などで、戦力を保持する軍隊と区別し自衛隊を「自衛のための必要最小限度の実力組織」と位置付けてきた。
 案の定、野党からは「軍隊ではなく自衛隊、軍人ではなく自衛官だ。これが憲法の制約」「戦争する国づくりに一路まい進しているという本音だ」と批判が相次いでいる。
 佐藤栄作首相が「自衛隊を軍隊と呼称することはしない」(1967年3月、参院予算委員会)と答弁するなど、憲法上の厳しい制約から「自衛隊は通常の観念の軍隊とは異なる」というのが政府の見解であったはずだ。
 「自衛隊は事実上の軍隊であり、憲法に違反している」と主張するのは、ある意味で筋が通っている。しかし、首相や官房長官が公然と「自衛隊=軍隊」論をぶつのは、自ら憲法の制約を無視するようなものである。
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 かつて、中曽根内閣で官房長官を務めた後藤田正晴氏は、イラン・イラク戦争で自衛隊掃海艇のペルシャ湾派遣の話が浮上した際、職を賭して反対し、前のめりになる中曽根康弘首相にブレーキをかけた。
 安倍政権には、首相にブレーキをかける役割の政治家が見当たらない。 
 それは国会の中で堂々と「八紘(はっこう)一宇」が語られる「緩い空気」とつながっている。
 16日の参院予算委員会で自民党の三原じゅん子議員は「八紘一宇」を「日本が建国以来、大切にしてきた価値観だ」と訴え、今後の日本のあるべき姿として紹介した。
 八紘一宇には「世界を一つの家とする」という意味があるが、戦前・戦中にはアジアへの侵略を正当化するスローガンとして使われた。
 三原氏が「八紘一宇」を持ち出したのは、多国籍企業に対する課税問題を取り上げた時である。必然性のない、意味不明な言い回しだ。
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 安倍首相の歴史認識が問われる戦後70年談話がこの夏、発表される。
 統一地方選が終われば、安保法制の条文化作業も本格化する。安倍首相は日本をどこへ引っ張ろうとしているのだろう。
 自民党の党是として憲法改正を方針に掲げるのはいいが、安倍政権は憲法9条軽視があまりに露骨だ。
 憲法は99条で、国会議員は憲法を尊重し擁護する義務を負うと定めていることを忘れてはならない。
 
 
「わが軍」発言 憲法に照らし許されぬ
信濃毎日新聞 2015年3月28日
 どのような理由であれ認められない。
 安倍晋三首相が先日の国会答弁で、自衛隊を「わが軍」と表現した問題である。
 戦力不保持を規定した憲法9条との関係で、歴代の政権は自衛隊を「軍隊」と呼ぶことを避けてきた。
 9条を改定し、「国防軍」の創設を目指す首相が本音を漏らしたと思われても仕方ない。何より、憲法を守るべき首相自身が国の最高法規を軽んじていることを示したようなものだ。
 国会は首相の真意も含め、厳しく追及しなくてはならない。
 問題の発言は20日の参院予算委員会の場で飛び出した。自衛隊と他国の軍隊との共同訓練に触れた際、「わが軍の透明性を上げていくことについては大きな成果を上げている」と語った。
 ただ、その後は軍とは言わずに「自衛隊は規律がしっかりしている」と言い換えた。
 民主党の細野豪志政調会長は「これまで積み上げてきた議論をひっくり返すような話だ」と批判。維新の党の松野頼久幹事長も「不安をあおるような言い回しには気を付けるべきだ」と指摘するなど、野党は反発している。
 これに対し、菅義偉官房長官は「通常の観念で考えられる軍隊とは異なるが、自国防衛を主な任務とする組織を軍隊と呼ぶのであれば自衛隊も軍隊だ」などと首相発言を擁護し、さらに波紋を広げる結果を招いた。
 自衛隊が軍隊かどうかは、これまでも国会で議論になってきた。佐藤栄作首相が1967年に「自衛隊を今後とも軍隊と呼称することは致しません」と答弁して以降、政府が自衛隊を軍と呼ぶことはなくなったとされる。
 安倍首相自身も第1次政権のとき、自衛隊は「憲法上自衛のための必要最小限度を超える実力を保持し得ない等の制約を課されており、通常の観念で考えられる軍隊とは異なるものと考えている」と答弁している。
 首相の今回の発言は、歴代の政府見解と異なるばかりか、自身の言葉とも矛盾するものだ。軍と表現したことと同時に、多くの人に国民のための自衛隊があたかも首相のものであるかのように思わせたことも問題である。
 新たな安全保障法制の骨格が先日、自民党と公明党の間で合意されたばかりである。法が整備されれば自衛隊の活動は質量ともに拡大する。自衛隊を「わが軍」と呼ぶ首相の手による法整備の行方にますます心配が募る。