2015年2月3日火曜日

メディア 今度は首相擁護論

 国民の祈りも空しく、イスラム国に人質として拘束されていた後藤さんは殺害されました。この最悪の結果でメディアも政府批判自粛の必要がなくなりました。
 それではこの間の首相の不可解な言動が、メディアによって批判の俎上に乗せられたのでしょうか。
 
 事実は全く違いました。
 
 展開されたのは、誰が首相でもいつかは起きたこと、日本は10年も前から敵国扱いを受けていた、安倍首相には何のミスもなかったなどという安倍首相擁護論でした。
 これまで「これほど人質の命に無頓着な人間は珍しいが、それを首相に選んだのは国民だ」という自嘲が聞かれましたが、そうではなくて実は「無謬の人」を国民は選んでいたというわけです。予想も出来なかった展開です。
 
 LITERAの記事と天木直人氏のブログを紹介します。
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後藤さん殺害でも安倍批判禁止のテレビ各局
      …対イスラム国戦争参加を煽る番組も!
LITERA 2015年2月2日
 湯川遥菜さんに続き、後藤健二さんの殺害が明らかになり、イスラム国人質事件は最悪の結果となってしまった。しかし、今回の事件は“最悪の始まり”かもしれない。殺害動画アップを受けて安倍晋三首相はこんなコメントを口にした。
「テロリストたちを決して許しません。その罪を償わせるために国際社会と連携してまいります。日本がテロに屈することは決してありません」
「テロリストを許さない」「罪を償わせる」、まるでイスラム国への宣戦布告と思えるものではないか。いや、アメリカが主導する有志連合に日本も加わり、十字軍として空爆に参加する──安倍政権は現段階では否定しているが、将来的にこの悪夢のような事態は十分起こりうるだろう。
 
 日本人2人が殺害されたことで、今後、安倍首相はこれを最大限利用するだろう。イスラム国への憎悪を煽り、有志連合からイスラム国や他の紛争地域への協力が要請されれば自衛隊法を改正してそれに応じる。その上で憲法を改正をめざす。安倍首相がこれまで目論んできたことが、今回の事件で一気に加速する可能性は残念ながら非常に高い。
 しかも、これを後押しするのが新聞、テレビなどの大手メディアだ。これまでも日本のマスコミは人質事件に対し、安倍政権のとった交渉を検証し伝えるどころか、全面擁護を展開してきた。
 
 人質事件発覚の翌日、新聞各紙には「安倍政権の人道支援は不可欠。毅然として向きあっていくべき」「(安倍政権の人道支援は)『イスラム国』との戦闘に力点を置いた支援ではない」といった文言が踊った。
 これは安倍政権の応援団の読売や産経だけではなく、全国紙すべてが揃って同じ論調だった。
 もちろん、テレビはそれ以上の自粛体制だった。安倍首相の責任や政府の対応のまずさを指摘したのは『報道ステーション』『モーニングバード』(テレビ朝日系)くらい。それ以外のすべてのニュース番組は「人命尊重」を錦の御旗に掲げ、一切の安倍政権批判を封印した。
 
 その異様さが際立っていたのが1月30日放映の『朝まで生テレビ』(テレ朝系)だ。多くのパネラーが冒頭から「イスラム国」の名称を政府が使用する「ISIL」と呼ぶべきだと主張し、身代金を払わなかった政府の対応を「毅然としていた」と賛美していた。 人質が取られていたタイミングでの中東歴訪や、「イスラム国と闘う」というカイロでの安倍の演説に疑問を呈した精神科医の香山リカとテレ朝コメンテーターの川村晃司は、他のパネラーから袋叩きにあった。 
 こうした空気は後藤さんが殺害された後、さらにエスカレートしている。
 
 殺害の一報がもたらされた直後、『新報道2001』(フジテレビ系)では小野寺五典自民党政調会長代理や元産経記者でタカ派ジャーナリストの古森義久などを登場させ、「イスラム国の声明は宣戦布告と受け取るべきだ」「日本は団結すべき」「憲法9条のせいで愛するものを守れなくてもいいのか」などと、対イスラム戦争への参加を煽るコメントを次々と繰り出した。
 また、『サンデースクランブル』(テレ朝系)では元外務官僚出身の評論家・宮家邦彦が登場し、下平アナが「安倍首相の支援の発言による影響が…」と口にしたとたんに、激しい口調で「ない。ないです」と打ち消し。それ以上の言葉を続けさせないようにして「安倍首相が何を言おうが、こう言った事態は起こった」と断言した。
 そのうえで「今回の事件で(テロが)我が身に降り掛かるという意識をもつべき。これまでの安全保障を見直す必要がある」「日本の9.11ですから、いまこそ日本全体が団結することが必要」などとまさに9・11のアフガン戦争前夜のアメリカような危機を煽るコメントを発した。
 
『バンキシャ!』(日本テレビ系)は安倍首相のフォロー大会のようだった。伊佐治健・日本テレビ政治部長が「安倍首相が中東訪問時にこうした事態に発展するのかというシミュレーションができていたのか」と疑問を呈すると、すかさず司会の福澤朗が「安倍首相も大変だったのでは」とフォロー、さらに東京外国語大の青山弘之も安倍首相がイスラエルの旗の前で演説していたことについて「問題視する意見もあったが、イスラエルとイスラム国はそんなに緊迫した関係じゃない。その指摘は違うのでは」とかばった。
 
『Mr.サンデー』(フジ系)も人質交渉失敗にかんする日本の責任を問うシーンは一切なく、テロとどう戦うかという視点のみ。コメンテーターの「ニューズウィーク日本版」元編集長・竹田圭吾も「日本は毅然とした対応をした。今回の件を敗北ととらえるかは慎重でなければならない」と安倍政権を擁護した。
 
 唖然としたのはNHKの『ニュース7』だ。何しろ、安倍政権の対応を「政府は全力を尽くした」とした上で、「国家安全保障会議(日本版NSC)が発足し、世界の情報が集まった」と評価したのである。周知のように国家安全保障会議が開かれたのは人質事件が発覚してから3日後、最初の身代金要求の支払期限直前の23日で、設置の遅さに疑問を呈する声もあった。それをNHKは「情報が集まった」などと評価したのである。もはやNHKはただの安倍政権の宣伝機関と化したといっていいだろう。
 
 とにかく、どの局も安倍政権を擁護し、「テロとの闘い」を煽るばかり。これが事件をきっかけに事実上の大本営体制が敷かれてしまった日本メディアの惨憺たる状況だ。
 おそらくこのままいけば、安倍政権の人質見殺しを批判する声は完全に封じられてしまうだろう。そして、安倍政権に先導されて「日本国の一大事なのだから政権批判は控えろ」→「卑劣なテロには屈しない」→「人質が殺された今こそ自衛隊派兵、憲法改正」という戦争への途に世論が引きずられていく。
 メデイアや言論人は今、「テロ」ではなく「安倍政権」に屈しようとしているのだ。そのことをけっして忘れてはならない。 (田部祥太)
 
 
安倍責任逃れもここまでくるとお笑いだ
  天木直人 2015年02月02日
 あの人質事件がいつ解決するか誰もわからなかったとき、メディア関係者の一人が私に本音を吐露したことがあった。
 政府からの情報は何もなく、したがって報道することもなく、毎日同じような報道を繰り返していい加減うんざりしてきた、いつまで続くのか、と。
 人質事件が不幸な形で解決した今、おそらくそのメディア関係者はこう思っているに違いない。
 事件が終ったあとは検証記事しかない。しかし検証すればするほど安倍政権の失態が明るみになる。だから嘘ばかり書かせられることになる。うんざりだ。いつまで続くのか、と。
 
 それほど人質事件の後の報道は歪められている。
 しかし、安倍首相の責任逃れに加担する記事も、ここまでくればやり過ぎだ。
 きょう2月2日の読売新聞が「救出かけた首相歴訪」という大きな見出しを掲げて書いた。
 その記事で読売新聞が言わんとすることは、今度の中東訪問を決行する前から政府は邦人の拉致事件を知っていた。政府内には、邦人保護で不測の事態が起こるのではと懸念する声もあったが、官邸は「行かなければテロに屈したことになるし、今回行かなくても、別の機会が狙われるだけ」、と判断して中東訪問に踏み切ったのだ、と。
 これは人質が起きていたこと事前に知っていながら、それを国民に隠し、しかもノコノコと出かけて行った大失策を、先手を打って防ごうとした御用記事だ。
 すなわちあの外遊は、邦人を救済するための中東訪問だったというわけだ。
 とんでもない詭弁だ。
 百歩譲ってそうであったとしても、見事に救出作戦は失敗した。どう責任を取るつもりか。
 安倍首相の外遊批判の火に油を注ぐような御用記事だ。
 
 もう一つはきょう2月2日の産経新聞の記事だ。
 外務省後輩OBの宮家邦彦氏(キャノングローバル戦略研究所研究主幹)が、「日本国全体に対する挑戦」と題する論評を書いていた。
 そこで語られる宮家氏の論調はこうだ。
 人質はすでに昨年の時点でとられていたのであり、安倍演説をきっかけに日本人がターゲットになったのではない。今度の事件は湯川、後藤両名だけに向けられたものでなく、日本人、日本国全体に対する挑戦だ。内輪もめしている時ではない。いまこそ一致団結してテロに備えるよう考え方を変えなければいけない、と。
 まさしくこれは論理にすり替えだ。
 あの太平洋戦争が、1億総国民の責任にされ、1億総国民の懺悔で片づけられてしまったのと同じだ。
 情報操作もここまでくればお笑いだ。
 読売新聞の記事といい、産経新聞の宮家君の論評といい、読者を馬鹿にするにもほどがある。
 抗議の一つでも起こらないようでは、読売新聞や産経新聞の読者は、馬鹿ばかりということだ (了)