2015年1月2日金曜日

平和・反戦 東京新聞記者たちお薦めの作品・場所

  戦後70年の幕開けに当たり東京新聞の記者たちが、平和に思いをはせ、反戦の気持ちを新たにした作品や場所を紹介しています。
 
 映画あり、本あり、音楽あり、場所あり、舞台あり・・・です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
平和・反戦 考える時に… 本紙記者お薦めの作品・場所
東京新聞 2015年1月1日
 記者たちにも、平和に思いをはせ、反戦の気持ちを新たにした作品や場所が、ある。自らの思いを形にする。素晴らしい音楽や芸術を味わう。行きたい場所に足を運ぶ。そういう生き方のできる世が続くことを、戦後70年の幕開けに願い、みんなで紹介します。
 
【映画】 ドレスデン、運命の日 ローランド・ズゾ・リヒター監督
 ドイツのドレスデン空襲を、市民の目から描いた人間ドラマ。日独の空襲の違いや共通点も感じられる。 (橋本 誠)
【本】 闘争の倫理 大西鉄之祐 二玄社
 第二次世界大戦で戦闘、捕虜生活を経験したラグビー指導者。戦争が人間の理性を失わせるさまを目の当たりにし、平和を守るために、スポーツを通じ「闘争の倫理」を教えよと説く。 (吉岡 潤)
【音楽】 イマジン ジョン・レノン
 言わずと知れた平和ソング。いつになればその願いは届くのか。日本語訳詞では、故忌野清志郎さんのものが歌とともに好きだ。 (鈴木 学)
【場所】 国際平和ミュージアム 立命館大学(京都市北区)
 「平和と民主主義」を教学理念とする、わが母校のミュージアム。学生の時は、戦場写真展など企画があるたびに見に行った。 (小沢 慧一)
【場所】 大和ゆとりの森(大和市) 綾瀬スポーツ公園(綾瀬市)
 いずれも米海軍厚木基地の滑走路南側に広がる公園。空母艦載機駐留中は、頭上をぶんぶん飛ぶ。民間機とは全く違うあのごう音は、誰もが一度体験し、事実として知ってほしい。 (原 昌志)
【音楽】 ヒロシマの有る国で 山本さとし作詞・作曲
 30年ほど前に聴いて以来、頭から離れない。今なお、平和の集いで歌い続けられている曲だという。 (上條 憲也)
【映画】 シリアの花嫁 エラン・リクリス監督
 軍事境界線の向こう側に住む男性との結婚を決めた女性。政治(戦争)に人生を翻弄(ほんろう)されながらも前向きに生きる姿に、人間の高貴さを見る。政治(戦争)の非情さと愚かさも浮き彫りになる。 (寺岡 秀樹)
【アニメ】 風立ちぬ 宮崎駿監督
 美しい飛行機をつくろうと、夢を形にしていく主人公。戦争中であろうと、その姿は尊い。 (猪飼 なつみ)
【マンガ】 夕凪の街 桜の国 こうの史代 双葉社
 広島で原爆から生き残った女性が、幾多の死体を踏み越え逃げた記憶に自らを責める。原爆の爪痕が残る体とともに生きる苦しみ。病床に伏してつぶやくせりふは、胸に刺さる。 (平木 友見子)
【映像作品】 ドキュメンタリー「映像の世紀」 1995~96年 NHK放映
 20世紀を映像で振り返る。高校生の時に何度も見て、さまざまな戦争や紛争の映像に強い衝撃を受けた。平和や正義って何だろうと考えた。記者人生につながった作品かもしれない。 (山田 祐一郎)
【舞台】 国民の映画 三谷幸喜作・演出
 芸術とメディアを監視する権限を持つヒトラー内閣宣伝大臣ゲッベルスと、映画人たちの絶妙な掛け合い。普通の人間が権力に揺さぶられ狂気に走る。笑える。そして背筋が寒くなる。 (中沢 佳子)
【場所】 ラングドン・ウォーナーの碑 鎌倉駅西口
 文化財を爆撃から救ったと言われる、米国の東洋美術研究家の碑。碑文は「文化は戦争に優先する」。湾岸戦争の取材で、それに近いものを見た。彼が鎌倉を守ってくれたと信じたい。 (草間 俊介)
【本】 夜と霧(新版) V・E・フランクル著 池田香代子訳 みすず書房
 死が迫る強制収容所で人間性を失わない人もいた。マロニエの木に永遠性を見いだし、自己を高めていく女性が印象的。どんな権力も崇高な精神、心の尊厳まで奪えない。 (西岡 聖雄)
【音楽】 彩り ミスターチルドレン
 私たちは一人一人、悲しみ、喜び、一生懸命生きている。心地よく聴きながら、ふと、そんな日常を根こそぎ奪っていくものを許しちゃいけないと思う。 (山本 哲正)
【映画】 サンダカン八番娼館 望郷 熊井啓監督
 日本女性史の暗部をえぐり出した山崎朋子の原作ルポに戦りつを覚えた。この映画で、田中絹代の迫真の演技に何度涙し、襟を正したことか。 (立尾 良二)
【音楽】 戦争に反対する唯一の手段は。 ピチカート・ファイヴ
 タイトルは、吉田茂の長男で英文学者の故・吉田健一のエッセーから。唯一の手段とは、各自の生活を美しくし、それに執着することであると吉田は言う。通俗的な美しさを追い求めた音楽。 (皆川 剛)
【アニメ】 風が吹くとき ジミー・T・ムラカミ監督
 ほのぼのタッチの絵が核戦争の無慈悲さを際立たせる。放射能に体をむしばまれながら、なお政府を信じ続ける老夫婦が痛々しい。 (鈴木 泰彦)
【絵本】 そして、トンキーもしんだ たなべまもる 国土社
 たくさんのなぜを抱え、象のトンキーは芸をする。淡々とした文章が、平和ならば、の「if…」を感じさせる。 (西井 安昭)
【日本画】 洛中洛外図屏風(舟木本) 岩佐又兵衛
 戦国時代直後の江戸初期に描かれた、無数の庶民の暮らし。生き生きとした姿を見ると、平和の素晴らしさを実感する。 (西尾 玄司)