2015年1月15日木曜日

芸術、平和あればこそ 「九条美術の会」が作品展

 東京新聞 2015年1月14日
 美術家ら200人以上が憲法九条や平和への思いを表現した作品を持ち寄った「第4回九条美術展」が、東京・上野の東京都美術館で開かれている。主催の「九条美術の会」は今年で発足から10周年。この間に集団的自衛権の行使容認が閣議決定され、改憲への動きが加速しており、九条の危機を敏感に表した作品が目を引く。 (谷岡聖史)
 
 「かつて美術家は侵略戦争で表現の自由を奪われ、戦争に加担させられた苦しい歴史をもつ」「憲法九条を守る一点で、『戦争をする国』に逆戻りさせない運動を広げていきたい」
 二〇〇五年六月に九条美術の会が設立された際のアピール文の一節だ。〇四年に作家の大江健三郎氏らがつくった「九条の会」に賛同するとの趣旨で、発起人には昨年、文化勲章を受章した洋画家の野見山暁治(ぎょうじ)さん(94)ら九人が名を連ねた。
 美術展は〇九年から隔年で三回、さいたま市の埼玉県立近代美術館で開催し、都内では今回が初めて。関東地方を中心に最多の二百四十五の個人とグループが出品した。
 
 切り絵作家の藤井剛志(たけし)さん(80)=東京都江東区=の作品「守ろうコール」は、若者らによる改憲反対のデモ行進を高さ約二メートルの切り絵で表現した。藤井さんは「軍人だった兄二人が戦死したとの知らせが届き、泣きながら家の外に駆けだした母の姿が今も忘れられない」と振り返り、「九条を守る運動は大衆のものでなければならない」とデモの意義を話す。
 発起人の一人で画家の川上十郎さん(85)=東村山市=は「勤労動員でへとへとになって海軍の爆撃機を造ったのが僕の青春。戦争になれば絵など描けないことを知っているから、美術家には戦争への危機感がある」と力を込め、「安倍政権の動きには九条をなくそうという気配を強く感じる」と懸念する。
 
 入場無料で十七日まで。午前九時半~午後五時半。十七日は午後二時までで、同一時から九条をテーマにしたパフォーマンス作品の実演がある。問い合わせは九条美術の会事務局=電04(2998)7625=へ。