2014年12月29日月曜日

翁長知事と沖縄県民に露骨なイジメ 兵糧攻めも 安倍政権

 翁長沖縄県知事は24~26日の日程で就任後初めて上京し、関係閣僚との面談を求めましたが、安倍晋三首相や菅義偉官房長官らは会わず、応じたのは最終日の午後に日程が決まった山口俊一沖縄担当相だけでした
 
 氏は基地負担軽減担当であるにもかかわらず対面を拒否しました。
 外務、防衛両省で北米局長事務次官がそれぞれ会っただけで、岸田外相や中谷元防衛相との会談は設定されませんでした
 いわゆる就任挨拶であったにもかかわらず、揃って会う時間すら取らないというのはあまりにも大人げないことです
 
 そのうえ安倍政権来年度予算で沖縄振興予算概算要求の3794億円を1割程度削る方針だということです。これは11月の沖縄県知事選で基地移設反対を掲げる翁長雄志氏を当選させた県民への仕返しです。
 そもそも振興予算は、道路や港湾、空港などインフラ整備のためのもので、基地問題の是非などを理由に官邸の意思ひとつで金額を増減するべきではありません。
 
 政権の意思に反する沖縄県民を突き放し財政締め上げるとは、まるで封建時代のような感覚ですこれが安倍政権の本態なのでしょう。
 
 28日、 琉球新報は「知事との会談拒否 県民との対話 閉ざすのか」、沖縄タイムスは「沖縄振興予算 自治壊す恫喝許さない」とする社説をそれぞれ掲げて政府の態度を批判しました。
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社説 知事との会談拒否 県民との対話 閉ざすのか
琉球新報 2014年12月28日  
 就任あいさつで上京した翁長雄志知事に、安倍晋三首相や菅義偉官房長官らは会わなかった。露骨な嫌がらせではないのか。
 翁長知事は24~26日の日程で就任後初めて上京し、関係閣僚との面談を求めたが、応じたのは最終日の午後に日程が決まった山口俊一沖縄担当相だけだった。
 外務、防衛両省では同じく26日午後に北米局長、事務次官がそれぞれ会ったが、岸田文雄外相や中谷元・新防衛相との会談は設定されなかった。
 11月の知事選では米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する翁長氏が、移設推進を打ち出した現職の仲井真弘多氏を大差で破った。その約2週間後に、落選した仲井真氏が「知事選のお礼と退任のあいさつ」で上京している。
 その際は安倍首相や菅氏らが面談。首相は仲井真氏を「よく仕事しましたね」とねぎらったという。
 政府は山口氏以外の閣僚が翁長知事と会わなかったことについて、面会要望の伝達遅れや日程の都合などを挙げた。だが特別国会召集中の慌ただしい日程を考慮しても、つい1カ月前の前任者への厚遇との落差は明白だ。翁長氏滞在中の記者会見で菅氏は「年内は会うつもりはない」と突き放した。
 沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅氏は年明けの来県を検討しているというが、今回「名刺だけでも渡したい」との要望に応じなかったのは、移設反対の新知事に対する意趣返しにしか見えない。
 政権の政策に賛同する知事は歓迎するが、反対する知事には簡単には会わないというのなら、あまりに大人げない対応だ。
 来年度予算編成を前に、政権内には移設反対の知事就任を理由に沖縄振興予算の減額を求める信じられない意見もあるという。基地と振興のリンクを否定してきた方針を覆す主張であり、見識を疑う。
 翁長知事の上京に際し、地元の自民党議員らは政権とのつなぎ役にはならなかった。「敵(翁長県政)に協力する必要はない」との声があるというから、極めて残念でならない。
 
 安倍政権の今回の対応は、選挙で何度も示された移設反対の民意を無視し、作業を強行している姿勢とも重なる。県民に選ばれた知事との会談拒否は、県民との対話を閉ざすことにもほかならない。
 首相や菅氏は県民の負託を受けた知事と正面から向き合い、その主張を真摯に聞くべきだ。
 
 
社説 [沖縄振興予算]自治壊す恫喝許さな
沖縄タイムス 2014年12月28日
 辺野古への新基地建設に反対する翁長雄志知事の誕生で、政府は来年度の沖縄振興予算を減額する方針だという。仲井真弘多前知事時代から進む、本島を縦貫する鉄軌道構想にも「待った」をかける。 
 「国の言うことを聞かなければ予算の蛇口を閉めるぞ」と言いたいのだろうか。あまりに露骨な嫌がらせだ。目の前にニンジンをぶら下げて翻意を促すかのようなやり方も下品である。  
 復帰後、沖縄の振興開発は、沖縄振興開発特別措置法に基づく「沖縄振興開発計画」によって進められてきた。 
 沖縄戦による甚大な被害と27年の米軍統治という苦難の歴史をたどった県民への「特段の措置」が出発点である。本土から遠く離れ、多数の離島で構成される事情にも配慮し、各分野で生じた格差の是正、自立的発展に向けた基礎条件の整備が目標だった。 
 初代沖縄開発庁長官となった山中貞則氏は、たびたび県民への「償いの心」を口にし、1次振計には「国の責務」が明記された。 
 沖縄振興開発計画は、現在の沖縄21世紀ビジョン基本計画へとつながっていく。改正沖縄振興特別措置法にのっとった計画である。 
 振興予算を辺野古移設推進の道具として国が恣意(しい)的に使い、基地賛成の知事には増額し、反対の知事には減額するのであれば、地方自治はずたずたに破壊される。沖振法だけでなく、地方自治法の趣旨にも反する行為だ。 
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 沖縄は基地を負担する代わりに国からたくさんお金をもらっている、と考えている人が本土には多い。 
 沖振法は離島振興法や山村振興法と同じ地域振興法の一つである。県民1人当たりの財政移転は全国7番目で、飛び抜けて高いわけではなく、基地関連の収入が県経済に占める割合も約5%と低い。 
 「沖縄を甘やかすな」との暴論が本土側から伝わるようになったのは、普天間問題が浮上して以降だ。 
 国土面積の0・6%の沖縄に米軍基地の74%が集中している事実を知ってのことだろうか。安保の負担で、沖縄に「おんぶに抱っこ」と甘え続けているのはどっちなのか。 
 辺野古への新基地建設の見返りにカネをばらまくというのが自民党の「補償型政治」だが、今年の名護市長選に始まり、知事選、衆院選と県民はその手法に「ノー」を突きつけてきた。 
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 菅義偉官房長官は来年度の沖縄振興予算について「これまでの使い方をチェックし、ほかの予算と同様に査定していく」と述べている。 
 一見、公平な物言いに聞こえるが、翁長知事に対する嫌がらせであることは明らかだ。そもそも沖縄振興予算は沖縄担当相の所管であり、官房長官の発言は政治的恫喝(どうかつ)以外の何物でもない。 
 
 政権の冷ややかな態度に同調する自民党の国会議員や県連の対応も気になる。「敵に協力しない」と知事を批判するのではなく、21世紀ビジョン実現に向けた予算確保のために県をバックアップするのが政権党の役割である。