2014年12月13日土曜日

秘密保護法施行の社説 地方紙は反対や批判的論調が圧倒的

 元日本新聞労連執行委員長の美浦克教氏が同氏のブログで、特定秘密保護法が施行された12月10日前後に、社説で取り上げた全国、地方紙を調べてタイトルを紹介しています。
 
 ネット上の自社サイトで社説を公開している新聞を調べた結果28紙が取り上げていました。
 全国紙では朝日新聞、毎日新聞懐疑的、批判的であるのに対して読売新聞、産経新聞、同法の必要性を支持しています。
 それに対して地方紙は圧倒的に批判的であるということです。
 大変な労作です。
 
 以下に同ブログの全文を紹介します。(青色の部分はクリックすると原記事にジャンプします)
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やはり地方紙は反対や批判的論調が圧倒~秘密保護法施行の社説
ニュース・ワーカー2  2014年12月12日
 特定秘密保護法が施行された12月10日前後に、全国のブロック紙、地方紙が社説でどのように取り上げているか、ネット上で調べてみました。対象は、ネット上の自社サイトで社説を公開している新聞です。9日から11日まで、見出しのみの新聞も含めて以下の28紙を確認できました。ブロック紙、地方紙のすべてを網羅的に調べたわけではありませんが、施行に反対の論調や、批判的、懐疑的な論調が圧倒しています。全国紙では、同様に懐疑的、批判的な朝日新聞、毎日新聞と、同法の必要性を支持し施行に理解を示す読売新聞、産経新聞とに論調は二分です。全国紙は論調二分、ブロック紙、地方紙は批判が圧倒―は、この法律が法案として国会で審理されていた昨年来、変わらない傾向です。
 
 以下に、ブロック紙、地方紙各紙の社説の見出しを書き留めておきます。
【9日】
河北新報「’14衆院選 外交安保/『抑止力』の本質を見極めよ」
秋田魁新報「[2014衆院選]秘密保護法施行 国家機密拡大する恐れ」
信濃毎日新聞「秘密法を追う あす施行 運用を厳しく監視しよう」軍機保護法の前例/知らしむべからず/情報公開法の強化を
山陽新聞「秘密保護法施行 民主主義の根幹が揺らぐ」
中国新聞「秘密保護法あす施行 安易な指定許されない」
高知新聞「【秘密保護法 14衆院選】懸念は全く消えていない」身内からも疑問符
沖縄タイムス「[秘密法あす施行]戦争と人権は相いれぬ」
 
【10日】
北海道新聞「特定秘密保護法施行 あらためて廃止を求める」民主主義を揺るがす/国会は役割を果たせ/情報公開の推進必要
東奥日報「粘り強く問題点見直しを/秘密保護法施行」
岩手日報「秘密保護法施行 国民の監視欠かすまい」
福島民報「【秘密保護法施行】運用厳しく見守ろう」
新潟日報「秘密法施行 法廃止への議論を始めよ」
中日新聞東京新聞「権力が暴走しないか 特定秘密保護法施行」立法の必要性は「弱い」/軍機保護法の過去が/国民を統制する道具
北日本新聞「秘密保護法施行/民主主義の後退招くな」
福井新聞「特定秘密保護法施行 情報統制の歯止め利かず」
神戸新聞「秘密保護法施行/国民の疑念は残ったまま」
山陰中央新報「秘密保護法施行/問題が置き去りのままだ」
愛媛新聞「【衆院選2014】特定秘密保護法施行 民主主義への姿勢が問われる」
徳島新聞「秘密保護法施行 市民も罪に問われかねぬ」
西日本新聞「秘密保護法施行 国民的な議論をもう一度」際限ない情報隠し/説明責任の徹底こそ
大分合同新聞「秘密保護法施行 粘り強く改正求め続けよう」
宮崎日日新聞「秘密保護法施行 問題点指摘し改正求めよう」都合悪い情報隠しも/内部告発を保護せよ
佐賀新聞「秘密保護法施行」
熊本日日新聞「秘密保護法施行 多くの問題残したままだ」
南日本新聞「[秘密保護法施行] 安易な指定許されない」
 
【11日】
デーリー東北「秘密保護法施行 抜本的な改正が必要」
京都新聞「秘密保護法施行  危険性は残ったままだ」
琉球新報「秘密保護法施行 やはり廃止しかない 民主主義の礎壊す悪法だ」暗黒時代再来/半永久的指定
 
 ブロック紙、地方紙各紙が指摘する問題点はおおむね共通しています。秘密指定の対象となる情報が広範かつ曖昧で、指定が適正かチェックする仕組みが弱いこと、政府が都合の悪い情報を恣意的に隠す可能性があること、いったん特定秘密に指定されると公開されないまま廃棄される恐れもあること、処罰対象は公務員にとどまらず、市民運動やメディアの取材活動も違法となる恐れがあること、などなどです。
 
 目を引かれたのは、「外交や安全保障の面では秘密があるのは当然」とする特定秘密保護法の必要性自体を疑う視点を持った社説です。例えば沖縄タイムスは「『外交や防衛には秘密がつきものであり、秘密保護のために法制度を整備するのは当然』だという議論がある。この法律は、そういう一般論で片付けられるようなものではない」と明確に断じています。中日新聞・東京新聞も「国家の安全保障にかかわる重要情報は厳重に管理すべきだ-。そのように単純に考えてはならない」と指摘しています。ほかにも、内閣情報調査室が民主党政権時代の2011年に素案をつくった際、内閣法制局が必要性を示す根拠が弱いと指摘していた事実を挙げた社説もいくつかあります。同法の将来の廃止を見据えるならば、同法の必要性そのものに立ち返って再検証し考える発想が必要だろうと感じます。
 
 ほかにも沖縄タイムスや琉球新報の社説には、本土の人間が忘れがちな視点、観点があります。特に沖縄タイムスの以下の指摘は心に刻み付けておきたいと思います。
 
 復帰後、沖縄に適用された日米地位協定には公にされていない秘密の合意事項や取り決めが多く、事件事故が発生するたびに沖縄の人々は、知る権利を奪われた悲哀を味わい続けてきた。国内法で保障された権利すら行使できない「半主権状態」の沖縄に、新たに特定秘密保護法の網が被(かぶ)さってくるのである。
 
※沖縄タイムス社説12月9日「[秘密法あす施行]戦争と人権は相いれぬ」
※琉球新報社説12月11日「秘密保護法施行 やはり廃止しかない 民主主義の礎壊す悪法だ」
 
 全国紙5紙の社説の見出しも書き留めておきます。
▼朝日新聞 10日「衆院選 秘密法施行 『不特定』の危うさ」
▼毎日新聞 10日「秘密保護法 施行 息苦しい社会にするな」解除後には一律公開を/内部通報者を保護せよ
▼読売新聞 10日「秘密保護法施行 他国との情報共有に不可欠だ」
日経新聞 10日「民主主義の土台たる『知る権利』を守れ」
▼産経新聞 12日「秘密保護法施行 機密と知る権利の両立を」
 
 産経新聞は12日付です。「予定通りの施行は妥当」「『息苦しい社会』『戦争する国』をもたらすといった批判は的外れだ」としつつ、以下のような記述もあります。
 
 政府の運用基準は報道や取材の自由について「国民の知る権利を保障するものとして十分に配慮する」と定める。当然だが、「十分な配慮」には曖昧さが残る。取材行為に関する「著しく不当な方法によるものと認められないかぎり」という条件も不明確だ。
 
 恣意(しい)的運用を厳に慎むよう、知る権利や報道の自由の重視を求め続けねばならない。
 
※産経新聞【主張】12月12日「秘密保護法施行 機密と知る権利の両立を」