2014年11月16日日曜日

「五日市憲法」を子どもへ 起草者の伝記出版 杉田さんら

 明治時代初期つくられ「五日市憲法草案」の意義を小中学生にも知ってもらおうと、立川市元教諭杉田秀子さんら人が、草案起草した千葉卓三郎の伝記を出版しました。
 「五日市憲法草案をつくった男・千葉卓三郎」(くもん出版・192ページ)です。
 
 五日市憲法は全国の自由民権運動家らが政府への提出を目指した憲法草案の一つで、国民の権利や基本的人権の尊重などが盛り込まれ、市民らと議論してつくり上げました
 
 この憲法草案は、皇后さまが昨年の誕生日に宮内庁記者会の質問に寄せた回答文書で「世界でも珍しい文化遺産だと思います」と触れられたことで、広く知られるようになりました
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「五日市憲法」子どもへ 立川の杉田さんら、起草者の伝記出版
東京新聞 2014年11月14日
 明治時代初期の自由民権運動期につくられ、国民の権利や基本的人権などの考えを盛り込んだ「五日市憲法草案」の意義を小中学生にも知ってもらおうと、立川市高松町、元教諭杉田秀子さん(75)ら三人が、草案起草に尽くした千葉卓三郎(一八五二~八三)の伝記「五日市憲法草案をつくった男・千葉卓三郎」(くもん出版)を出した。読みやすい文体で、大きめの字体にルビを振り、当時の様子の写真や絵を使って分かりやすい本に仕上げた。(萩原誠)
 
 物語はまず、一九六八年、日本近代史専攻の色川大吉・東京経済大教授と、新井勝紘・専修大教授=福生市在住=ら当時の色川ゼミ生が旧五日市町(現あきる野市)の旧家深沢家の土蔵から草案を見つけた経緯を紹介。その上で、勧能学校(現あきる野市五日市小)の教師だった千葉が、自由民権運動の学習グループ「五日市学芸講談会」のメンバーたちと勉強会を開いて憲法起草に尽力した姿を描いた。関連する資料写真や勧能学校の想像図なども載せている。
 
 五日市憲法は全国の自由民権運動家らが政府への提出を目指した憲法草案の一つ。国民の権利や基本的人権の尊重などが盛り込まれ、市民らと議論してつくり上げた。だが一八八九年に大日本帝国憲法が公布されたことなどから、五日市憲法はじめ各地でつくられた憲法草案は日の目を見ることはなかった。
 八十年近くたって、色川教授とゼミ生らが深沢家の土蔵から小さな竹製の小箱の中に風呂敷に包まれた草案の冊子を見つけた。人権意識が高い市民による民主的な憲法草案は、皇后さまが昨年の誕生日に宮内庁記者会の質問に寄せた回答文書で「世界でも珍しい文化遺産だと思います」と触れられたことでも知られる。
 
 本は杉田さんと元小学校教諭の望月武人さん(77)=練馬区、元日本子どもの本研究会副会長で今年二月に八十八歳で亡くなった伊藤始さんの共著。三人は児童文学創作グループの仲間で、二〇〇六年に新井教授の講演会を受講したのをきっかけに資料を集め、分担して少しずつ執筆してきた。杉田さんは「憲法が注目される今だからこそ、子どもたちに五日市憲法の成り立ちや内容を知ってほしい」と話す。
 
 A5変型判、百九十二ページ、千四百円(税別)。問い合わせは、くもん出版=電03(6836)0305=へ。
 
五日市憲法草案 明治時代初期に全国の自由民権運動家らが政府への提出を目指した憲法草案の1つ。表題は「日本帝国憲法」だが、起草や発見の経緯から通称「五日市憲法草案」と呼ばれている。204条からなり、「基本的人権」など国民の権利の保障を重視した当時としては画期的な内容と評価され、都の有形文化財(古文書)に指定されている。

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「子どもたちにも五日市憲法を知ってほしい」と出版した本を手にする杉田さんで