2014年11月14日金曜日

安倍首相がいま解散を行う真の理由

 まだ最終確定はしていないものの国会では解散風が吹き荒れています。
 12日と13日の各紙社説は衆院の解散を取り上げて、「大義がない」、「国民不在」、「党利党略」などと批判しました。(参考までに社説の主なタイトルを末尾に示します)
 
 この解散に何の大義もないことは自民党自身が良く承知していて、消費税の増税を見送るなかで、それを理由に「その信を問う」という苦肉の策を考え出しました。
 しかし消費税増税法には景気が悪くなれば増税を先送りしたりやめたり出来る「景気条項」が盛り込まれているので、先送りすることで国民の信を問うという必要性はありません。笑止なことというべきです。
 
 安倍内閣はこの先支持率は下がる一方だし、来年になれば原発再稼働、集団的自衛権行使のための法制、TPP参加、沖縄基地建設推進などの国民に不人気な施策を実施することになるので、政権の正体=マイナス面が一層明らかにされます。
 従って植草一秀氏が言うように解散するとしたら年内しかなく、そうした安倍政権、安倍一派の「派利派略」というのがこの解散の真相です
             ※  2014年11月12日 解散総選挙は必至 
 
 13日の神奈川新聞が「解散風の真相 逆算で透ける最長任期」とする記事を出しました。
 これは安倍氏が最長の任期を目指すためにここで選挙を行うのだとする見方で、説得力があります。
 その記事を紹介します。
 
 (13日付社説)
年内解散論 大義はどこにあるのか           琉球新報
解散論急浮上 何のため誰のために?   .       沖縄タイムス
衆院解散検討  党利党略にすぎないか .         南日本新聞
早期解散論 信を問う大義はあるのか  .        高知新聞
衆院の解散風 政治空白生んでよいか   .        中国新聞
年内解散論 信を問う大義があるのか     .        神戸新聞
強まる解散風  どこに大義があるのか                京都新聞
年内解散浮上 信を問うべき時期なのか               新潟日報
強まる解散風  いま、信を問う時期なのか              河北新報
年内解散検討 政権維持の狙い明白だ                 秋田魁新報
強まる解散風 信を問う大義はあるか                   岩手日報
衆院解散検討 党利党略が見え見えだ                 北海道新聞
 (12日付社説)
早期解散論 国民不在の党利党略                信濃毎日新聞
政治と増税  解散に大義はあるか               朝日新聞
早期解散論 その発想はあざとい                 毎日新聞
     (タイトルをクリックすれば社説の記事にジャンプします)
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解散風の真相 逆算で透ける最長任期
神奈川新聞 2014年11月13日
 にわかに突風となった衆院の解散風。消費税の再増税を先送りした場合に国民の信を問うという大義名分ならば理解されるだろうとか、野党の選挙準備が整わないタイミングなので与党に有利という皮算用は分かるが、2016年12月まである衆院議員の任期を考えると唐突感は否めない。だが、今年や来年の政治日程を超え、安倍晋三首相が宰相として権力を維持できる期間から逆算してみると、まったく別の風景が見えてくる。ここで総選挙に勝てば、安倍首相は18年9月までの最長の任期に、手をかけることができる算段だからだ。
 
 古今東西、政治権力を握った者が最も腐心したことは、いかに自身の権力を確実に、そして長く維持するかということだ。
 民主的な法治国家である日本では、法律に基づいた選挙によって国民の信任を得ることで、初めて政権を手にできる。加えて、自民党の総裁として首相を務める安倍首相の場合は、党の総裁公選規程という縛りがある。
 
◆公職選挙と総裁選
 有権者があまねく投票する公職選挙と自民党員による総裁選挙。この二つを重ね合わせると、今回の解散風の背景にある真の狙いが見える気がする。
 
 安倍首相が党総裁に返り咲いたのは12年9月。任期は3年間で15年9月まで。総裁公選規程では連続3選は禁止されており、安倍首相が次の15年の総裁選で再選を果たしても、総裁であり続けることができるのは18年9月までが限界だ。これが、安倍氏の首相としての最長任期ともなる。
 最長の任期を得るには、国政選挙で勝ち続けることが必要となる。現職の衆院議員の任期は2年後の16年12月までなので、少なくても1回は衆院総選挙で洗礼を受けなければならない。16年夏の参院通常選挙は避けて通れない。
 逆に言えば、衆参の国政選挙に1回ずつ勝てば、安倍首相は最長任期に手がかかる。解散風通り12月に衆院選挙を行えば、その任期は18年12月まで。総裁としての任期が切れる18年9月=安倍首相の最長任期を、完全にカバーできるのだ。
 
◆増税先送りの意味
 解散・総選挙を来年以降とした場合、九州電力川内原発の再稼働問題、集団的自衛権行使容認の閣議決定を受けた安保関連法制の審議など、政権運営にマイナスとなりそうなテーマに直面する可能性がある。
 一方、今ならば野党の選挙準備が整わないので、陣立ては有利。世論の反対が強い消費税再増税を先送りすれば一定の支持を得る可能性もあり、この時期の解散・総選挙は、政治環境としては悪くない。加えて、消費税に関しては、もっと先までフリーハンドを得られる可能性が広がっているのだ。
 
 仮に15年10月に予定する消費再増税を1年半先送りした場合、引き上げ時期は17年4月となる。消費税は今年4月に5%から8%へ引き上げられたが、安倍首相がその決断を下したのはその前年の秋、13年10月だった。
 これを17年4月に当てはめると、16年秋に決めれば準備が間に合うことになる。同年夏には、参院通常選挙が終わっており、国政選挙並みに政局を左右する統一地方選挙はその1年半前に終わっている。つまり、次期参院選と統一選の争点から、消費増税を外すことが可能になる。
 1年前の10月、安倍首相が8%への消費増税を決断した日の翌日。菅義偉官房長官は「15年10月に10%へ再増税はすべきでないと私は思う。3%上げることだって、大変なことだ」とつぶやいた。
 
 今回の解散風で思い出したのは、小沢一郎氏(現・生活の党代表)の「知恵袋」といわれた元参院議員の平野貞夫氏がかつて語っていた言葉だ。「権力の維持は、並の知恵ではできない」