2014年9月23日火曜日

沖縄知事選 植草氏の続報と「反戦な家づくり」氏の反論

 植草一秀氏が、非自民党の統一候補翁長氏が立候補表明の会見の席で、(仲井真現知事の)「埋立承認」の撤回を拒絶した経緯についての続報を載せました。この問題は記者から繰り返し質問されたということで、関係者の間では良く知られていた問題であったことが窺えます。そして別の統一候補を必ず擁立するべきであるが、喜納氏である必然性はないとして、糸数慶子氏稲嶺進氏伊波洋一氏などの名前を挙げています。植草氏の論理には揺らぎはありません。
 
 「反戦な家作り」氏が、植草氏の20日の第一報に対して、21日、反論を載せました。
 ① 翁長氏と喜納氏に分裂したら、ほぼ確実に現職の仲井真が勝つ
 ② 喜納氏では勝てない。喜納氏は真の辺野古反対派だろうか
 ③ 翁長雄志氏はある意味で筋金入り
 ④ 公有水面埋立法の条文上は、たしかに撤回の規定がない
 などの理由を挙げ、翁長候補は立派であるが喜納氏には疑問が付く(理由を詳述)とし、喜納氏では勝てないとしています。
 
 本ブログは、甲論乙駁の論争を紹介するというものではありませんが、いまのところその他の情報は見つかっておりませんので、代表的な反論として紹介します。
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埋立承認撤回拒絶の合理的根拠示せぬ翁長雄志氏
植草一秀の「知られざる真実」2014年9月21日
2010年の沖縄県知事選で、仲井真弘多氏は普天間の県外・国外移設を公約に掲げて当選した。その仲井真氏が、本年1月の名護市長選を目前に控えた昨年12月に辺野古海岸埋立申請を承認した。仲井真氏は沖縄県民を裏切ったのである。
そして、安倍晋三政権の菅義偉官房長官は、「埋立申請承認がすべて」だと発言している。
「埋立申請承認」を盾に、辺野古米軍基地建設を強行しようとしている。
これに対して、沖縄県民が怒るのは当然のことだ。沖縄県民は2010年の沖縄県知事選で、辺野古海岸に米軍基地を建設することに、明確なNOを突き付けた。
辺野古海岸を有する沖縄県名護市の市民は、2010年以降、4度あった意思表示の機会のすべてにおいて、辺野古海岸に米軍基地を建設することを拒絶する意思を明示した。
この意思を踏みにじり、背徳の「埋立申請承認」を盾に辺野古海岸米軍基地建設を強行するのは、まさに「銃剣とブルドーザーによる暴挙」に匹敵する行為である。
11月16日に投開票日を迎える沖縄県知事選の最大の争点は、辺野古海岸を破壊して米軍基地を建設することの是非である。
県民を裏切った仲井真弘多氏は、臆面もなく知事選に出馬する意向を示した。
この背徳の人物を再選させるなら、沖縄の民主主義は永遠に消えることのない禍根を残すことになる。
辺野古に米軍基地を造らせないとする県民は、大同団結して、辺野古海岸米軍基地建設を阻止するただ一人の候補者を擁立し、この候補者の当選を何としても実現しなければならない。米軍基地建設阻止を求める政党、団体は、翁長雄志氏の擁立を決めた。その翁長氏が9月13日に出馬表明記者会見を行った。
その模様はネット上で動画配信されているから、はっきりと確認できる。もちろん、その模様を何度も確認している。
記者会見で質問が集中したのは、言うまでもなく「埋立承認撤回」である。菅官房長官が明言したように、辺野古米軍基地建設問題の核心は「埋立申請承認」である。
つまり、辺野古基地建設阻止の第一歩が「埋立申請承認撤回」になる。誰が考えても分かることだ。この点に質問が集中した。
しかし、翁長雄志氏は、この質問に対して、合理性のある答弁をまったく示せなかった。
保守と革新が腹8分、腹6分でまとまっているから、具体的に埋立承認撤回と明言できない」の繰り返し。ほとんど意味不明である。
そもそも、辺野古米軍基地建設阻止を求める翁長氏を支持する沖縄県政野党5団体は、翁長氏と交わす協定で新知事は埋め立て承認を撤回」と明記する方針だった。それが、7月、翁長氏との調整で「新知事は埋め立て承認撤回を求める県民の声を尊重し、辺野古新基地は造らせません」と変化した。
何が変わったのかというと、「埋立承認撤回」の確約が排除されのであるこれを翁長氏は「腹8分目、腹6分目の共闘」と言っている。
つまり、いわゆる「革新系」会派は「埋立承認撤回」の確約を求め、翁長氏側にいる「保守系」会派が「埋立承認撤回」の公約化を拒絶しているのである。
選挙前に「埋立申請承認撤回」を確約しておかなければ、辺野古米軍基地建設は止まらない。菅義偉氏が、「これがすべて」と明言しているのだから、結果は火を見るよりも明らかだ。
喜納昌吉氏が問題提起したのはこの点だ。喜納氏が知事になりたいとかいう、低い次元の話ではない。現在の選挙の図式で進もうとするなら、翁長氏に「埋立申請撤回」を確約させるべきである。この確約を得ずに翁長氏支持で突き進むのは、翁長氏支持の5会派も、県民を冒涜することになる。
県民が新しい知事を選ぶ選挙である。県民が求めていることは、「辺野古に米軍基地を造らせない」ことであり、選挙前にはっきりさせておかねばならないことは、そのための、実効性のある、具体的手段について、確約することである。
翁長氏は確約を拒絶しているが、その理由について、合理性のある、人を納得させる内容を何ひとつ示していない。
 
翁長氏が埋立申請撤回を拒絶するなら、別の統一候補を必ず擁立するべきである。喜納氏である必然性はない。糸数慶子氏でもよい。稲嶺進氏でもよい。伊波洋一氏でもよい。高良鉄美氏でもよい。
翁長氏支援陣営の各会派、政党は、問題の核心を「玉虫色」のまま選挙に突入するべきでない。このような「曖昧さ」が、のちの禍根を引き起こす原因になる。知事権力を取ることが目的だけなら、単なる権力闘争だ。
そうではなく、正統性のある、透明性のある、県民の意思を問う選挙にしなければ沖縄の政治は完全に堕落してしまう。
              (有料ブログのため、以下は非公表)
 
 
喜納昌吉氏の立候補はおかしい (追記あり)
反戦な家づくり 2014年9月21日
16日に民主党の喜納昌吉氏が沖縄県知事選に、電撃立候補表明した。
その直後に、絶妙のタイミングで植草一秀氏がブログで、翁長雄志氏の立候補は謀略だという説を流した。
また、辺野古に反対などしていなかった大手メディアが、どういう風の吹き回しか「翁長氏は具体的な阻止の方法を明言しない」と言って、一斉に叩きだした。
大手メディアが声をそろえたらアブナイ、ということをいい加減学んだはずの人々が、この件については無条件に信じて、「翁長氏はきっと裏切る」と言い出した。
ウソ吐きメディアよりも「保守」と名のつくもののほうが嫌いなのかもしれない。
小沢一郎氏が何の根拠もない陸山会事件で叩かれたのと、ほぼ同じ構図である。
 
様々な憶測が頭をよぎるが、憶測を排除しても、何点かの問題点は残る。
① 翁長氏と喜納氏に分裂したら、ほぼ確実に現職の仲井真が勝つ
 説明の必要はないだろう。喜納氏を推す人も、必勝を信じているのではなく、「次につながる潔い敗北」を望んでいるようだ。よほど世事に疎い人でないかぎり、分裂選挙で勝てるとは思わないだろう。
 「努力したけど阻止できませんでした」は許せない、という人が、なぜ選挙では、頑張ったけど負けました を望むのか。私には理解できない。
② 喜納氏では勝てない
 喜納昌吉氏はバリバリの辺野古反対派だろうか。厳然たる事実は、かれは辺野古基地を推進している民主党の県連代表だということ。そして、辺野古を推進する党本部に妥協しながら今日まで民主党の役を続けている。そんな喜納氏が、承認撤回を公約にしたところで、大多数の信任を得ることはあり得ないだろう。
 ここ数年、妥協し続けて戦わなかった男が、「撤回」が「撤回を視野に」になったのはオカシイと叫んでも、多数の沖縄県民の心を打つとは思えない。
 もう一点、民主党を支えるはずの連合沖縄は、喜納氏が表明した次の日、翁長氏推薦を決定している。どう考えても、喜納氏に勝ち目はない。
③ 翁長雄志氏はある意味で筋金入り
 本土の我々はもう忘れているかもしれないが、2007年9月29日に 「沖縄戦「集団自決」の教科書検定意見撤回を求める県民大会」が開かれた。沖縄タイムスの記事
 この大会の那覇市実行委員長は市長である翁長雄志氏だった。自ら街頭でチラシをまいていたという。
 2009年からは辺野古移設にも反対し続け、喜納氏は妥協して民主党に残ったけれども、翁長氏は一貫して反対を主張し無所属になっている。外野席からは喜納氏が正論に見えるかもしれないが、沖縄の目からはむしろ反対に見えるのではないだろうか。
④ 公有水面埋立法の条文上は、たしかに撤回の規定がない
 埋め立て承認の撤回についての法律上の説明
 このように、条文だけで見ると撤回は不可能に見えるけれども、それでも県民の声として尊重してなんとか追求しようというのだから、これ以上何を言えというのだろうか。
⑤ 本当に闘ってきた人々から翁長氏批判=喜納氏擁立の声は無い
 喜納氏の立候補表明以来、何人かの人々の発言に注意している。
糸数慶子議員、玉城デニー議員、稲嶺進名護市長、伊波洋一さん、真喜志好一さん、などなど。今のところ、現地で命がけで闘っている人から、翁長氏では不安だから喜納氏に乗り換えようというような発言は、まったく聞かれない。
 ゴリゴリの保守の翁長氏を保革連合で擁立すると決めたときから、ある程度のことは織り込み済みだったのではないか。むしろ、相談した上で表明会見をしたのではないのか。
 本気で闘っている人ほど、「埋め立て承認の撤回」がどれくらいの困難があるのか、リアルに見えているはずだ。もちろん可能性は最大限追求するにしても、ここだけに一点集中することはむしろ避けるのではないだろうか。
新潟県の泉田知事が脱原発を口にせずに東電と対峙している姿に対して、「明言しないからいつか裏切る」と言う人はいないのに、翁長氏に対しては、メディアや外野が憶測で「きっと裏切る」と批判する。
この構図に、私は納得できない。
⑥ 9/20辺野古浜に5500人が大結集したが 
 翁長氏は参加して登壇した。喜納氏は?
⑦(追記) 県議会で「辺野古中止意見書」の採決で、民主党県連の代表代行は賛成せず
民主党沖縄県連の代表代行である新垣安弘氏は唯一の民主党の県会議員だ。
その新垣代表代行は、9月3日に可決された「辺野古でのボーリング調査等の強行に抗議し,新基地建設工事の即時中止を求める意見書」の採決にあたり、議場から退出して「不在」。公明党まで賛成したのに、民主県連代表代行は賛成せずに逃亡したのである
喜納昌吉氏は、県連代表である自分を代行する立場にある新垣氏が、「即時中止を求める意見書」に賛成せずに議場から逃げ出したことを不問に付すのだろうか? もし喜納氏が本当に辺野古反対なら新垣氏を即刻除名すべきだろう。
結局、現地ではあまり相手にされていない喜納昌吉氏の立候補表明を、本土の人間が「翁長謀略論」にしたてて、触れ回っているという構図なのではないか。
喜納氏がもっと知名度の無い人だったら、笑い話ですませるようなことかもしれないが、幸か不幸か全国区の知名度を誇る人だけに、無視できない程度の票は持っていく。もちろん、そのすべては仲井真ではなく翁長氏から奪うのである。
少なくとも、マスメディアや植草氏のブログだけで判断するのではなく、原本をあたって、自分の目で判断するべきだ。
表現が後退しているということは確かではある。それも含めて、票を割って自決してでも喜納氏を支持すべきかどうか、判断すべきだ。
知事選に臨む基本姿勢および組織協定
9月13日 翁長氏の出馬記者会見の全文文字おこし
埋め立て承認の撤回についての法律上の説明 (再掲)
中には、日米安保を肯定するものは基地反対を闘えない、などという極論を言う人もいる。これは、そもそも今回の保革連合を根底から否定することであり、喜納氏の出馬とは関係なく、勝とうが負けようが結果なんて知らないが保守とは組まないという無責任な発言だ。
自分が正しいと思うことを言い続ければいい。それで世の中がどうなろうと知ったことじゃない。という人が多いことに、最近愕然とすることが多い。
最後に、2012年の翁長氏のインタビュー記事をリンクしておく。
翁長氏を諸手を挙げて持ち上げるものではないが、今現在選択できるベストは何か。
植草氏のいう「翁長氏謀略論」に夢中になっている方は、一度冷静になって考えていただきたい。