2014年9月12日金曜日

日中世論調査 中国の対日感情はやや改善

 中国日報社と日本の言論NPOが9日、2014度の日中共同世論調査の結果を発表しました。
 それによると、日本に対して「良くない印象をもっている」とした中国人は86.8(昨年度より6ポイント減)、日本に対して「良い印象を持っている」とした中国人は11.3(昨年度より6.1ポイント増)でした。
 逆に、中国に対して「良くない印象をもっている」とした日本人は93昨年度より2.9ポイント増)、中国に対して「良い印象を持っている」とした日本人はわずか6.8で、2005年に同調査開始してとなりました
 
 しかし両国民とも現状を是認しているわけではなく、回答者の割以上が双方感情が悪化している現状に懸念を示し中国人の35.2%、日本人の32.5%は、「望ましくない状況で心配している」と答え、中国人の35.2%、日本人の46.9%は「今の状況を改善する必要がある」と答えています
 
 相手国に対して良くない印象を持つ理由として、中国人は「尖閣諸島の国有化」、「中国侵略の歴史への無反省」、「他国と協力して中国に対抗」などを挙げ日本人は、「中国は国際的なルールと異なる」、「資源やエネルギー、食糧の確保など自己中心的」、「歴史問題で日本を批判」「尖閣諸島問題」などを挙げています
 
 近年、中国の対日感情を悪化させたものとしては、民主党政権時代の中国漁船の拿捕や尖閣諸島の国有化があり、安倍政権になってからもそれを修復するのではなく、逆に軍事・経済面で他国と協力しながら中国包囲網を呼びかけるという、安倍外交が展開されていることが挙げられます。
 また、中国は日本が中国を侵略した歴史への謝罪反省がないとして、日本非難の教育を徹底している一方で、日本では逆に、戦前の中国侵略の歴史の教育を事実上行っていないという問題があります。
 
 いずれにしても今年の世論調査も、両国民が感情的に対立する「冬の時代」を反映する結果となりました。しかし、中国のインターネット界では日本人の良さを見直す動きも見られ、中国人観光客が今年に入って激増しているという事実もあります。従って安倍外交には何も期待できないにしても、今後については悲観することばかりではなさそうです。 
 
 世論調査結果の他に、「日本の対中感情の悪化は敵視とイコールではない」とする人民網の記事も併せて紹介します。
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中日世論調査―中国の対日感情はやや改善、日本は過去最悪
人民網日本語版 2014年09月10日08:14
中国日報社と日本の非営利組織・言論NPOは9日、東京で記者会見を開き、2014年中日共同世論調査の結果を発表した。「(相手国に)良くない印象をもっている」と答えた人の割合は両国共に8割を超え、両国の国民感情は依然として悪化している状況が明らかになった。人民網が報じた。
 
調査の結果、日本に対して「良くない印象をもっている」とした中国人は86.8%に達した。ただし、昨年の同調査では同割合が過去最低の92.8%に達していたため、やや改善したと言える。逆に、日本に対して「良い印象を持っている」とした中国人は11.3%と、昨年の5.2%から2倍以上に増えた。
 
一方の、中国に対して「良くない印象をもっている」とした日本人は93%に達し、昨年の90.1%から2.9ポイント増加、同調査の開始以来最高となった。一方、中国に対して「良い印象を持っている」とした日本人はわずか6.8%だった。
 
良くない印象の理由として、中国人は「釣魚島(日本名・尖閣諸島)のいわゆる国有化により対立を起こした」、「侵略の歴史をきちんと謝罪し反省していない」、「軍事・経済面で他国と協力して中国に対抗している」などを挙げた。一方の日本人は、「中国は国際的なルールと異なる行動をする」、「資源やエネルギー、食糧の確保などの行動が自己中心的に見える」、「歴史問題で日本を批判する」、「釣魚島問題で対立が存在する」などを挙げた。
 
調査結果によると、中日両国の回答者の7割以上が、国民感情が悪化する現状に懸念を示していた。中国人の35.2%、日本人の32.5%は、両国国民感情の悪化について「望ましくない状況で心配している」と答え、中国人の35.2%、日本人の46.9%は「今の状況を改善する必要がある」と答えた。
 
言論NPO代表の工藤泰志氏は、「今回の世論調査で、中日両国の国民感情に関する3つの傾向が明らかになった。まず、釣魚島問題のもたらすマイナス影響がやや減少したが、相互間の国民感情は悪化を続けている。次に、国民感情は、現実の政府間関係の情況に大きく影響している。最後に、両国の国民の相互印象は、2010年以降、同時に悪化が始まった」と指摘した。
 
この世論調査は中国日報社と言論NPOが2005年より実施しているもので、今年で10回目となる。中国での調査は7月14日から25日にかけ、北京、上海、成都、瀋陽、西安の5都市で実施、調査対象は18歳以上の男女1539人。日本での調査は7月24日から8月10日にかけて全国各地の男女1千人を対象に行われた。(編集SN)
 
 
日本の対中感情の悪化は敵視とイコールではない
中国メディアが見る日本
人民網日本語版 2014年09月11日
中日の機関がこのほど共同で実施した世論調査の結果、中国に「良くない印象をもっている」と答えた日本人の割合が93%に達し、10年前に同調査が始まって以来で最悪となった。ここ数年の同様の世論調査でも日本の対中感情が悪化していることから、中国では日本人の中国観に対する関心が高まっている。環球時報が報じた。(文:庚欣・道紀忠華シンクタンク首席研究員)
 
調査の方法に関しては様々な批判もあるが、現在、日本人の中国に対する好感度が下がっていることは紛れもない事実だ。これには以下のいくつかの原因がある。
 
まず、領土問題など、国家間の係争が近年相次いでおり、日本国内の政治の是非に関する意見の相違が目立たなくなっている。特に、歴史認識などの問題では保守派に批判的な態度の人も、領土問題に関しては立ち上がって反対するわけにもいかず、まるで中日両民族の対立が形成されたかのような状態になっている。これは民意に大きな影響を及ぼしている。
 
次に、中日の国力および経済力の指標が逆転し、その差が開きつつある。安倍氏が06年に首相に初就任したころ、中国のGDPは日本の半分だったが、2度目に首相に就任した時、日本のGDPは中国の半分となっていた。日本人は、この激変に対する心の準備ができていない。同時に中日の紛争も増えており、中国の高度発展に対して「不安定感」、「圧力」を感じている人も多い。これらが調査結果に現れた。
 
さらに、日本人は教育や戦後の環境などの理由から侵略の歴史に対する認識が普遍的に不足しており、保守勢力の影響を受けやすい。このため、中国が日本の歴史観の間違いを指摘すると、「中国は強硬的過ぎる」と感じる人がいる。このほか、日本のメディアは環境問題、腐敗問題など、今の中国が抱えるマイナス要素に関するニュースを集中的に報じている。これらの要素が総合された結果、日本国民の対中感情が最悪の時期を迎えているのだ。
 
筆者は日本に長年滞在する中で、日本の民意にはある特徴があると感じている。日本人は「年中悲観」状態にある。これは、飽和状態の成熟した先進国にという環境に、長期的な不景気と保守的思想の蔓延が加わった結果であり、「年よりも老成」した感じすら受ける。日本人は、他人や物事に対する評価が悲観的・消極的過ぎる所があり、これが高度成長の只中にある中国人とは大きく異なる点だ。このほか、日本人はメディアや政府の影響を受けやすい。このため、日本のメディアや政府の中国に対する「方向性」は非常に重要になってくる。日本の有識者は日本のメディア・政府の中国に対する認識および宣伝・報道の偏りに気づいており、これが民意が低下した重要な原因であると指摘している。
 
日本人の対中感情の悪化が中日の民間交流に影響を及ぼすのではないかと心配する人もいるが、筆者は好感度の低さは敵意とイコールではないと考える。中国は過去40年あまり、民間友好活動を推進してきた。中日の経済貿易は相互依存の関係にあり、大多数の日本人は比較的安定した中国観を持っている。一部の人は中国のことを悪く言い、中国を嫌っているが、大多数は「中国脅威論」を受け入れているわけではない。安倍内閣が推進する「集団的自衛権行使の容認」が、日本の多数の人々から反対されたのもこのためだ。今回の世論調査では、79.4%の日本人が両国関係の悪化を心配し、関係改善を望むと回答した。ここからも、安倍内閣に中日首脳会談の再開に向けて努力させ、関係改善を望まざるを得なくさせる民意の圧力が存在することが伺える。
 
つまり、対中好感度は低くても、日本人が中日関係の改善を望んでいないわけではなく、中国から離れて行くわけではない。常駐するなら中国・インドのどちらかを尋ねるあるネット上の調査の結果、大多数の日本人が中国を選んだ。データは恐ろしいものではない。重要なのは、日本の民意の裏に隠された中日の構造的な矛盾を把握し、各方面の努力の方向性と具体的な改善措置を見つけ出すことだ。(編集SN)