2014年8月20日水曜日

実教日本史教科書に都・県教委の規制

 神奈川県教育委員会は19日、年度(15年度)の県立高校日本史教科書の採択で、実教出版(東京)を選定した高校がなかったと公表しました。同県では14年度28校が使用を希望しましが、「教委の方針と相いれないため不採択の可能性がある」と再考を促した結果、全校が他の教科書に変更しています
 実教出版の「高校日本史A」と「高校日本史B」が、国旗掲揚や国歌斉唱について「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記載したことを、県教委が問題視したためです。
 
 複数の高校教諭によると、社会科の教諭が実教出版を選定した県立高で月、校長が「先生方が選んだ教科書を使うわけにはいかない」と職務命令で変更させ、また別の県立高では、教頭が「実教出版はダメ」と書いた会議のメモを教科担当者に渡して採用を牽制したということです
 
 実教出版の日本史教科書をめぐっては、東京都教委も昨年、国旗国歌の記述を理由に「使用は適切でない」との見解を都立高に文書で通達し、全校が選定を見送りました。
 埼玉県教委は昨年、校で実教出版の日本史教科書を採択しましたが一部県議が異議を表明するなどして今年は希望校がゼロになりました
 千葉県教委は昨年、校で実教出版の日本史教科書を採択しました。
 
 最新(14年度)の日本史Bの全国での採択率は、1位 山川出版66.5%、2位 実教出版12.5%、3位 東京書籍10.6%、4位 清水書院 などとなっています。
 
 ちなみに沖縄八重山地区で、地区協議会が玉津会長の強引な主導のもとに育鵬社の教科書を採用したのに対して、竹富町が独自に東京書籍を採用して問題となった中学公民教科書のシェアは、1位 東京書籍57.1%に対して、文部省が採用を迫った育鵬社(5位)は僅かに4.0%でした。
 
 関東地方を中心にして、日本史の教科書採用に関して異様な動きが広がりつつあります。
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実教教科書 広がる自主規制 「校長指示で選定覆る」
東京新聞 2014年8月19日
 神奈川県教育委員会は十九日、二〇一五年度の県立高校教科書を採択し、国歌斉唱に「強制の動きがある」などと記載した実教出版(東京)の日本史教科書を選定した高校がなかったと公表した。複数の学校の教諭が「実教出版を選定したが、校長の指示で覆された」と証言しており、特定の教科書を自主規制する動きが進んでいる。(皆川剛)
 
 問題の教科書は、実教出版の「高校日本史A」と「高校日本史B」。昨年、国旗掲揚や国歌斉唱について「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」との記載を県教育委員が問題視。県教委が、一四年度の使用を希望した二十八校に「教委の方針と相いれないため不採択の可能性がある」と再考を促し、全校が他の教科書に変更した。
 県教委は今年四~五月、全校の校長や教頭らが集まる会議でこの経緯に触れ、「考え方は変わらない」と口頭で伝えた。県教委高校教育指導課は「特定の出版社の教科書を避けるよう指示はしておらず、あくまで留意事項を説明した」としている。
 一方、複数の高校教諭によると、社会科の教諭が実教出版を選定した県立高で七月、校長が「先生方が選んだ教科書を使うわけにはいかない」と職務命令で変更させた。別の県立高では、教頭が「実教出版はダメ」と書いた会議のメモを教科担当者に渡したという。
 
 ある男性教諭は「実教出版の教科書は新しい研究成果を取り入れ、本文は端的で注が豊富。生徒の興味に応じた勉強ができる」と評価。「校長ら管理職は現場の実態に合った教育を守ってほしいが、実際は教委と一体となり規制を進めている」と批判する。
 
 実教出版の日本史教科書をめぐっては、東京都教委も昨年、国旗国歌の記述を理由に「使用は適切でない」との見解を都立高に文書で通達し、全校が選定を見送りった。一五年度に使用する教科書の採択は今月中に行われるが、都教委は既に「考え方は変わらない」と各校に伝えている。
 
 埼玉県教委は昨年、八校で実教出版の日本史教科書を採択したが一部県議が異議を表明。今年は希望校がゼロになった。千葉県教委は昨年、五校で実教出版の日本史教科書を採択した。
 
◆「国旗・国歌強制の動き」記述
 <実教出版の教科書採択問題> 同社ホームページによると、教員経験者や歴史研究家らが「国際社会で通用する歴史認識を育てるため、東アジア、とりわけ朝鮮・中国との関わりを重視」して執筆。国旗掲揚や国歌斉唱について「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」との記述がある。文部科学省の教科書検定を通っており、同省担当者はこの記述について「誤りとは言えない」とした上で、どの教科書を使うかは「県教委の判断」としている。昨年の教科書採択で、実教版を採択した埼玉県では県教育委員長が辞任。大阪府では、実教版希望校が、教委の資料集を活用することや指導を受けることを条件に採択した。