2014年8月29日金曜日

実教出版教科書 東京・埼玉・神奈川で来年度採用なし

 東京都教育委員会、埼玉県教育委員会、神奈川県教育委員会は平成27年度に都立及び県立高校で使用する教科書を原案通り採択しましたが、結果的に実教出版の高校歴史教科書は1校も採択しませんでした
 
 産経新聞によれば、埼玉県では「原案では、26年度に8校で採択された国旗掲揚と国歌斉唱を“強制”と記述した実教出版の歴史教科書を希望した高校はなかった」とされていますが、実際には各都県の高校において様々な圧力が加えられた結果です。
 
 神奈川県における実教出版の高校歴史教科書の採用に対する、県や市の教育委員会の干渉については、820の当ブログ記事:「実教日本史教科書に都・県教委の規制」に寄せられたコメントで、神奈川の「公正な教科書採択を求める県民の会」のメンバーから、要旨次のような報告をいただいています
 
 『神奈川県教委会議ではここまでの県民・当該校職員からの請願をすべて退けた上で、実教出版の当該教科書を排除した形での教科書採択を強行しました。事実上の強制的な事前検閲の責任を各学校長の責任に押しつけた訳です。
 一方川崎市教委は同じく実教の教科書「高校日本史A」を希望した2髙校に「再考」を求め、委員会で審議を強行しようとしています。同教科書は地元川崎、多摩川に関わる調べ学習の事例を豊富に盛った適切な教科書です。あからさまな攻撃が始まっています
 
 いま東京を中心とする関東地方で、教育委員会  校長 を通じての教科書採択に対するこうした干渉が強められています。
 
 日本出版労連の吉田典裕氏は、「実教出版はいわば見せしめにされただけではないか」として、これをきっかけに、戦時中の周辺諸国への加害責任に関する記述に関しても、出版社に萎縮が広がる可能性があるとみています
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実教「日本史」来年度も都立高ゼロ 教育内容へ介入懸念
東京新聞 2014年8月25日
 東京都教育委員会は二十八日の定例会で、二〇一五年度に都立学校が使用する高校教科書を採択した。国旗掲揚や国歌斉唱をめぐり「強制の動きがある」と記述した実教出版(千代田区)の日本史教科書を選んだ学校は昨年に続きゼロだった。記述を問題視する都教委は今年も「使用は適切でない」と各校に通知していた。検定済み教科書のわずかな記述をやり玉に挙げ、使用に待ったをかける都教委の方針に学校側が従った格好で、教育現場などから批判の声が出ている。
 
 実教出版の教科書「高校日本史A」「高校日本史B」は、国歌斉唱などに関する注意書きで「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述している。これに対し「教員の責務とする都教委の考え方と異なる」として、都教委は昨年六月、一四年度使用の教科書選定でこの二冊の使用を不適切とする見解を議決。今年六月には、一五年度用選定でも同じ見解を維持することを確認した。
 
 教科書選定は使用する前年に実施される。都立学校の高校教科書の場合、各校が検定教科書から使用を希望するものを選んで都教委に報告し、都教委が最終的に採択する。公立高校の採択権限について文部科学省は「設置する教委にある」としているが、実際には学校の選択を尊重することが多かったという。
 都教委の姿勢に反発する市民団体は今年二月、「教育現場への不当介入」と主張し、都に「使用不適切」とした議決の取り消しを求め東京地裁に提訴した。
 
 実教出版の日本史教科書をめぐっては、神奈川県教委も「教委の方針と相いれない」との見解を学校側に伝えており、一五年度用にこの教科書を選んだ県立高はなかった。
 
◆自主規制拡大の恐れ
 「教育内容への不当な介入だ」「出版の自由を侵す恐れがある」-。東京都教育委員会の見解がまかり通る形で、国旗掲揚、国歌斉唱に関する「強制の動き」に言及した実教出版の日本史教科書を選んだ都立学校は今年もなかった。教育現場や出版業界からは、教科書使用に対する自粛の拡大を危ぶむ声が出ている。
 都立高で長年日本史を教えてきた男性(65)は「都教委の見解が、教員に『実教出版の教科書を選ぶのは無理』と思わせたのではないか」と推測する。さらに「この問題がエスカレートすれば、教科書の記述への批判を避けるため、出版社が内容を自主的に変える動きにもつながりはしまいか」とも懸念した。
 
 都高校教職員組合は七月、都教委に対し「具体的な教科書名をあげて、各学校で選定しないことを事実上強要している」と抗議した。藤野正和・執行委員長は「そもそも国の検定に通った教科書を使うなと言うのはおかしい。いずれ解釈や考え方に対する介入にとどまらず、史実をねじ曲げる事態にもつながりかねない」と指摘する。
 
 日本出版労働組合連合会の吉田典裕・副中央執行委員長は「実教出版はいわば見せしめにされただけではないか。これをきっかけに、戦時中の周辺諸国への加害責任に関する記述に関しても、出版社に萎縮が広がる可能性がある」とみている。
 
 
国旗国歌「強制」、実教出版教科書 埼玉県立高で来年度採用なし
産経新聞 2014年8月28日
 県教育委員会は27日、平成27年度に県立高校139校で使用する教科書を原案通り採択した。原案では、26年度に8校で採択された国旗掲揚と国歌斉唱を「強制」と記述した実教出版の歴史教科書を希望した高校はなく、同教科書は27年度は使われない。県教委の千葉照實委員長は各校の教科書選定について「校長自ら教科書を読み比べ、校長の責任のもと、選定作業を進めた」と評価した。
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 26年度に8校で採択された実教出版の歴史教科書は文部科学省の検定済みで、今回も選定の対象になっていた。各校では教員らによる教科書選定委員会が採用する教科書を選び、最終的に校長の決裁で決定した。
 26年度採択では、実教出版の歴史教科書が学習指導要領で指導を義務付ける国旗掲揚と国歌斉唱について「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述。採択した県教委に対し、県議会が再審査を求める決議を行うなど反発が広がった。
 これに対し、県教委は採択のやり直しはせず、「地理歴史科指導資料集」を作成して教科書を補完する態勢をとった。
 関根郁夫教育長は今回の教科書採択について「教育委員会は校長と意見交換し、選定の手順を確認した。この教科書はどうだ、こうだと言っていない」と選定への関与を否定。その上で、「生徒、保護者になぜこの教科書を選んだか、校長としての責任が問われる。しっかり選ぼうという思いが昨年以上に強かったのだろう」と指摘した。
 
 上田清司知事は26日の定例会見で、明治時代の伊藤博文首相について歴史教科書で「射殺」という記述があることに触れ「日本の教科書で総理大臣暗殺ならいいが、射殺は決して許されない」と厳しく批判した。県教委によると、今回の採択では上田知事が問題視した「射殺」と記述した4社の歴史教科書について、42校で採択されたという。