2014年7月21日月曜日

秘密保護法の監視機関 これでは監視などできない

 軍機保護法(戦前)の再来といわれる特定秘密保護法年内施行されます。
 それに向けて政府は17日、特定秘密の指定や解除の統一基準を議論する有識者会議「情報保全諮問会議」(座長・渡辺恒雄読売新聞会長)を開き、法律の運用に関する素案を提示しました。
 諮問会議は月に発足しましたが、途中は全く開催がなく2回目の17日にいきなり素案が提出され、今後は素案のパブリックコメントをカ月間実施し、秋に閣議決定する方針です先般の集団的自衛権に関する閣議決定でもそうでしたが、なんとも乱暴で滅茶苦茶な話です。
 
 素案ではつの監視機関に加え、不適切運用に関する内部通報制度を創設しました。また特定秘密の対象として防衛や外交など4分野を細分化し、55項目を列挙し指定範囲の明確化を図ったとしました。
 しかし何をどのように言い繕おうと 監視機関を政府部内に置くというのでは監視の機能が果たせる筈もありません。正しく泥棒に泥棒の監視をさせるようなものです。なぜこうした本質的な問題を全く度外視することができるのでしょうか。
 
 政府と官僚との間でまとめれられた素案をただ追認するだけの諮問機関もまた意味をなしません。
 
 せめて監視機関くらいはまともなものが出来て欲しかったのですが、それとはほど遠いものになりそうです。法の運用も勿論です。
 今の内閣やその人選になる諮問会議にそれを期待するのがそもそも無理なことでした。
 
 神戸新聞の社説は、秘密保護法を施行してはならないと述べています。
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(社説)秘密法の運用/これでは懸念は拭えない
  神戸新聞 2014年7月20日
 政府が特定秘密保護法運用の素案を情報保全諮問会議に提示した。
 素案は「必要最小限の情報を必要最低限の期間に限って秘密指定する」と明記し、拡大解釈の禁止を打ち出した。会議に出席した安倍晋三首相は「秘密の取り扱いの客観性と透明性がより一層進展することが期待される」と述べた。
 
 「知る権利」を危うくするとの秘密保護法への根強い批判を意識し、首相は抑制的な法運用を強調するが、抽象的な文言では国民の不安は拭えない。チェック機能を担うのは政府内機関が中心で実効性は疑問だ。年内の法施行に向けて作業を加速させるのは乱暴というしかない。
 
 諮問会議は特定秘密の指定や解除の統一基準を議論するために設けられた第三者機関である。その役割は大きいはずだが、今年1月に初会合を開いて以来、水面下で意見交換が続き、半年ぶりの会議でいきなり素案が示された。議論の過程は見えにくかった。
 素案は、特定秘密の対象として防衛や外交など4分野を細分化し、55項目を列挙した。指定範囲を明確にしたとするが、対象に該当するかは役所側が判断するため、恣意(しい)的な運用の懸念は依然として消えない。
 
 チェック機関としては、内閣官房に府省庁の事務次官級で構成する「内閣保全監視委員会」を置き、内閣府に「独立公文書管理監」、その下に「情報保全監察室」を設ける。「重層的」に監視するというが、官僚の組織では独立性に問題がある上、管理監の是正要求には強制力がなく、機能には限界があるだろう。
 意図的な情報隠しを防ぐために大事なのは内部通報の制度だ。通報が監視の端緒となる。その窓口を設けるのは一歩前進だが、窓口は特定秘密の指定権限を持つ19行政機関に設置される。所属する組織内に通報する形では告発がもみ消される恐れもないとはいえない。
 
 沖縄返還をめぐる密約文書問題では、密約を示す文書が米国立公文書館で見つかった。交渉を担当した元外務省局長が密約を認めたにもかかわらず、政府は「密約はない」と言い張った。司法は、政府が文書を破棄した可能性があると判断した。
 都合の悪い情報は隠すという政府の体質への疑念は残る。それを防ぐ手だてが不十分なまま秘密保護法を施行してはならない。