2014年6月15日日曜日

憲法改正手続き定めた改正国民投票法が成立


 改正国民投票法は参議院本会議で自民党や民主党をはじめとする与野党8党などの賛成多数で、13日可決成立しました。
 改正法の施行から4年後に投票年齢を18歳以上に引き下げることになります。
 国民投票の有効性にかかわる最低投票率については結局盛り込まれませんでした。
 公務員の勧誘運動などについては、裁判官や検察官、警察官などを除く公務員が、賛否を知人などに働きかける「勧誘運動」を行うことを容認する内容となりましたが、共産党と社民党はなお不十分であるとしました。
 
 しんぶん赤旗は、参院の憲法審査会で可決された段階で、付帯決議にも盛り込まれていた最低投票率定めずに、公務員の運動を不当に制限し、その一方で有料広告野放しにしたことを批判する記事を載せています。
 
 NHKの記事と併せて紹介します。
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憲法改正手続き定めた改正国民投票法成立
NHK NEWS WEB 2014年6月13日
憲法改正の手続きを定めた、改正国民投票法は、13日の参議院本会議で採決が行われ、自民党や民主党をはじめとする与野党8党などの賛成多数で可決され、成立しました。
 
国民投票法の改正案は、自民・公明両党と民主党、日本維新の会、みんなの党、結いの党、生活の党、新党改革の与野党8党の合意に基づいて、ことし4月に衆議院に提出されました。
改正案は、改正法の施行から4年後に投票年齢を18歳以上に引き下げることを柱とし、裁判官や検察官、警察官などを除く公務員が、賛否を知人などに働きかける「勧誘運動」を行うことを容認しています。
13日の参議院本会議では討論が行われ、民主党の白眞勲参議院議員は、「国民投票法の課題の解決に向けて、ほかの政党と精力的に協議を重ね、改正案を提出した」と述べました。
これに対し、共産党の仁比聡平参議院議員は、「公務員の運動規制など国民投票法の根本的な欠陥を放置したまま、国民投票をできるようにするもので、解釈改憲の暴走と車の両輪だ」と述べました。
そして、採決の結果、改正国民投票法は、自民党や民主党をはじめとする与野党8党などの賛成多数で可決され、成立しました。
共産党と社民党は反対しました。
改正国民投票法は来週にも公布され、直ちに施行される見通しで、憲法改正の国民投票を行うことが可能になります。
 
安倍首相「国民的な議論を期待」
安倍総理大臣は記者団に対し「第1次安倍政権時代に成立した国民投票法が、今回改正された。それも、圧倒的な多数だったと承知している。投票年齢が18歳に下がっていくので、ぜひ若い皆さんにしっかりと憲法の在り方について議論していただき、憲法改正について国民的な議論が深まっていくことを期待したい」と述べました。
 
自民 船田憲法改正推進本部長「非常に大きな意義」
改正国民投票法の取りまとめに当たった、自民党の船田憲法改正推進本部長は国会内で記者団に対し、「改正法の成立で、正真正銘、憲法改正に向けた手続きが整い、非常に大きな意義がある今後は、憲法改正の実績を作っていくことが重要で、今回、法改正に関わった与野党8党の枠組みを大事にして、幅広い賛同が得られやすい、『環境権』や『プライバシー権』などの分野を最初の課題とし、議論を進めていくことになるのではないか」と述べました。
 
民主 海江田代表「解釈改憲許されず」
民主党の海江田代表は党の代議士会で「改正国民投票法が成立したことにより、憲法を改正するための道は担保された。安倍総理大臣は、どうしても集団的自衛権を行使したいのなら、正々堂々と憲法を改正すべきであり、憲法解釈を変更するための閣議決定をすることは許されない」と述べました。
 
維新 小沢国会対策委員長「改憲環境整った」
日本維新の会の小沢国会対策委員長は記者会見で「維新の会は、去年の通常国会に国民投票法の改正案を独自に提出するなど、この間の議論をリードしてきたという思いがあるので感慨深い。憲法改正に向けた環境が整ったので、今後、改正の中身の議論が深まることを期待したい」と述べました。
 
公明 斉藤幹事長代行「意義ある加憲で」
公明党の斉藤幹事長代行はNHKの取材に対し「憲法96条で憲法改正の手続きが定められており、国民投票ができるようになったことには、大きな意義がある」と述べました。
そのうえで、斉藤氏は「憲法改正は、国論を二分するようなテーマではなく、国民の多くが賛同するテーマから行っていくべきだ。『加憲』という考え方のもと、環境権やプライバシー権などから国民投票を実施して、新しい価値観を加えていく方法が最も現実的だ」と述べました。
 
みんな 浅尾代表「憲法改正考える契機」
みんなの党の浅尾代表は記者会見で「改正国民投票法の成立は積極的に評価したい。ただ、1つの手続きが終わっただけであり、憲法改正がすぐにできるとは思わないが、さまざまな政党が憲法改正についての考えをまとめるきっかけになる」と述べました。
 
共産 井上参議院幹事長「9条改正を警戒」
共産党の井上参議院幹事長は記者団に対し「安倍政権は解釈改憲で集団的自衛権の行使を容認しようとしているが、改正案が成立したことで、憲法9条の条文そのものを変えることができるようになり、非常に重大だ。改憲の流れに対する国民の反対の声は大きいので、国民と共同して、頑張りたい」と述べました。
 
結い 柿沢政策調査会長「統治機構改革実現を」
結いの党の柿沢政策調査会長は、記者会見で、「われわれは、憲法改正のため、国民投票を行える環境を作ることについて、一貫して賛成の立場から議論に参加してきた。憲法を改正して、道州制や、首相公選制の導入などの統治機構改革を実現し、新しい国の形を作り出していきたい」と述べました。
 
生活 鈴木幹事長「改憲の道筋整った」
生活の党の鈴木幹事長は記者会見で「長い道のりではあったが、ようやく成立した。憲法改正への道筋をつける体制が整った以上、集団的自衛権の行使容認を巡る問題など、安全保障についても、安倍政権は、憲法改正をすべきかどうか国民に問うべきだ」と述べました。
 
社民 吉田党首「未完成のまま成立」
社民党の吉田党首は記者団に対し「公務員の勧誘運動などを巡る審議は不十分で、未完成のままの成立だ。安倍総理大臣が、集団的自衛権の行使を容認するため、憲法解釈を一内閣の判断で変えようとしているなかでの成立であり、立憲主義を揺るがしかねない問題だ」と述べました。
 
 
改憲手続き法改定案 最低投票率の定めなし 不当に運動制限 有料広告野放し
しんぶん赤旗 2014年6月12日
 9条改憲の条件づくりとなる改憲手続き法(国民投票法)改定案が参院憲法審査会で、可決されました。しかし、衆院につづき参院審査会審議でも、現行法の根本的欠陥をそのままに、とにかく憲法改定の国民投票ができるようにするという改定案の問題点が浮き彫りになりました。
 改憲手続き法には、一定の投票率を超えなければ投票を無効とする最低投票率の定めがありません。少数の有権者の賛成で改憲案が承認されかねず、最高法規としての憲法の信頼性が揺らぐ危険があります。
 日本共産党の仁比聡平議員はこの根本欠陥を指摘し、手続き法では最低投票率について「検討」を求める「付帯決議」までつけられていると追及しました。しかし、発議者の船田元議員(自民党)は「この議論はテーマにならなかった」と開き直りました。
 根本欠陥を放置したまま、とにかく改定案を押し切るやり方には何の道理もありません。参考人審議では、日本共産党の吉良よし子議員の質問に、「最低投票率に関しては何らかの数字を置く方がいい」(名古屋大学大学院の愛敬浩二教授)、「(低投票に対する)一定の歯止めは必要」(日弁連の伊藤真弁護士)との指摘が相次いで出されました。
 
 審議ではさらに、国民投票運動を不当に制限する一方で有料意見広告は野放しにするなど、改憲推進勢力に有利な仕組みが問題になっていました。ところが、改定案は、こうした欠陥を是正するどころか、公務員による国民投票運動をさらに制限。裁判官などの運動を禁止し、組織による運動の規制まで新たに検討条項に盛り込みました。
 船田氏は、規制が検討される組織には「NPO(民間非営利団体)も考えられる」「宗教団体というのもある」と答弁し、規制の範囲がいくらでも広がる可能性に言及。「公務員の影響力は大きい」などと述べ、改憲派に脅威となる公務員の運動を狙い撃ちする意図を語りました。
 今、改憲を望む声は国民のなかにありません。安倍政権が進める憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認への動きに国民はいっそう警戒感を強めています。
 
 国民が求めず、欠陥だらけの改憲手続き法は改定ではなく廃止すべきです。 (佐藤高志)