2014年6月18日水曜日

集団的自衛権行使の相談が 国民の声と離れたところで

 集団的自衛権は憲法9条が認める『必要最小限度』の範囲を超えるため行使できない」。
 これが鉄則であって国民に定着してきました。それを解釈変更で行使できるようにするなどは、法治国家の姿に程遠く、国民不在の蛮行です
 公明党の北側氏が、以前に「論理的な整合性なしに解釈を変更してしまえば、政権交代したら、またころころ変わって法的安定性を大きく損なう」と語ったのは正論です。それを「平和の党」たるものが、連立維持を優先してその原則を自ら踏みにじることなどあってはならないことです。
 まして集団的自衛権の行使を否定している72年の政府見解」をその口実にするとは、理解の埒外です。それは思想以前の、理性のレベルの問題であると言えます。
 
 17日に公明党に提示された閣議決定の原案は、同盟国の限定をなくして「他国」にしたうえ、「国民の生命や権利が根底から覆されるおそれとなっています。「おそれ」は原案にはなかったのを、拡大解釈が可能となるように新たに付け加えたものでした。
 
 もともと閣議決定自体が論外なのですが、この原案は「72年の政府見解」からはこれ以上はないほど離れたものとなっています。
 
 南日本新聞の社説と東京新聞の記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~
(社説)「集団的自衛権・公明党の転換」 国民の声を聞くべきだ
南日本新聞 2014年6月17日
 安倍晋三首相が悲願とする集団的自衛権の行使容認に、どうやら道が開けそうだ。連立内閣でブレーキ役の公明党が、これまでの慎重姿勢を転換させた。
 集団的自衛権は憲法9条が認める「必要最小限度」の範囲を超えるため行使できない。これが国会議論を積み重ね、風雪に耐えてきた解釈だ。国民に定着し、支持されてもいる。
 歴代政権が認めなかった集団的自衛権を、解釈変更で行使できるようにする。法治国家の在るべき姿に程遠く、国民不在の解釈改憲と言うほかない。
 安全保障法制整備に関する与党協議会で、座長代理を務める公明党の北側一雄副代表は先月、参院憲法審査会でこう述べた。
 「論理的な整合性なしに解釈を変更してしまえば、政権交代したら、またころころ変わって法的安定性を大きく損なう」
 今回の解釈変更は違う、というのだろうか。納得いく説明を聞きたいのは、支持者ばかりではあるまい。
 
 公明党は先月下旬から始まった与党協議に先延ばし戦略で臨んでいた。一転したのは首相が今国会中の与党合意を指示してからだ。強気に出ても連立離脱はないと見透かされたのだろう。
 公明党が自民党と連立政権を組んで約10年、踏まれても自民についていく「げたの雪」とからかわれたこともあった。
 だが、公明党は「平和の党」が看板である。連立維持を優先したのなら本末転倒だ。
 
 首相の強気も理解に苦しむ。特定秘密保護法が強行成立した後、「もっと丁寧に時間を取って説明すべきだった」と反省の弁を述べた。半年もたたないのに、同じような手法で突進している。
 自公は1972年の政府見解を引用した限定的な要件を、解釈変更の閣議決定に盛り込むことで大筋一致した。
 だが、72年見解は集団的自衛権の行使を否定している。逆の結論を導き出すのはこじつけだ。
 国民を代表する国会をなおざりにしたまま、閣議決定だけで行使を認めてしまおうというのも問題である。認めるわけにいかない。
 
 反対意見書を国会に提出した市町村議会は50を超えた。先日も27都道府県の地方議員が超党派団体を設立し、「政権の暴走と闘う」との決議文を採択した。
 9条が骨抜きになれば、日本の若者が海外で血を流すかもしれない。国民の声を聞くべきだ。
 
 
集団的自衛権明記 拡大解釈可能な文言そのまま
   閣議決定案概要提示
 東京新聞 2014年6月17日
 安全保障法制の見直しをめぐる自民、公明両党の協議が十七日午前、国会内で開かれ、政府は武力で他国を守る集団的自衛権の行使容認を盛り込んだ閣議決定案の概要を提示した。自民党側が前回提示した自衛権発動の新たな三要件がそのまま反映され、行使容認の地理的な限定はない。海外での自衛隊の武力行使の歯止めは明確でないままとなっている。
 
 閣議決定案の概要には、こうした自衛権行使に関し「国際法上は集団的自衛権と認定される」と、公明党が依然慎重な集団的自衛権の文言を明記した。
 概要は、前文▽武力攻撃に至らない侵害(グレーゾーン事態)への対処▽国連平和維持活動(PKO)などの武器使用基準緩和や、「他国との武力行使の一体化」判断基準見直しによる支援活動の拡大▽今の憲法で許容される自衛の措置▽今後の国内法整備の進め方-の項目で構成されている。この日は突っ込んだ議論には入らなかった。
 
 座長を務める高村正彦自民党副総裁は「議論と並行して、日程協議に入ってほしい」と、二十二日の会期末までの閣議決定を目指し、両党幹事長間で日程協議を急ぐ考えを示した。
 
 自衛権発動の新三要件は、国民の生命や権利が「根底から覆されるおそれ」がある場合、集団的自衛権の行使を認める内容。「おそれ」の文言などに、政府の解釈次第で自衛隊の海外での武力行使の範囲が拡大する懸念がある。
 
 高村氏は会合後、記者団に「二十日の次回会合で三要件の議論をする。修正すべき点は柔軟に対応したい」と述べた。一方、副座長の北側一雄公明党副代表は「次回まとめる話にはならない」と述べ、今国会中の閣議決定は難しいという認識を示した。
 
 会合では機雷掃海も議論したが、主張は対立し結論を持ち越した。
 
 <自民党が13日に提示した自衛権発動の新3要件>
 現行の自衛権発動の3要件を見直し、日本への攻撃がなくても他国への武力攻撃が発生した場合に集団的自衛権の発動を認める。具体的には(1)日本の存立が脅かされ、国民の生命や幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがある(2)これを排除し、国民の権利を守るためにほかに適当な手段がない(3)必要最小限度の実力行使にとどまる-などの場合に武力行使を認める内容。