2014年5月21日水曜日

安倍氏ブレーンの発言の数々

 安保法制懇の報告書の作成で中心的な役割を果たした北岡伸一座長代理は19日、自民党の安全保障法制整備推進本部で講演し、「安保法制懇私的懇談会だから、正統性なんてそもそもあるわけがない」「(法制懇に集団的自衛権行使に反対する人が皆無だったことについて)自分と意見の違う人を入れてどうするのか。日本のあしき平等主義だ」と述べました。
 身内での講演ということで、ありのままが語られています。
 
 また安保法制懇メンバーの一人で安倍首相の外交政策ブレーンでもある元外務官僚・岡崎久彦氏は、ハフィントンポスト長野智子編集長のインタビューに対して、要旨以下のように答えています。
 
集団的自衛権が権利があって、行使できないと言っているのは、日本が世界中でただ一国なんですよ。どんな国でもやっている話しなんです。
・戦争を始めるかどうかは総理がその場で将来の日本の国益を考えて、心血を注いで決めるんです。・・・・自衛隊は戦争する軍隊になりますよ。
・(「なぜ憲法改正の手続きを取らないのか」に対して)じゃあ、あなた憲法改正やってみてください。分のの多数を集めるなんて大変ですよ
最高裁の判断が最終判断なんですいかなる憲法解釈も砂川判決にはかなわない
日中関係、米中関係なんてものはないです。中国対日米同盟、このバランスで全部考えなきゃいけない
 
集団的自衛権持っているのに行使できない」のはおかしいという発言は、自民党の議員たちも好んで口にしますが、この問題は阪田雅裕元法制局長官の下記の発言に尽きています。
 「“持っている”ということはそれを行使することが国際法上認められるということに過ぎず、国にそれを行使させるかどうかは憲法その他の国内法において、国民の意思で決めることでなので、何の矛盾もない。」
 
 「総理が心血を注いで判断すれば戦争も始められる」という発言も、安倍氏と同様に、憲法が国=政府を制約するという立憲主義を分かっていないもので、つくづくと恐ろしいことを主張するものです。
 
 「憲法改正が困難」という発言はさすがに真情を吐露したものと理解されますが、だから解釈改憲しかないというのには勿論道理はありません。
 砂川事件最高裁判決も、既に政権の改憲担当者でさえも「集団的自衛権行使容認の論理としては破綻した」と認めているのに、ここで持ち出すとはみすぼらしい話しです。
 
 「中国対日米同盟というバランスで全考えなくてはいけない」というのも驚くべき意見であって、これが安倍政権が登場してからこれほどまでに日中関係を悪化させた背景思想になっているのかも知れません。
 こういう人を外交政策ブレーンに選ぶことの暗さが伝わる話です。
 
 以下に関連の記事を紹介します。
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安保法制懇「正統性あるわけない」 北岡座長代理
朝日新聞 2014年5月20日
 安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の北岡伸一座長代理は19日、自民党の会合で、「安保法制懇に正統性がないと(新聞に)書かれるが、首相の私的懇談会だから、正統性なんてそもそもあるわけがない」と語った。北岡氏は首相に提示した報告書の作成で中心的な役割を果たした。
 
 自民党の安全保障法制整備推進本部で講演した北岡氏は、安保法制懇のメンバーに集団的自衛権の行使に反対する人がいない、という報道についても「自分と意見の違う人を入れてどうするのか。日本のあしき平等主義だ」と強調。さらに「NHKだって必ず番組に10党で出すから、議論が深まらない。鋭い論法でやっていても、あとで視聴者から反発が起きる。安全保障の専門家は集団的自衛権に反対の人はほとんどいない」と持論を展開した。
 
 
「自衛隊は戦争する軍隊になりますよ」
  安倍首相のブレーン・岡崎久彦氏に聞く 集団的自衛権 
ハフィントンポスト 2014年05月19日
 安倍首相は「集団的自衛権の行使容認」という日本の安全保障を大転換する方針を示し、いよいよ与党協議が始まります。具体的に何が変わるのか。安倍首相直属の有識者会議であり、今回報告書を作成した安保法制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)メンバーの一人である元外務官僚・岡崎久彦氏にうかがいました。岡崎氏は安倍首相の外交政策ブレーンでもあります。
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長野 安倍総理の会見を受けて、集団的自衛権の行使容認について議論が活発化しています。岡崎さんは反対意見についてどう考えますか。
岡崎 集団的自衛権が権利があって、行使できないって言っているのは、世界中でただ一国なんですよ、どんな国でもやっている話なんです、当たり前の話なんです。
 
長野 集団的自衛権というのは、日本が自分たちが攻撃されていないのに、全然関係ないところで、巻き込まれていって、例えば戦争や地域紛争で、日本の自衛官が血を流すことになるんじゃないか。そうした不安があります。
岡崎 結局ね、鉄砲を打つかどうかというのは、場合によっては国家の命運にかかわる、これはね、結局、総理大臣が決める。
    総理がその場で将来の日本の国益を考えて、心血を注いで決めるんです。それ以外にないんです世界的に。で、決める時にですね、くだらない議論で、手足を拘束されないようにする、つまり、権利はあるけれども、行使ができないからちょっと行使できないとかね、そんな事で国の利益を誤ったら大変ですからね、だからそういうつまらない議論を全部払拭して、理論的にきれいにしたうえで、全部総理の決断を仰ぐと。
    要するにね、集団的自衛権というのは権利であってね、義務じゃないですからね。なんかあったら戦争しなくちゃいけないというのではないから、するかどうかはね、総理が決める、それ以外にないです。
 
長野 可能性として、その選ばれた総理が、もし決断をしたら、日本人の自衛官が血を流す可能性があると・・・
岡崎 そうです、その通りです。
    自衛隊は戦争する軍隊になりますよ。国が危機にさらされたらやりますよ。国が危機にさらされて自衛隊が戦争しなかったらどうするんですか。
 
■じゃあ、あなた憲法改正やってみてくださいよ
 
長野 これだけ国民の安全を守るためにやりたい、というならば、なんできちんと憲法改正の手続きを取らないんですか。
岡崎 きちんとってね、じゃあ、あなたやってみてくださいよ。憲法改正やってみてください。
    3分の2の多数を集めるなんて大変ですよそんなこと。憲法改正ができるならもうとっくに変えていますよ。
    国民投票して決まるなら賛成ですよ。だけどその前に正しいことはした方がいい。だって最高裁がそれで良いって言っているですから。
    憲法解釈というものはね、憲法にちゃんと書いてある。誰が持っているかと。これはね、最高裁なんです。最高裁が最終判断の権限を持つってちゃんと書いてあるの。ね。だから、最終判断をするのは、国民でもなくて国会でもないし、ましては憲法学者でもないし、ましてや政府の役人である法制局でもない、最高裁なんです。
    最高裁の判断が最終判断なんです。それは砂川判決というものがありましてね、そこで、砂川判決が出るんです。
注) 砂川判決とは、1959年に出された最高裁判決のこと。この中で最高裁は、日本は、「平和と安全のため、自衛権を行使することは当然のこと」と判断しました。 ただ、この判決が指す『自衛権』は、集団的自衛権まで含めたものではないとの意見もあります。
岡崎 自衛権は集団的と個別的の区別はないんです。最高裁の判決では。それはもう明快なんです。だからいかなる憲法解釈も砂川判決にはかなわない。だって憲法に書いてあるんだもん。みんなね、憲法を尊重するって言っているでしょ。
    で、みんな憲法を守るなら、最高裁の通りにしないといけない。
 
長野 今回安倍総理が、会見で、いろいろパネルで説明された1つの例として「邦人を輸送するときのアメリカの船の防護について」というものがあります。それに対して公明党の山口代表は、これまでの政府の言ってきた考え方でも、まあ対応できると、個別的自衛権でも対応可だから、なんでわざわざ、集団的自衛権に憲法解釈を変えるのかと?
岡崎 結局ね、山口さんの言っているのはね、その場合は守ろうって言っているんでしょ、日本人をそれなら同じですよ、政府と。法的にどんな小理屈をつけようとね、小細工をしようとね、日本人を守る気があるなら、山口さんは政府と同じことを言っているです。
 
長野 (総理会見で説明された例はいずれも)個別的自衛権でそれは出来るじゃないかと指摘する反論があります。集団的自衛権が必要とされるほかの例、一番危うい事態など安保法制懇で議論されましたか
岡崎 もう東アジアの安全保障というのがね、日中関係、米中関係なんてものはないです。中国対日米同盟、このバランスで全部考えなきゃいけない、共同で行動することを考えないかぎり、日本の安全は今考えられない。
    日本一人でもアメリカ一人でも守れないもん。アメリカ一人で守れと言ったらアメリカ引きますよ、だって勝てないもん。
    一番の問題は、日米同盟が危険にさらされた時ですよね、アメリカだけ、アメリカの第7艦隊がやられていて、日本が助けにいかなかったら、アメリカもう(同盟)やめたと、そうなる可能性はありますね、それが一番怖いですね。