2014年5月11日日曜日

国民の意思なんてどうでもいい 手段も問わない

 つい2、3ほど前には、公明党に配慮して閣議決定は今国会にこだわらないと言っていた安倍首相が今度は今国会の会期中に集団的自衛権の行使容認を「閣議決定」すると言い出しました。
 また13日に出させるとしていた私的懇談会の安保法制懇の報告書は、その後の対応に公明党が同意しないので、提出は14日以降にずれるだろうということです。
 まさに日替わりメニューです。
 
 政府は、秋の臨時国会で、日本への武力攻撃がなくても、「わが国と密接な関係にある国」への武力攻撃が発生すれば首相の命令で自衛隊が武力行使できるように、自衛隊法を改めるということです
 「わが国と密接な国とは?」と公明党の勉強会で聞かれて、政府関係者は「わが国の自衛隊に出動を要請する国のことです」と答えたということです。つまりありとあらゆる国で戦争に参加できるというわけです。
 下位の法律(を変えること)によって憲法9条を放棄するという恐るべきたくらみです。
 
 ただ、そのためには参院で過半数を得なくてはならないので、与党公明党の同意だけは必要で、加えて閣議決定のためにもと、公明党をなだめ、すかし、脅してというのがこの数日の安倍首相の胸中であり振る舞いです。
 
 国民の多数が9条の改定に反対で、集団的自衛権の行使を閣議決定で行うことにも反対ですが、いまや国民の意思などはどうでもいいのです。
 
 安保法制懇と連携して早々に打ち出した「砂川最高裁判決 援用作戦」はさすがに評判が良くないので、今度は個別自衛権だけでは対応できない事例を10例以上も出すということです。まさに偏執狂的で、「角を矯めて牛を殺す」振る舞いです。
 
 “一朝ことあれば”、“直ちに修羅場を演じる”というのではなく、平和憲法を掲げてそうした事態に陥らないように、外交努力を積み重ねていくのが政府の責務です。
 近隣諸国との外交能力が欠如していてはそもそも政府としての仕事などはできません。
 
 「明日の自由を守る若手弁護士の会」は、「そんな妄想・空想のようなケースを提示するのはやめるように」と訴えています。
  そして事細かに安倍政権の策動をたしなめています。
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「密接な国」攻撃も対象=集団自衛権、防衛出動を緩和-政府
時事通信 2014年5月10日
 政府は集団的自衛権の行使容認に向け、秋に予定する臨時国会で自衛隊法を改正し、「防衛出動」規定の緩和を目指す方針を固めた。日本への武力攻撃がなくても、「わが国と密接な関係にある国」への武力攻撃が発生すれば首相の命令で自衛隊が武力行使できるように改める。政府関係者が明らかにした。
 
 自衛隊法76条は、外部から日本への武力攻撃やその恐れがあり、首相が日本を防衛するため必要があると認める場合に自衛隊の出動を命令できると定める。
 自民党内には、集団的自衛権行使の根拠として「集団自衛出動」の規定を新設する案もあったが、行使容認に慎重姿勢を崩さない公明党に配慮し、「防衛出動」という名称を変えずに、自衛隊の任務を拡大する。
 集団的自衛権を行使する場合、現在の防衛出動と同様に閣議決定を経て首相が命令。また国会の事前承認も義務付けるが、緊急時は事後承認とする。
 集団的自衛権の行使により、日本周辺の公海上での米艦防護などが可能となる。
 
 政府は「密接な関係にある国」について、同盟国である米国に限定せず、オーストラリアやフィリピンなども想定。地理的な制約は設けず、首相が総合的に判断するため、自衛隊の活動範囲は改正案にも盛り込まない方針。 
 
 政府は、安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が集団的自衛権の行使を認める内容の報告書を首相に提出することを受け、公明党の理解を得た上で、憲法解釈の変更を閣議決定。自衛隊法改正案など関連法案を秋の臨時国会に提出したい考え。
 ただ、公明党の了承が得られる見通しは立っておらず、政府・与党内の水面下の調整が続いている。複数の政府・自民党幹部は、当初13日としていた法制懇の報告書提出のタイミングについて、14日以降にずれ込む可能性に言及した。
 
 
国民の意思なんてどうでもいいの、という執念、ノンストップ 
明日の自由を守る若手弁護士の会HP 2014年5月9日
 報道によると、安倍首相は自民党の高村副総裁と会談し、解釈改憲(憲法9条は集団的自衛権の行使を認めている、とアリエナイ読み方をすることにする)について、今の国会の会期中に閣議決定するのが望ましいということで、来週、有識者懇談会の報告書が提出されたあと、速やかに協議を始めるよう指示したとのことです。
 
 つい先日は、公明党に配慮して閣議決定は今国会にこだわらない、等々おっしゃっていたように思いますが、あれはフェイントだったのかなー、なんて。
 一刻も早くとにかく解釈改憲したい、という首相の執念は全く揺らいでいないようです。
 
 「立憲主義を破壊する、近代民主主義国家として許されない解釈改憲には、どうしても賛成できない」、という公明党の姿勢はきわめて理性的で当然なものです(拍手
 
 その姿勢を改めて、いいじゃん解釈改憲しちゃおうよ、という無理な働きかけには、理屈はありません。理論的な落としどころなどないように思うのですが、果たしてどんな 「協議」がなされるのでしょうか。
 
 ただ、重要なのは、そんな今国会会期中か、それとも秋なのか、などという話ではありません。
 そもそも、改憲したいのであれば、国民の意見を聞いて下さい。
 
・なぜ改憲したいのか、
・いつでもどこでも戦争できる国にならなかったら日本はどうなってしまうと考えているのか、
・いつでもどこでも戦争できる国ではない日本にどんな不利益があったのか、
・そんな国であることで、今まさにどんな危機が忍び寄っているといういうのか、
 
 国民に具体的に問うてください。
 その際には、今のユーシキシャカイギ(安保法制懇)が想定しているような妄想・空想のようなケースを提示するのはやめてください。
 
 北朝鮮の脅威に対して、などと、個別的自衛権の行使として対処できるようなことをあたかも「集団的自衛権が行使できないと何もできない」かのような誤った解説はしないでください。
 
  集団的自衛権が行使できないとなぜ日本という国に未来が無いのか、せ・い・か・く・に、説明して下さい。
 
 首相はじめ自民党の方々が考えているとおりであれば、国民は必ずや「今こそ戦争できる国に!」と賛成するでしょうし、その波に乗って憲法96条のルールどおりに改憲できるのでは?
 
(首相の心の友みたいな方々が経営委員を務めておられる)NHKの世論調査ですら、
・改正の必要ある  (去年)33  (今年)23
・どちらともいえず  (去年)32  (今年)32
・改正の必要ない  (去年)30  (今年)38
 という結果が出ています。(単位はいずれも%)

  政府が9条改正への手段を問わない姿勢を鮮明にすればするほど、国民の側に「国家から殺せと命じられ、命ぜられるがままに人を殺し、あるいは国家の都合で自国民が殺される国になる」ことのリアリズムが伝わった結果なのかな、と思うのですが、この結果を、首相はどのように受け止めているのでしょうか…?
 
 まぁ、見て見ぬふりなのかもしれませんねっ!