2014年4月13日日曜日

自民 憲法対話集会を開始 緊急事態条項の新設をアピール

 自民党の憲法改正草案を国民に説明する「憲法対話集会」を、12日、宇都宮市を皮切りにスタートさせました。約2年をかけて全国100箇所ほどで開催する方針です
 集会では、国民の合意を得やすいものとして環境権緊急事態条項の新設をアピールしたということですが、環境権の方は人権や脱原発をサポートするものになり得ますが、緊急事態条項は大変に危険なものです。
 
 憲法改正推進本部の船田元氏は、東日本大震災の際に放置車両所有者に無断で移動、排除する根拠が問われたことを例に挙げて、そういう事態では、首相の権限を一時的に強めることが必要になると説明したようです。しかしそうした不都合があったのであればそれに対応する法律を制定すれば済む話で、わざわざ憲法に謳うからにはそんな生易しいものである筈がありません。
 
 自民党の憲法改正草案は、「第九章 緊急事態」で要旨次のように規定しています。
 
(緊急事態の宣言)(要旨
第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、緊急事態の宣言を発することができる。
2 緊急事態の宣言は、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
3 百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
4 
 
(緊急事態の宣言の効果)(要旨
第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる
2 
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、国その他公の機関の指示に従わなければならない。
4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されない
 
 要するに、「総理大臣は国会の事後承認で『緊急事態』を宣言することができ、100日ごとに更新できる。そのときには内閣の政令が法律と同じ効力を持ち、宣言の期間中に衆院議員の任期が来ても自動的に延長される」というもので、行政権に加えて実質的な立法権も内閣に付与されるという内容です。
 
 これはかつてヒトラーがワイマール憲法下で「合法的」に制定して、それによって全権力を掌握して独裁体制を確立させた『全権委任法』に相当するものです。ワイマール憲法は民主的なものでしたが、ヒトラーにそうした暴挙を許す余地があったとして、後世 批判されました。
      これは極く表面上の形式であって、実態は不法極まる弾圧と強制によって
       国会で議決させて、制定されました。
  自民党は、改憲案で政府に対してそうした超法規的な「大権」を付与することを堂々と謳っています。
 それなのに「大震災時に避難道路をスムーズに確保できるようにするため」などと説明するとは、あまりにも国民を欺き且つ愚弄するもので許されません。 
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自民が憲法集会スタート 改憲機運盛り上げへ 約2年かけ全国で開催
産経新聞 2014年4月12日
 自民党は12日、平成24年4月に同党がまとめた憲法改正草案を支持者らに説明する「憲法対話集会」を、宇都宮市で開催した。憲法改正の国民的機運を盛り上げていくのが狙い。この日の集会が第一弾で、約2年間かけて全国で開催していく方針だ。
 
 自民党は、憲法9条や改正の発議要件を定めた96条の改正を重視している。しかし、「まず求められるのは実績作り」(自民党幹部)として、比較的合意が得られやすいとみられるテーマに照準を当てる動きが出ている。
 自民党の憲法改正推進本部の幹部たちが念頭に置くのが、自然災害や武力攻撃への対応を定める緊急事態条項の新設や、公明党が主張する環境権だ。12日の集会でも、これらのテーマが取り上げられた。
 
 「3・11の反省もあり、緊急事態時に国として何ができるのかも草案に書きこんだ」
 自民党憲法改正推進本部の船田元(はじめ)本部長は集会で、緊急事態条項の新設をアピールした。
 東日本大震災では、被災者の救助を妨げる放置車両について、所有者の意向を確認しないまま移動、排除する根拠が問われた。緊急事態条項はこうした障害を排除するために、首相の権限を一時的に強める根拠になる。
 船田氏は環境権の必要性も訴えた。自民党の草案も「国は、国民が良好な環境を享受できるよう保全に努めなければならない」と明記しており、公明党と連携しやすい。
 
 自民党が対話集会を始めた理由の1つが、世論の動向だ。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の3月末の世論調査ではほぼ一年ぶりに、改憲反対(47%)が賛成派(38・8%)を逆転した。
 集会で、中谷元(げん)本部長代理は「『自民党は憲法改正によって戦争を起こせる国にしようとしている』という人がいるが、そうではない」と強調した。
 96条改正が論じられた昨年も、護憲勢力から「国会発議要件の緩和が9条改正を容易にし、戦争への道を切り開く」と宣伝する声が出た。これが改憲への抵抗感を一部の国民に植え付けた面があるのは否めない。
 9条や96条改正の先行は難しいとみる自民党推進本部のある幹部は「緊急事態条項は安倍晋三首相や石破茂幹事長も重視している。他党や国民の理解も得られそうだ」と語った。(内藤慎二)