2014年3月3日月曜日

TPP交渉は頓挫する可能性が・・・

 TPP反対運動を一貫して続けている山田正彦元農水相が、TPP交渉がメデタク暗礁に乗り上げたことを明らかにしました。
 
 ことの起こりは、アメリカの与党・民主党の国会議員のほとんどが、TPP交渉に対して反対に回ったからということで、つい先日シンガポールで行われたTPP閣僚会議は、しらけた雰囲気の中で次回のことも決められずに終わったということです。
 
 米議員たちが反対に回った理由が奮っています。
 米国では国会議員が、秘密とされているTPP協定の内容にアクセスできるのだそうですが(議員たちの強い要求でそうなりました。当然日本でもそうあるべきです)、それによってTPP協定で労働力の流動化が起きればアジアから安い労働力が入って来ることになって、アメリカ人の失業者が増えることを議員たちが認識したからです。
 アメリカは、カナダ、メキシコとの北米自由貿易協定によって、500万人失業し、4万の工場がメキシコに出て行き(工業空洞化し)、給料は41年前まで下がりました。メキシコなどは北米自由貿易協定によって多大な被害を蒙ったのですが、そのカウンターパンチで、アメリカも相応の被害を受けていたというわけです。天の摂理と呼ぶべきかもしれません。
 
 これまではアメリカをベースとする他国籍企業がTPP交渉を主導してきたのですが、彼らには工業の空洞化などは何の苦痛でもなかったということのようです。
 兎に角あれだけシャカリキにTPP交渉を進めてきたアメリカが、いまや背後の与党議員の反対によって頓挫しようとしているとは何んとも皮肉な光景です。
 
 もともとTPPはアメリカが日本を標的に構想したものであって、関税引き下げ交渉が主な狙いなのではありません。アメリカ型の貿易ルールを広げて多国籍企業が自由に活動できる環境を作るのが狙いです。
 その分野は、政府調達(公共事業入札)、知的財産、金融サービスなど実に21にもわたるもので、関税はその一つにすぎません。21分野でのアメリカの対日要求は、一言でいえば、「日本の制度をアメリカ化しろ」ということです
      ※ 2013年10月1日TPPの狙いは米ルールの押し付け  
 TPPは2005年、シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国間の経済連携協定で始まったのですが、そこにアメリカが割り込んできたときには、「乳母車に象が乗り込んだ」といわれました。日本以外の国はまだ経済的規模が小さいので、多国籍企業が標的にするには全く物足りないのでした。
 
 これで日本もTPPの罠からようやく逃れられる見通しが出てきました。他力本願的ではあったにしても幸運でした。
 
 以下に山田氏の報文を紹介します。
      文中にWTOのようにドーハ化して頓挫する」という表現が出てきますが、それは次のような意味です。
 
WTO・ドーハラウンドの決裂
 2001年にドーハで始まった世界貿易機構(WTO)多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は、交渉の過程で①工業製品や農産物の関税率、②アメリカの農産物への輸出補助金、③発展途上国の農業を守るための緊急輸入制限(セーフガード)、の3点が焦点となってきましが、アメリカは自国農家への農産物の輸出補助金の減額に応じず、逆に発展途上国の求めるセーフガードを認めないとしたために膠着状態に陥り、2006年7月の閣僚会合決裂(=交渉凍結)しました。
 この交渉は、欧米が自分たちに有利な貿易ルールを作り、それを発展途上国に押し付けようとするものでしたが、日本はここでもアメリカに追随し、自国の農業を犠牲にすることをもいといませんでした。
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TPPは漂流が決定的となりました
シンガポールでのTPP閣僚会議の報告
山田正彦2014年2月28日
シンガポールでのTPP閣僚会議の報告から転載します。
米国のパブリック・シチズンのBurcuさんから、シンガポールでのTPP閣僚会議での報告を受けました。
 
閣僚会議の状況は、私の出版パーティーの途中に生中継で首藤信彦(国民会議事務局長)から現地での報告を受けていましたがその通りで白けた雰囲気のなか次回のことすら決められずに終わりました。
 
これでTPPは漂流が決定的となりました。今年はマレーシア、ベトナム、チリも大統領が変わって反対となれば、WTOのようにドーハ化して頓挫する可能性がでてきました。
これは、米国で国会議員が秘密協定の内容にアクセスできるようになって、与党、民主党のほとんどの議員が反対に回ったからです。
オバマ大統領も、安倍総理と自民党が5品目のうちコメと麦、砂糖が守れれば、牛、豚肉などは段階的に関税撤廃はやむを得ないとしても、のむわけにはいかなかったのです。
ここで、私達が気を付けなければいけないのは、米国の議員が反対に回ったのは色々有りますが、一番は雇用の問題です。
 
カナダ、メキシコとの北米自由貿易協定で経済が成長するどころか、メキシコから安い労働力が入って米国人が500万人失業して、40000の工場がメキシコに出て行って、工業の25%が空洞化したのです。結果、給料が41年前まで下がったのです。
ここでアジアとのTPP協定を結んだら、経済が成長するのではなく、米国民の雇用が失われることを心配したのです。
 
今日は久し振りにブルクーさんにお会いして、一緒に食事いたしました。
少しほっとしたところです。
ニュージランドのケルシー教授も米国のローリーワラックさんも喜んでいます。
 
「TPP秘密交渉の正体」出版を祝う会
 
有難いことです。
2月25日に私の著書「TPP秘密交渉の正体」の出版パーティーで久し振りに感動いたしました。
発起人の榊原英資先生、孫崎享先生、大下英治先生、原中勝征先生、植草一秀先生方に味のあるスピーチを頂きましたが、そこに宇都宮健児さんもかけつけてくれたのです。
来賓として鳩山友紀夫元総理、亀井静香先生、現職の国会議員、鈴木克昌先生、篠原孝先生、阿部ともこ先生、福島みずほ先生、前職の川内博史さんなど30人が集まって頂いたのです。
亀井先生が「今の国民は5寸釘を打たれても痛みがわからないほど感覚が鈍ってしまっている!」と怒っていましたが、なるほど長い経験を積んできた政治家として、始めて言える言葉だと、私の胸に強く刺さりました。
何よりも昨夜、嬉しかったのは札幌からも、長野や博多からも始めてのFBでの友達が、祝いにきて頂いたことです。…
出版した竹書房の話しでは初刷8000冊でしたが、在庫は900冊だそうです。
是非一人でも多くの方に読んで欲しいと思います。