2014年1月8日水曜日

タイ紙が靖国参拝を痛烈批判 日弁連会長も談話

 
 タイの英字紙が社説で、安倍首相の靖国参拝を「無神経」とし、「中国、韓国の人々の気持ちを傷つける考えは毛頭ない」と発言したことを「誠意のない説明だ」と批判しました。
 また「中国や韓国の反発など何とも思っていないようだ」とも非難しました。
  当初安倍首相は、靖国参拝に反発するのは中国と韓国だけと考えていたふしがありますが、中・韓は勿論、米・ロ・欧州・国連が早々に批判のコメントを出して世界的に孤立しました。そしてついに頼み?の東南アジアからも批判の声があがりました。
 
 タイ紙の批判は、「無神経」「誠意のない」「相手国の反発など何とも思っていない」と安倍氏の人格に言及している点に特徴があります。
 相手の反発を十分に承知の上で参拝したあと、「相手の気持ちを傷つける考えは毛頭ない」と言い訳することの不当さは、浜矩子同志社大教授も指摘している通りですが、安倍首相にはこの種の理解しがたいというか理不尽な発言や誠意の感じられない発言が多すぎます。
     1月7日 「首相,憲法解釈変更へ論議を加速 靖国参拝は理解されると強調 
 参拝の言い訳会見のなかで、中韓両国に対して「真意を直接、誠意を持って説明したい」という発言もありましたが、あまりにも現実性のない話で聞く人を唖然とさせました。
 
 中韓両国との関係修復について、「常に対話のドアは開いている」というのも安倍氏の決まり文句です。しかしこの発言は、日本側に修復したいという思いがあることは全く伝わらない代わりに、「何か頼みたいことがあればいつでも言ってきたまえ」という上から目線の態度だけが伝わるものです。
 
 これらの言葉を何の躊躇もなく口にできるところが安倍氏の特徴で、それでは政治家にとって最も重要な言葉の適切さと重みのない人間ということになります。
 
 韓国の朴槿恵大統領は6日の記者会見で、朝鮮半島の植民地支配と侵略を認めた1995年の村山富市首相談話などがこの間の日韓関係の「基礎」だったとの認識を示しました。
 これは安倍氏が「対話のドアは開いている」というだけで、日本が今後も同談話の精神を堅持することを表明しないことに業を煮やしたともいえますが、安倍首相が就任早々に村山談話を否定しその後(反発に驚いて)発言を修正したことに対して、全く信を置いていないということの表明でもあります。
 言葉に信を置かれない人が、この先 国を代表して関係修復を行うのは無理なのではないでしょうか。
 
 直近の記者会見でも、TPPについて コメや砂糖など重要5項目について「攻めるべきは攻め、守るべきは守る」と、もう聞き飽きている全く信憑性のない言葉を吐き、その一方で「気合」や「勝利」、「攻め」といった威勢のいい言葉も飛び出しました。一体何に信を置いたらいいのかという思いです。
 
 タイ紙社説についての記事と朴大統領発言の記事に加えて、昨年12月26日に出された日弁連会長の「内閣総理大臣の靖国神社参拝に関する会長談話」を紹介します。
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安倍首相の靖国参拝「無神経」=タイ紙が痛烈批判
時事通信 2014年1月7日
【バンコク時事】タイの英字紙バンコク・ポストは7日付の社説で、安倍晋三首相が昨年12月末に靖国神社を参拝したことについて「無神経」と痛烈に批判、「必要のない攻撃的な行動で、あらゆる近隣諸国の神経を逆なでした」と主張した。
 社説は、首相が「中国、韓国の人々の気持ちを傷つける考えは毛頭ない」と発言したことに触れ、「誠意のない説明だ」と指摘。参拝すれば近隣諸国を傷つけ怒りを買うことは最初から分かっていたはずで「中国や韓国の反発など何とも思っていなかったようにみえる」と非難した。
 さらに首相が中韓両国について発言しながら、旧日本軍から大きな被害を受けた東南アジア諸国に言及しなかったことも問題点に挙げた。社説は、第2次大戦を生き抜いたタイ人の多くが「自国の過去の犯罪に無神経に敬意を払う安倍氏に衝撃を受けている」としている。
 
 
朴大統領、村山談話の堅持を要求 日韓関係の基礎と
西日本新聞 2014年01月06日
【ソウル共同】韓国の朴槿恵大統領は6日の記者会見で、朝鮮半島の植民地支配と侵略を認めた1995年の村山富市首相談話などがこの間の日韓関係の「基礎」だったとの認識を示し、日本が今後も同談話の精神を堅持することを求めた。
 
 朴氏はこれまで、歴史問題で日本が「誠意ある姿勢」を見せることが首脳会談開催など関係進展の前提になると表明してきたが、具体的な行動を提示したことはなかった。朴氏が日本に望む行動を初めて自分の言葉で示した形だ。
 
 
内閣総理大臣の靖国神社参拝に関する会長談話  
 
安倍晋三内閣総理大臣は、本日(12月26日)、広く報道される状況下において、靖国神社に参拝した。公用車を使用し、秘書官を同行し、内閣総理大臣の肩書で記帳及び献花をしたもので、このような形で行われた参拝は、内閣総理大臣として行われた公式参拝と評価せざるを得ず、誠に遺憾である。
 
日本国憲法は、平和主義とともに、制度的保障の一つとして政教分離の原則を掲げている。政教分離原則は、政治と宗教の厳格な分離を定めたものであって、宗教団体が国から特権を受け、又は政治上の権力を行使することを禁じ(憲法20条1項後段)、国及びその機関のいかなる宗教的活動を禁じ(同20条3項)、宗教上の組織若しくは団体に対しての公金その他の公の財産の支出を禁じている(同89条前段)。
 
国政の最高責任者である内閣総理大臣が、その地位にあるものとして一宗教法人である靖国神社に公式参拝することは、同神社を援助、助長、促進する効果をもたらすものとして、国の宗教活動の禁止を定めた憲法20条3項の精神に悖ることは明らかである。
 
内閣総理大臣は、憲法尊重擁護義務(憲法99条)を負い、政教分離等の原則をはじめとする日本国憲法を遵守し、さらにその実現に力を尽くすべき義務がある。しかるに、国政の最高責任者である内閣総理大臣が、政教分離原則に反して靖国神社に公式参拝することは、このような憲法上の各義務にも違反するものである。
 
当連合会は、憲法を擁護すべき立場にある法律家団体として、これまでも、内閣総理大臣の靖国神社参拝に関する憲法上の問題点を指摘してきたところであるが、憲法違反をもって問責されるべき内閣総理大臣の行為に対し、ここにあらためて遺憾の意を表明する。
2013年(平成25年)12月26日
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司