2013年7月31日水曜日

麻生副総理が「ナチスの手口を参考に」と講演

 麻生副総理29日夜都内で講演し、憲法改正をめぐり戦前ドイツのナチス政権時代に言及して、「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」と述べたことに対して、朝鮮日報が厳しく批判する社説を載せました

 麻生氏の講演を報じた共同通信の記事を読んでみても、「ワイマール憲法が、誰も気がつかない間にいつのまにか変わってい」という意味がまず不明で、それ以降の講演の論旨も理解することが出来ません。

 ワイマール憲法の変更についての経過は下記のとおりであって、とても「誰も気がつかない間に・・・・」というようなことではありません。

 19331月にヒットラーが首相になるとその日後に国会を解散させ選挙期間中に起きた国会放火事件を口実に、4000人以上ともいわれる共産党幹部を逮捕・拘束しました。 
 選挙後にはただちに憲法違反の「全権委任法」を、反対議員は拘束し欠席議員も出席とみなすという特例法もとに2/3以上の賛成を得て成立させました。
 その後ナチス党以外の全ての政党は解散させ、軍隊と警察を掌握し秘密警察(ゲシュタポ)を創設して首相就任後僅か年のうち完全な独裁体制作り上げました
     註.以上、2013年3月21日「ヒットラーが思い起こされると」 より抜粋

 朝鮮日報は、まずワイマール憲法の改変についての麻生氏の認識の誤りを正した上で、「第2次世界大戦終戦後、世界各国はヒトラーとナチスを肯定的に捉える言葉や行動をタブーとしてきた。(中略) 本当に歴史を振り返ることができれば、いかなる場合でもナチスの手口を参考になどと語るべきでないことくらいは分かるはずだ。それが政治指導者に求められる最低限の常識であり教養だ
と、極めて正当な主張を展開しています。

 以下に共同通信の記事と朝鮮日報の社説を紹介します。
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憲法改正でナチス引き合い/麻生副総理、都内の講演で
共同通信 2013年7月31日
 麻生太郎副総理兼財務相は29日夜、都内で講演し、憲法改正をめぐり戦前ドイツのナチス政権時代に言及する中で「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」と述べた。

 「けん騒の中で決めないでほしい」とし、憲法改正は静かな環境の中で議論すべきだと強調する文脈の中で発言したが、ナチス政権を引き合いに出す表現は議論を呼ぶ可能性もある。

 麻生氏は「護憲と叫んで平和がくると思ったら大間違いだ。改憲の目的は国家の安定と安寧。改憲は単なる手段だ」と強調した。その上で「騒々しい中で決めてほしくない。落ち着いて、われわれを取り巻く環境は何なのか、状況をよく見た世論の上に憲法改正は成し遂げられるべきだ。そうしないと間違ったものになりかねない」と指摘した。

 安倍晋三首相や閣僚による終戦記念日の靖国神社参拝を念頭に「国のために命を投げ出してくれた人に敬意と感謝の念を払わない方がおかしい」とし「静かにお参りすればいい。何も戦争に負けた日だけに行くことはない」と話した。 (共同通信)

【社説】ナチス式の憲法改正に言及した日本の極右政治家
朝鮮日報日本語版 2013年7月31日
 日本の麻生太郎・副総理兼財務相は先日行ったある講演で、日本における憲法改正の議論について「ドイツのワイマール憲法は(ナチスによって)誰も知らないうちに変えられていた」「この方法を参考にしてはどうか」という趣旨の発言をした。これは日本のメディアが29日に報じた。麻生氏は日本の戦犯らが合祀(ごうし)されている靖国神社への参拝問題についても「参拝をしないことがおかしなことであり、(普段から)静かにやればよい」との持論を展開している。

 ワイマール憲法とは、ドイツが第1次大戦で敗戦した直後に作り上げた同国で最初の民主主義憲法だ。この憲法は君主制を根幹としていたそれまでの帝国憲法を廃止し、国民主権の原則に基づく議院内閣制を採用していた。ところがナチスのヒトラーは1933年、ワイマール憲法に基づいてドイツ首相に選出されると、行政府が立法権を行使できる授権法を制定し、憲法そのものを有名無実化してしまった。このようにして絶対的な権力を手にしたヒトラーは、後に世界を戦争の悪夢に追い込んでしまったのだ。

 安倍首相をはじめとする自民党は、昨年12月の衆議院議員選挙と今年7月の参議院議員選挙でいずれも圧勝した。しかし日本の戦争放棄や交戦権の否定、軍隊保持の否定などを定める現在の平和憲法については今もなお改正することができず、非常に苦々しく思っているようだ。現在の平和憲法は日本の再武装を禁じているからだ。

 しかし自民党が改憲に向けて動き出すとしても、日本国内は決してこれを後押しするような状況ではない。まず自民党と連立政権を組む公明党が憲法改正に反対している。毎日新聞が先日行った世論調査によると、日本国民の51%が憲法改正に否定的な考えを持っていることも分かっている。韓国や中国などアジア諸国も、日本が平和憲法を改正して再武装することに反対している。

 このような状況の中、麻生氏が「ナチス方式の改憲」について言及した。麻生氏の発想は、平和憲法を見直すためにはヒトラーが使った超法規的な方法も辞さないというものだ。第2次世界大戦終戦後、世界各国はヒトラーとナチスを肯定的に捉える言葉や行動をタブーとしてきた。日本は第2次大戦でヒトラーのドイツと手を組み、ドイツがユダヤ人や欧州諸国に対して行った以上の虐殺や蛮行を、韓国や中国をはじめとするアジア各国に対して行った。このような国が本当に歴史を振り返ることができれば、いかなる場合でも「ナチスの手口を参考に」などと語るべきでないことくらいは分かるはずだ。それが政治指導者に求められる最低限の常識であり教養だ。

 首相経験者でもある麻生氏は現在の安倍政権でも実力者だ。麻生氏が今回のような発言を行い、そのことが今もなおニュースで報じられているようでは、今や日本の極右政治家たちに理性と常識は期待できないだろう。日本の政治家のレベルはなぜここまで落ち込んでしまったのか。また今の状況は今後も続くのだろうか。このままでは韓国をはじめとする隣国が、日本と向かい合って対北朝鮮外交や経済問題について話し合うことなどできるはずがない。「安倍の日本」は徐々に世界の普遍的価値と常識から懸け離れようとしているのだ。 
 
 

米、機密漏洩に最長136年の刑

 
 米軍法会議は30日、内部告発サイト「ウィキリークス」に外交公電などを提供した陸軍上等兵ブラッドリー・マニング被告(25)に対し、機密漏洩大半の罪状について有罪とする判決を言い渡しました。量刑言い渡しは早くても数週間後になる見通しで、最長で禁固136年の刑に処される可能性があります

 まさに自民党の石破幹事長がTVで語った改憲案の軍法会議を地で行く流れとなりました。
 記事では触れていませんが、ロシアに亡命を申請中の元中央情報局(CIA)職員エドワード・スノーデン容疑者(30)の話によれば、ブラッドリー・マニング被告は軍の収容先で極めて非人道的な扱いを受けていたということです。

 量刑の極端な重さといい被告の扱いにおける残虐さ=人権侵害といい、機密保護法や軍法会議制度の残酷さを如実に示すものです。
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機密漏えい、敵支援に当たらず=告発サイト暴露の兵に判決
     -米軍法会議
時事通信 2013年7月31日
 【ワシントン時事】米軍法会議は30日、内部告発サイト「ウィキリークス」に外交公電などを提供した陸軍上等兵ブラッドリー・マニング被告(25)に対し、防ちょう法違反などで大半の罪状について有罪とする判決を言い渡した。ただ、最高で終身刑と量刑が最も重い敵ほう助罪では無罪とした。
 審理では、同被告が国際テロ組織アルカイダの目に留まることを知りながら情報を流出させたかどうかが最大の焦点になったが、判決は、同被告をテロ組織に情報を流した「裏切者」だとする検察側の主張を退けた。
 ただ、マニング被告は22件の罪状のうち20件について有罪と認定され、最長で禁錮136年の刑に処される可能性がある。米国では、元中央情報局(CIA)職員エドワード・スノーデン容疑者(30)のリークを受け、機密情報の暴露がどこまで許されるかが議論になっており、軍法会議も注目を集めていた。量刑言い渡しは早くても数週間後になる見通し。
 同被告は、情報分析官としてイラクに駐留していた2010年、軍事情報や公電など計70万点以上を不正に入手し、ウィキリークスに提供。米史上、最大規模の機密漏えい事件となった。
 
 

韓国高裁、三菱重工にも賠償命令 戦争中の強制労働で

 太平洋戦争中に広島市内で強制労働させられて被曝したとして、韓国人元徴用工5人が三菱重工業に損害賠償を求めた訴訟の差し戻し控訴審で、韓国の高裁は30日、1人当たり8千万ウォン(約700万円)を支払うよう命じる判決を下しました。

 韓国の裁判所が日本企業に対し元徴用工への賠償を命じたのは、10日にソウル高裁が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に出した判決に続き2件目で、他にも同様の訴訟が4件争われています

 韓国最高裁が昨年5月、初めて個人の請求権は有効との判断を下し、2審判決を破棄して高裁に差し戻してから、裁判の流れが変わりました
 
 日本政府は、1965年の日韓基本条約締結時に日本が支払った賠償と日韓請求権協定で、日韓間の財産請求権の問題は完全に解決済みとする立場で、日本の裁判所もこれまで韓国人たち個人の請求を退けてきまし
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韓国、強制労働でまた賠償命令 住金に続き三菱重工に
産経新聞 2013.7.30
 太平洋戦争中に広島市の工場で強制労働させられ被爆したとして、韓国人元徴用工5人が三菱重工業に損害賠償を求めた訴訟の差し戻し控訴審で、韓国の釜山高裁は30日、1人当たり8000万ウォン(約700万円)を支払うよう命じる判決を言い渡した。

 韓国の裁判所が日本企業に対し元徴用工への賠償を命じたのは、10日にソウル高裁が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に出した判決に続き2件目。戦後補償問題で日本企業に賠償を命じる流れが定着し、日韓の外交懸案となる恐れがある。
 三菱重工は最高裁に上告する方針。

 朴鍾薫裁判長は判決で、旧三菱重工による強制労働は「当時の日本政府の朝鮮半島に対する不法な植民地支配や侵略戦争の遂行に積極的に加わった人道に反する不法行為だ」と指摘した。(共同)

強制徴用、新日鉄住金に賠償命令…ソウル高裁 
読売新聞 2013年7月10日
【ソウル=豊浦潤一】第2次世界大戦中に日本の植民地統治を受けていた朝鮮から日本に強制徴用されたとして韓国人4人が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に損害賠償を求めた訴訟の差し戻し控訴審で、ソウル高裁は10日、同社に損害賠償の支払いを求める判決を言い渡した。
 韓国で個人の対日請求権を認め、日本企業に賠償を命じる判決が出るのは初めて。 
 同訴訟をめぐっては、韓国最高裁が昨年5月、個人の請求権は有効との初めての判断を下し、原告の請求を棄却した2審判決を破棄、同高裁に差し戻していた。 
 日本政府は1965年の日韓請求権協定により個人の請求権は消滅したとの立場で、日本の裁判所は韓国人らの請求を退けてきた。 
 
 

2013年7月30日火曜日

毎日・産経新聞の世論調査 集団的自衛権行使や改憲は少数

 
 毎日新聞の世論調査によると、集団的自衛権行使できるようにした方がいいと「思う」36%で、「思わない」51%大きくりました。
 憲法9条については「改正して、自衛隊の役割や限界を明記すべきだ」が36%でした。これは自衛隊に憲法上の市民権を与えようということであって、「改正して、自衛隊を他国同様の『国防軍』にすべきだ」(=20%)とは内容的に全く異なります(合わせて56%というような言い方に意味はありません)。
 そして「一番に取り組んで欲しい課題」に 首相がこだわる「憲法改正」をあげた人は僅かに3%でした。政府・自民党はよくよく心すべきことです。
 なお内閣支持率は前月と同様55%でした。

 同時期に行われた産経新聞社とFNNの合同世論調査では、消費税引き上げに反対が55・8%賛成39・5%を大きく上回り、1年前と比べて差が広がりました。
 また「アベノミクス」への期待は61・2%と高いのですが、景気回復を「実感していない」人83・2%に達しており、アベノミクスの実態を示唆する結果になっています。
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(毎日新聞)世論調査: 集団的自衛権「行使容認に反対」51%
毎日新聞 2013年7月29日
◇「景気優先を」35%
 毎日新聞は27、28両日に全国世論調査を実施した。現在は憲法解釈上行使できないとされる集団的自衛権について、行使できるようにした方がいいと「思わない」とした人が51%に達し、「思う」の36%を大きく上回った。一方で、安倍晋三首相に一番に取り組んでほしい国内の課題は「景気回復」が35%と最多で、首相がこだわる「憲法改正」は3%にとどまった。首相は改憲や集団的自衛権の行使容認など保守色の強い政策に意欲を示しているが、世論の関心は経済に集中している。

 集団的自衛権は、自国と密接な関係にある国が攻撃を受けた場合、自国に対する攻撃とみなして実力で阻止する権利。首相は27日、外遊先のマニラで行った記者会見でも「集団的自衛権の行使に関する検討を進めていく」と改めて意欲を示している。
 調査では、集団的自衛権を行使できるようにした方がいいと「思う」と答えた人は、自民支持層でも43%にとどまり、「思わない」の45%と拮抗(きっこう)した。連立政権を組む公明支持層では「思わない」が45%と「思う」の35%を上回った。

 憲法9条については、「改正して、自衛隊の役割や限界を明記すべきだ」が36%、「改正して、自衛隊を他国同様の『国防軍』にすべきだ」が20%と、双方を合計した「改正派」が56%に達し、「改正に反対」の34%を上回った。
 ただ、改正派の中では「国防軍」よりも「自衛隊の役割や限界の明記」への支持が多い。集団的自衛権の行使容認に反対が多いこととあわせ、自衛隊の存在を認めつつ、役割拡大には慎重な世論がうかがえる。「国防軍」は自民党が憲法改正草案で掲げ、「役割の明記」は公明党が言及しており、連立与党内での議論にも影響しそうだ。

 首相に取り組んでほしい政策は「景気回復」に続き、「社会保障」(16%)、「財政再建」(14%)、「東日本大震災からの復興」(13%)、「原発・エネルギー政策」(10%)などの順。「教育」(5%)や「憲法改正」は少数だった。
 開催の見通しが立っていない中国、韓国との首脳会談については「早期の会談を目指すべきだ」が47%と、「こだわる必要はない」の45%とほぼ並んだ。
 内閣支持率は55%、不支持率は25%で、ともに前回調査と同率だった。政党支持率は自民党35%、民主党は5%、日本維新の会が7%、公明党は5%、みんなの党は4%で、自民の「1強状態」が続いている。【小山由宇】
◇調査の方法
 7月27、28日の2日間、コンピューターで無作為に数字を組み合わせて作った電話番号に、調査員が電話をかけるRDS法で調査した。福島第1原発事故で帰還困難区域などに指定されている市町村の電話番号は除いた。有権者のいる1521世帯から929人の回答を得た。回答率は61%。

強まる消費増税反対 首相の最終判断にも影響か 産経FNN世論調査
産経新聞 2013/07/29
 産経新聞社とFNNの合同世論調査で、来年4月の消費税率8%への引き上げについて反対(55・8%)が賛成(39・5%)を上回り、1年前と比べて反対と賛成の差が広がった。安倍晋三首相は10月ごろに増税の是非を決断するが、政府内にも増税への慎重論が台頭する中、世論に広がる増税反対の声は首相の最終決断に少なからず影響を与えそうだ。
 菅義偉(すが・よしひで)官房長官は29日の記者会見で、増税時期の最終判断について「さまざまな意見を聞きながら首相が責任をもって判断していく」と述べた。

 民主党政権だった昨年8月、社会保障・税一体改革関連法が成立した。消費税については、来年4月に8%、平成27年10月に10%に引き上げるとする内容だが、経済の状況次第で執行を停止するなどの「景気条項」も盛り込まれている。

 昨年9月の合同世論調査では、関連法成立を「評価する」との回答が48・1%に上り、「評価しない」の47・8%をわずかに上回っていた。

 今回の世論調査では、安倍政権の経済政策「アベノミクス」への期待は61・2%と、国民の期待は相変わらず高い。一方で、景気回復を「実感していない」という人が83・2%に達しており、アベノミクス効果を実感できない中での増税への抵抗が強まっているとみられる。
 
 

TPPのISD条項は憲法違反

 29日、TPPに反対する弁護士ネットワーク立ち上がりました。共同代表は全日弁連会長の宇都宮健児弁護士ほかです。

 ISD条項による仲裁国外の裁判所で行われることは、日本国憲法第76条1項「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」規定に反します。従って例えば憲法76条1項に後に『ただし、外国投資家が投資家国際私設法廷へ提訴する場合は、この限りではない』とでも付記する憲法改正行わない限り、憲法違反の協定になります。
 このISD条項が憲法違反とする主張は以前から弁護士などから上がっていました。しかし指摘されれば小学生にも理解できるこうした事実を、何故かマスメディアは一切報じてきませんでした。

 それに加えて、2011ドイツの国会が福島原発事故を受けて脱原発を決めたことに対して、スウェーデンの電力会社が38億ドル(約4000億円)の損害賠償を求めて提訴したり、韓国日本のようなエコカー制度を導入しようとすると、米国自動車業界韓米FTAを盾にして訴えを起こすなどして、他国の企業の株主たちが公然と国会の立法機能に干渉・妨害してくるということが現実に起きています。
 これは「国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と国民主権原理を規定した憲法41条に反するものです。

 もはや正義の旗を巻いたマスメディアには何も期待できないなかで、弁護士ネットワークの活躍によってそうした意識が急速に国民に広がって、TPP脱退の方向に民意を集中させて欲しいものです。
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ISDは憲法違反 弁護士が反TPPでネットワーク
JAコム(農政・農業ニュース)2013年7月29日
 TPP(環太平洋連携協定)に反対する弁護士ネットワークが7月29日に立ち上がり同日記者会見をした。共同代表は宇都宮健児氏、岩月浩二氏、伊藤正之氏が就任。弁護士318人が参加している。投資家が国家を訴えることができるISD条項がTPPに盛り込まれようしているが、弁護士グループはこれは憲法違反だとの主張を広く展開し、農業や医療などの分野でTPP反対運動を展開しているさまざなグループと連携して交渉からの即時脱退をめざす。
 
◆76条の司法権を侵害
記者会見に出席したネットワーク代表ら 宇都宮氏は「日本国憲法では日本国内で裁判することになっている。しかし、ISD条項による仲裁は国外で裁判を行うことになっている」と指摘。日本国憲法第76条1項では「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」と規定している。しかし、宇都宮氏が指摘するように、韓米FTAや北米自由貿易協定(NAFTA)に盛り込まれて活発に提訴が行われているISD条項による裁判はワシントンにある世界銀行傘下の国際仲裁機関など、提訴された国以外で行われている。
 この問題に早くから警鐘を鳴らしてきた名古屋市の弁護士・岩月氏は、かりに投資家による国家の提訴を認めるISD条項を締結するなら、「司法権を定めた憲法76条1項に後に『ただし、外国投資家が投資家国際私設法廷へ提訴する場合は、この限りではない』とでも付記する改正をしなければならない」と強調した。
 「国際私設法廷」としている意味について、岩月氏はISD条項で提訴された場合、「投資家と提訴された国家がその案件限りで裁判官を選ぶ仕組みだから」と、その問題点を強調した。
 
◆政策を萎縮させる
 弁護士ネットワークは「TPP問題が農業の関税問題に矮小化されている」として、日本の法律、制度にも大きな影響を及ぼすISD条項について広く訴える必要があるとする。 ISD条項について韓国法務省は、あらゆる政府や自治体の措置(条例や立法)が提訴の対象になると見解を発表している。
 たとえば、2011年、ドイツが福島原発事故を受けて脱原発を決めたことに対して、スウェーデンの電力会社が38億ドル(約4000億円)の損害賠償を求めて提訴した。また、韓国は日本のようなエコカー制度を導入しようとしたが、米国自動車業界から韓米FTAに反すると訴え、韓国政府は制度導入を見合わせている。
 このように一国の基本的な政策決定にまで影響を及ぼすほか、韓国のエコカー制度をめぐる対応のように、自ら制度や政策を引っ込めてしまう「萎縮効果」がISD条項にはある。
 
 こうしたことからISD条項は「国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と国民主権原理を規定した憲法41条にも反する疑いが強いとして、ISD条項は「日本国憲法の根本的改変にも等しい事態を招く」と強調している。共同代表のひとり、伊澤正之氏は「TPPの本質は米国投資家の保護が本質」と批判。岩月氏は「国家が投資家に賠償金を支払って紛争を解決するにすぎないというが、ドイツの提訴例のように4000億円も支払って国策を維持していけるのか。そもそも投資家が政府を引っ張り出して提訴すること自体が異常な構造だ」と指摘した。
 
 現在、北海道から沖縄まで各地で弁護士がTPP交渉について勉強会を開いており、今後は業界団体とも連携して法律面からTPP反対運動をサポートするほか、国会議員にも働きかけ、当面は情報公開を求めるとともに交渉から即時脱退を訴えていく方針だ。
 

2013年7月29日月曜日

TPPは日本の医療と皆保険制度を崩壊させる

 
 28日の東京新聞に「TPPは過疎地医療を崩壊させる」と題した記事が掲載されました。
 
 記事の内容はそのまま日本の医療全体に及ぶもので,、その大筋を要約すると次の3つの流れにまとめられます。

「前提:(アメリカの要求により)流通量に比例して医薬品を低価格化する制度廃止、新薬の価格を一定期間後も下げない
薬価が上昇する
国は薬価と診療報酬で構成される医療費負担抑制するため診療報酬を引き下げる
病院経営を直撃し、悪化させる
⇒病院は利益の追求に奔り、公的医療保険の適用外で独自に値段を決められる自由診療に傾く
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「病院が儲からないことはやらなくなる
予防医療の動機づけがなくなる
⇒結果として病気が増える
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「前提:(アメリカの要求により)混合医療が全面解禁される。あるいは混合診療の対象が拡大する」
医療費の公的負担を抑えたい国は新しい治療法や医薬品を公的保険の適用外のままにする
国民皆保険制度が維持できていても、またTPPで米国が直接 公的医療保険の廃止を求めなくても、皆保険制度は形骸化する
  ②公的医療保険の下で診療していた病院の経営は成り立たなくなる
    ③国民は高額医療費の負担のため、民間の保険に入る必要に迫られる支払い能力で医療格差が拡大していく

    結論  TPPによって米国の医療界の実態に日本が近づいていく

 以下に記事を抜粋します。全文は下記のURLからアクセスして下さい。
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「TPPは過疎地医療を崩壊させる」 現場の医師たちが警鐘
東京新聞「こちら特報部」2013年7月28日

 日本が初参加した環太平洋連携協定(TPP)のマレーシアでの会合が二十五日、終了した。交渉内容はベールに包まれているが、農林水産業だけではなく、懸念は医薬品や医療機器を扱う「知的財産権」などに絡んだ医療にも漂っている。とりわけ、営利主義と対極の過疎地医療に取り組んでいる医師たちは「TPPは医療崩壊を加速させる」と危機感を募らせる。現場の医師たちに話を聞いた。 (荒井六貴)
   (中 略 ここでは平均寿命が男女とも日本一になった長野県の医師たちの活躍 「長野モデル」を紹介)
 高齢化による医療費増大を抑えたい国にとっても「優等生」だが、TPPはこうした「長野モデル」を崩しかねない。
 理由を佐久総合病院(同県佐久市)の色平(いろひら)哲郎医師(53)は、こう説明した。「医療機関が営利化すると、もうからないことはやらなくなる。予防するという動機づけも働かなくなってしまう」
    (中 略)
 地域医療を支える大きな柱が国民皆保険制度だ。「皆保険が比較的、質の高い医療をいつでも、誰でも、どこでも受けられるようにしている。医者は患者の懐具合ではなく、症状に応じた治療に専念できる」
    (中 略)
薬価は上昇 自由診療拡大
 米国通商代表部の二〇一三年版「外国貿易障壁報告書」によると、米国は日本に対して、流通量に比例して医薬品を低価格化する制度の廃止と、新薬の価格を一定期間後も下げないルールの恒久化を求めている。
 TPPでこうした要求が実現されれば、薬価は上昇。そうなれば、国は薬価と診療報酬で構成される医療費負担の抑制のために、診療報酬を引き下げるとみられる。これは病院経営を直撃する。
 その場合、病院が利潤確保のため、公的医療保険の適用外で独自に値段を決められる自由診療に傾くのは当然の流れだ。

 日本医師会の中川俊男副会長は「医薬品や医療機器のメーカーの利潤追求の姿勢に加えて、本体の医療機関にまで営利化が忍び寄っている。TPPはその端緒になる」と危機感を募らす。
 自由診療と保険診療を組み合わせた混合診療は現在、先進医療などに限って認められている。だが、TPPにより対象が拡大されかねない。

 混合診療が全面解禁されれば、国民皆保険制度が維持できていても、医療費の公的負担を抑えたい国は新しい治療法や医薬品を公的保険の適用外のままにしかねない。
 支援ロボットによる前立腺がん手術は従来、保険適用外で百四十万円ほど。昨年四月から保険適用になり、約十万円になった。だが、こうしたケースも減ってしまう。

 保険対象の拡大がなくなれば、患者は高額医療費の負担のため、民間の保険をかける必要に迫られる。支払い能力で医療格差が拡大していく。
 中川副会長は「TPPで米国が直接、公的医療保険の廃止を求めなくても、皆保険制度は形骸化する。豪華な病院が都市にできる一方、公的医療保険の下で診療していた病院の経営は成り立たなくなる」と懸念する。

<国民皆保険制度> 日本に住民登録する人びとが何らかの公的医療保険に加入し、医療給付を受けられる制度。1958年に国民健康保険法が制定され、61年に全国の市町村で国民健康保険事業が始まった。現在、患者負担は1~3割になっている。2010年度の国民医療費は37・4兆円で、うち国と地方の負担分が14・2兆円を占めている。

<デスクメモ> 腎臓を病んだ友人を病院に運んだ。仕事を失い、国民健康保険も滞納して、保険証がない。だから悪化しても我慢していた。実費は仲間たちで負担した。米国では16%が無保険者という。日本でも目立ってきた。TPPは現状をもっとひどくするだろう。政府がいう「日米が共有する価値観」の一部か。 (牧)
 
 

7月例会の報告

 
28日、今月は定例日が参院選の投票日と重なったため1週間後ろにずらして、7月の例会を開きました。

 と き  28日(日) 13:30~15:30 
 ところ  湯沢公民館 階 「会議室」 

1.連続学習「中高生のための憲法教室」(第3回)
 (「中高生のための憲法教室」伊藤真著 岩波ジュニア新書 820円09/1/20)  
  第2限 自分の幸せを自分で決めるとは その2 (テキスト38~50ページ)

 テキストをベースにしつつ、「解剖・自民党改憲案」、「自民党の改憲草案」の関係箇所を随時参照しながら議論を進めました。(以下では「自民党改憲草案」を「自民案」と略称します)
 話題の大半は、現憲法の「公共の福祉」と自民案の「公益及び公の秩序」の違いに集中しました。以下に主な意見・感想を紹介します。(順不同)

・「公共の福祉」は一人ひとりの人権を最優先することを基本として、その人権と人権の衝突や矛盾を調整するのに用いる原理であるのに対して、「公益及び公の秩序」は国や自治体などの利益を人権に優先させるもので全く異なる。
・権利=rightには「正しい」という意味もあり、西周はそれを踏まえて「権理」と訳した。
・自分の権利(=利益)だけを一方的に主張するのは、相手にも同じ人権・権利があるのだから間違っている。
・「公共」が「人々」を意味するのに対して、「公」は国とか君主を意味する。自民案は現憲法と全く目線が違う。
・自民案は「公共の福祉」と似通った言葉の響きを利用して「公益及び公の秩序」にすり替えようとしている
・自民案は多数決では奪えない人権を「公益及び公の秩序」によって奪おうとするもの。
・自民案は権利よりも義務を優先させるもの。
・自民案が21条(表現の自由)に第2項を追加して、「公益及び公の秩序」を害するものは認めない、とするのは露骨で悪質。
・改憲されて国防軍になれば国民の人権も当然制限され、軍法会議で死刑や懲役300年もあり得ると、石破幹事長が話したことが現実となる。単に自衛隊の改称にとどまるものではない。
・現憲法は「積極的非暴力平和主義」をうたい「平和的生存権」を保障した先進的なもの。今後世界が進むべき方向を示している。
・軍隊を持って「普通の国」になろうというのは大きな間違い。

 (次回は テキスト 第3限 「自由と義務について・・・」 P51~63 です)

2.相談・検討事項
(1) 町との懇談会を振り返って(報告)
日時・場所 :  6月18日(火)9:00~10:00 湯沢町役場2階応接室
町側出席者 上村町長、山本副町長、清水教育長、関総務課長、南雲班長(敬称略)  当会側出席者 笛木、佐藤(佳)、森下、崔
 ⅰ.湯沢町非核平和都市宣言以降3ヵ年の取り組みを振り返って
    今後も非核平和に向けて町側と相互に連携・協力していくことを確認しました。
 ⅱ.町の2013年の非核平和取り組みについて
    冒頭、町長から「原爆にしろ原発にしろ核による被害は断然なくさなければならないと思っている。原発再稼動反対の姿勢はこれからも貫いていく」との発言があり、以下の各項について懇談しました。総じて町側の平和都市のあり方への真摯さと会に対する厚意を感じさせるものでした。
    以下では町側の回答要旨に限定して記します。
①広島平和記念式典への湯沢中学からの生徒派遣を是非
     (町):これまでどおり被曝体験者の講演会を通じて、湯沢中学の平和教育を進めていきたい。少数者(代表)の派遣は考えていない。
   ②町の成人式での非核平和企画の継続と一層の充実を
     (町):詳細は公募による実行委員会に任せたい。憲法のリーフレットは昨年同様配布する考えでいる。
   ③パネル「ヒロシマ・ナガサキ原爆と人間」の効果的な活用を引き続き
     (町):昨年同様湯沢公民館で8月1ヶ月間の展示を考えている。
   ④観光と非核平和取り組みの相互協力で特色ある取り組みの展開を
     (町):観光リーフレットなどに「非核平和宣言のまち」のアピールを盛り込むことは可能だと思うので、観光協会に話してみる。
 ⅲ.湯沢公民館への指定管理者制度適用をめぐる問題について
     (町):平成26年4月からの適用は延期し、町民の皆さんの十分な理解を得て進めたい。不安や危惧があれば町民懇談会のなかで出していただけば、納得が得られるように説明したい。
(2) 8月特別企画の取り組みについて
 8月25日(日)13:30~15:30 湯沢公民館 3階 会議室1,2
 桂南なん師匠の「落語」(2席 合計50分)を中心に、残りの1時間いついては「読み聞かせ」その他の催しを行います。(会員の岡崎さんの友人ということから実現に至ったものです)
 参加を呼びかけるためのビラを作成し、当日は会場でのカンパも行います(師匠への謝礼に使います)。
 8月7日(水)13:30にもう一度集まって、会場準備の確認や役割分担、配布ビラ分配を行います。
(3) 「人権・平和そして憲法-坂東克彦さんを囲む会」(仮称)の企画について
   新潟市在住の坂東克彦弁護士をお招きして開きます。時期は9月、11月またはその先などが考えられます(未定)。
    追記 同弁護士は、新潟水俣病第一次訴訟の幹事長、第二次訴訟の弁護団長を務めたほか、湯沢に関しては昭和40年前後の「建設省労組北陸地本合理化反対闘争」の弁護をして「人事院の解雇処分取消」を勝ち取りました。