2013年12月21日土曜日

今度は「教科書に政府見解明記」を実行

 文科省は11月13日に現行の小中高校の社会科教科書の検定基準を見直し、歴史や領土問題などについて政府の統一見解を踏まえた記述にするよう求める規定を盛り込むことを決めました。
 20日、教科用図書検定調査審議会はその改正案を了承しました。審議会がこんなに迅速に対応したのは、来年1月に検定基準を改定し、来春申請が始まる中学教科書検定に間に合うようにするためです。
 
 この13日にも中教審地方教育行政の最終的な権限を自治体の首長に移すという、戦前の軍国主義教育への反省から生まれた戦後の教育委員会制度の、根幹るがすような改革案を文科相に答申したばかりです。
 
 安倍氏は第一次安倍内閣のときにも、教育基本法と教育三法を矢継ぎ早に改定し、学校の運営を職員会議中心から校長専制に変えました。それ以降学校における職員会議が極めて暗い雰囲気になったことが知られています。
 
 世の中には「政府の統一見解こそ最高のもの」と広言した有名人もいますが、政府見解が政治的なものであって、学問的真理などとは無縁のものであることは論をまちません。そうしたものを強制的に教科書に盛り込むことを一内閣で決めて、それをやにわに実行してしまうというところが安倍内閣の怖さです。
 何かものに取り憑かれたような人によって強制的な政治が行われることの怖さです。
 
 11月14日付の東京新聞の記事も併せて紹介します。
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教科書に政府見解明記 検定基準の改正案 
日経新聞 2013年12月20日
 文部科学省の教科用図書検定調査審議会は20日、歴史問題などの教科書の記述に「政府見解」を明記することなどを求めた教科書検定基準の改正案を了承した。文科省は来年1月に検定基準を改正。来年度に申請を受け付ける中学校教科書の検定から適用される。
 同審議会は、文科省が11月に公表した「教科書改革実行プラン」を受けて対応を協議していた。
 改正案は(1)政府の統一見解や最高裁の判例がある場合はそれらに基づいた記述をする(2)未確定な事象を記述する場合は特定の事柄を強調し過ぎない(3)通説的な見解がない数字などを記述する場合は、通説的見解がないことを明示する―としている。
 
 
教科書に政府見解 文科省 検定基準に明記へ 
東京新聞 2013年11月14日
 文部科学省は、現行の小中高校の社会科教科書の検定基準を見直し、歴史や領土問題について、政府の統一見解を踏まえた記述にするよう求める規定を盛り込むことを決めた。文科省は、よりバランスの取れた記載にすると強調するが、中国や韓国の反発が強まる可能性もある。来春申請が始まる中学教科書検定に間に合うよう、近く教科用図書検定調査審議会に諮り、早ければ来年一月の改定を目指す。 (加藤文)
 
 新たに盛り込まれるのは▽政府の統一見解や確定判決がある場合、それらを踏まえた記述にする▽戦時中の歴史的な事象について未確定、あるいは諸説がある場合、特定の事柄や見解を強調することなく、バランスよく記述する-の二点。
 
 犠牲者数が諸説ある南京事件などについては、特定の人数だけではなく諸説があることの記述を求めたり従軍慰安婦問題では、戦後補償が政府間で法的に解決済みとの政府見解を盛り込むことを求めたりするとみられる。
 
 今年三月に公表された高校教科書検定でも、日本史Aの南京事件で「少なくとも十数万人が殺害された」と記述した申請教科書に検定意見が付き、「犠牲者数については約二十万人や十数万人、また、それ以下など諸説がある」と修正して合格した。
 
 文科省の担当者は「教科書会社側に政府見解だけの記載を求めるものではなく、これまでも検定で指摘してきた内容だが、検定基準に盛り込むことで、今まで以上にバランスの取れた教科書にできる」と説明している。
 
 一方、近現代史の記述で中国や韓国への配慮を求める「近隣諸国条項」について、自民党は昨年の衆院選で見直しを公約に掲げたが、文科省は当面の検討課題として今回は見直さないことにした。
 
 また、沖縄県竹富町教育委員会が、八重山採択地区協議会(沖縄県石垣市、竹富町、与那国町)の決定と異なる中学公民教科書を使用している問題について、教科書採択のルールを明確化するため、来年の通常国会に改正法案を提出することを決めた。
 
 <教科書検定> 教科書会社が編集した原稿段階の教科書の記述が客観的かどうかや、適切な教育的配慮がなされているかを文部科学省が審査する制度。「学習指導要領に則しているか」「範囲や表現は検定基準に基づいて適切か」などを教科書検定審議会に諮って審査し、合格しないと教科書として認められない。教科書会社は指摘された「検定意見」に沿って内容を修正、合格した教科書は市町村教育委員会などの採択を経て翌年春から使用される。検定対象は年により小学校、中学校、高校と異なる。