2013年10月20日日曜日

秘密保護法案 憲法学者反対声明 近く発表

 憲法・メディア法学者24人が呼び掛け人となり、特定秘密保護法案に反対する声明をまとめました。
 賛同者を募り近く声明を発表するということですが、声明は、戦前の秘密保護法制が言論統制の柱になったと指摘し、裁判官も秘密自体を確認できないため、適正な刑事手続きが保障されないなどとしているということです。
 
 また刑事法研究者123人も同様の声明を準備しており、法律専門家の間で反対の声が広がっています。

 新潟日報の社説「秘密保護法案 修正でも懸念は消えない」と一緒に紹介します。
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秘密保護法案 人権脅かす 憲法学者24人反対声明
東京新聞 2013年10月19日
 憲法・メディア法学者二十四人が呼び掛け人となり、特定秘密保護法案に反対する声明をまとめた。賛同者を募り、近く発表する。刑事法研究者百二十三人も同様の声明を準備している。政府は来週の閣議で法案を決定したい考えだが、法律専門家の間で反対の声が広がっている。 (金杉貴雄)

 憲法・メディア法学者の反対声明の呼び掛け人には奥平康弘東京大名誉教授をはじめ、山内敏弘一橋大名誉教授、石村善治福岡大名誉教授、森英樹名古屋大名誉教授、田島泰彦上智大教授ら著名な研究者が名を連ねた。
 声明は、特定秘密保護法案について「重要で広範な国の情報が行政の一存で指定されることで、国民の知る権利が侵害される」と批判。秘密保護の強化は集団的自衛権の行使容認や自民党草案による改憲の流れと一体と分析し、「基本的人権、国民主権、平和主義の憲法の基本原理を踏みにじる危険性が高い」と反対の理由を説明している。
 刑事法研究者の声明は日本刑法学会元理事長の村井敏邦一橋大名誉教授ら二十三人が呼び掛け人となり、賛同者を募った。

 声明は、戦前の秘密保護法制が言論統制の柱になったと指摘。裁判官も秘密自体を確認できないため、適正な刑事手続きが保障されないとして「基本的人権の尊重などの憲法の基本原理を脅かし、刑事法の人権保障も侵害する恐れが大きい」と指摘している。


社説 秘密保護法案 修正でも懸念は消えない
新潟日報 2013年10月19日
 特定秘密保護法案の修正が政府と公明党の間で合意した。政府は22日にも閣議決定し今国会での成立を目指す構えだ。
 政府の秘密を漏らす行為に対する罰則強化などを内容とし、国家による情報隠し、国民の知る権利の侵害などが懸念されている法案だ。
 部分的に修正がなされたとはいえ、法案の基本的問題点が解消されたとは言えない。
 国による過度な情報規制は民主主義の根幹も揺るがしかねない。法の乱用をどう防ぐのか。国会での論議を通じ、明確かつ厳しい運用のルールが確立されることが必要だ。与党の絶対多数で、成立を急ぐことがあってはならない。

 秘密保護法案は、防衛や外交、テロ活動防止に関する事項を「特定秘密」に指定し、それらを漏らす行為や不正に秘密を取得する行為に対し、最長で懲役10年の罰則を科すことなどが主な内容だ。
 現行の自衛隊法や国家公務員法による罰則より重く、秘密を扱う公務員や取材活動を委縮させ、適切な情報公開の原則に逆行しかねないとの懸念も指摘されていた。

 今回の修正は、法案成立を急ぐ政府が、こうした懸念に基づく公明党の要求に譲歩する形で行われた。
 国民の「知る権利」や「報道・取材の自由」を明記、「著しく不当な方法」でない限り罰則の対象としないことなどが盛り込まれた。
 だが、「国の安全保障に著しい影響を与える」という特定秘密の基準があいまいで、広範な情報が秘密指定されかねないという問題は残されたままだ。

 修正案では秘密指定の運用基準策定に当たって「有識者の意見を聴かなければならない」と定めている。だが、どのような「有識者」がどのように意見を述べるのかは不明だ。また、その意見が「聴くだけ」に終わる恐れもある。
 政府による恣意(しい)的運用を避けるためには、裁判所など、公的機関による秘密指定の判断が必要だろう。

 また、国会や裁判所などへの秘密の提供についても「できる」という表現にとどまり、義務とはされていない。将来の秘密解除についても、秘密指定の延長は内閣の判断に任されている。歴史の検証を妨げるものと言わざるを得ない。
 知る権利への配慮も「努力目標」の性格が強い。正当な取材とは見なされない「著しく不当な方法」がどのような行為か明確でなく、拡大解釈される危険もある。
 また、罰則からの除外が出版・報道業務に限られているため、市民運動やフリーのジャーナリストの活動に制約を与える可能性も強い。
 修正は小手先にすぎず「知らしむべからず、寄らしむべし」を図る意図は変わっていない。

 法案は、米軍との共同活動を念頭に置いた日本版「国家安全保障会議(NSC)」創設や集団的自衛権行使の検討と深く関連している。
 国家機密を強調し、国民の目を情報から遠ざけようという行為の危うさを見極めなければならない。