2013年9月20日金曜日

集団的自衛権の行使へ官邸は前のめり

 高見沢内閣官房副長官補は19日、自民党の安全保障問題に関する合同会議で、集団的自衛権の行使容認に関して「日本の防衛を考えるとき、自衛隊が地球の反対側に絶対に行かないとは言えない」という考えを示しました。

 これはいずれ有識者懇談会から答申される、「自衛隊の海外派遣に地理的制限は設けるべきではないいう主旨に、いまから平仄を合わせておこうという考えにほかなりません。
 それにしても憲法9条から完全に逸脱した考え方を、よくも内閣官房副長官補の立場で堂々と表明したものです。勿論近海なら容認されるというものでもありません。

 国民は、といえば、最近各紙が行った「集団的自衛権行使」についての世論調査では、産経新聞を除いて大差で「反対」となっています。(読売新聞は未実施?)
毎日新聞   容認に賛成 36%  反対 51%
朝日新聞   容認に賛成 27%  反対 59%
日経新聞   容認に賛成 32%  反対 54%
産経FNN    容認に賛成 62%  反対 不明

 安倍首相はまた「積極的平和主義」という新しい言葉を打ち出しました。意味は良く分からないものの、集団的自衛権行使容認に向けた地ならしであることは明かです。
 国のトップにいる者が、何のためらいもなくそうした前のめりの言動を行える点は、かつてのいまわしい歴史を思い出させて脅威です。

 自民党内からも当然に懸念する声は上がっています。
 自民党の皆さんには今度こそTPPのように無様なことにならないように、しっかりと主張を貫き 極右への軌道を修正して欲しいものです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
集団的自衛権 官邸前のめり 「地球の反対側派遣も」
東京新聞 2013年9月20日
 高見沢将林(のぶしげ)内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)は十九日、自民党の安全保障問題に関する合同会議で、集団的自衛権の行使容認に関して「日本の防衛を考えるとき、自衛隊が地球の反対側に絶対に行かないとは言えない」と、自衛隊の海外派遣に地理的制限は設けるべきではないとの考えを示した。

 集団的自衛権は同盟国など密接な関係にある国が攻撃を受けた場合、自国への攻撃とみなして反撃する権利。歴代政権は憲法上、行使できないとの立場をとってきたが、安倍晋三首相は行使容認に意欲を示し、有識者懇談会が議論を始めた。
 第一次安倍内閣の時に有識者懇談会がまとめた報告では、行使を認めるケースとして、公海上で攻撃を受けた米艦艇の防護や米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃を挙げた。
 内閣官房副長官補は内閣官房に三人置かれそれぞれ内政、外交と安全保障・危機管理を担当。正副官房長官や内閣危機管理監らを補佐する。高見沢氏は防衛省防衛研究所長から今年七月に就任した。

◆与党内から懸念の声
 安倍晋三首相が意欲を示す集団的自衛権の行使容認に関し、自民、公明両党は十九日、それぞれ党内の議論を始めた。公明党からは結論ありきで解釈変更を急ぐ政府の有識者懇談会への質問が続出した。自民党内からも性急に議論を進める首相官邸に対する懸念の声が上がった。 (後藤孝好、生島章弘)

 自民党本部で開かれた会議で、務台俊介衆院議員(長野2区)は「長野県松本市議会では、集団的自衛権の解釈変更はすべきではないという意見書が出ている」と指摘。世論調査では解釈改憲への反対が多数を占め、官邸のやり方に国民の理解が得られていない実情を紹介した。
 政府高官の「自衛隊が地球の反対側に行かないとは言えない」との発言に対しては、岩屋毅・安全保障調査会長が「(行使を容認すれば)自衛隊が地球の反対側まで行って米軍と武力行使すると誤解を招きがちだが、自民党はまったくそういうことは考えていない。自衛に関する限り、部分的な行使があってもいいという考え方だ」と強調。その上で「党内で議論をやり直す。政府、公明党と考え方をそろえていかなければならない。丁寧にやる必要がある」と述べた。
 過去の憲法解釈を覆して、時の政権が恣意(しい)的に行使を容認することにも、自民党内では「憲法自体への信頼性、評価が低下する」と批判が根強い。高村正彦副総裁は「やはり憲法改正が筋だ、という人はいる」と認める。

 公明党の会議では、首相が集団的自衛権の行使容認に向けて打ち出した「積極的平和主義」に対し、出席者から「意味がよく分からない」「きちんと定義すべきだ」と批判が上がった。
 山口那津男代表は十九日のBS番組で「集団的自衛権と言われても(国民は)難しくてよく分からない。とんとん拍子で議論が進むことに、戸惑いと恐れを感じている。だから議論は丁寧に進める必要がある」と慎重論を繰り返し、政府との溝は埋まっていない。
 佐藤茂樹政調会長代理は会議後、行使容認論者がそろう政府の有識者懇談会を「はっきり言って、抽象的で内容のない議論をしている」と切り捨てた。