2013年9月5日木曜日

婚外子相続差別は違憲 最高裁大法廷

 結婚していない男女間に生まれた婚外子の相続分を、法律婚の子(嫡出子)の半分とする民法の規定について、最高裁大法廷は4日、違憲とする判決を下しました。大法廷の裁判官14人全員一致の判断です

 婚外子差別の問題については国連の人権機関も日本に対して再三にわたり是正を勧告してきました。かつてハンセン病患者の差別法を放置して、患者たちに多大な苦悩を与え続けてきた問題と同様に、国会の責任も問われます。

 現行の婚外子相続分の差別については1995年の最高裁大法廷で、民法は国の伝統、社会事情、国民感情なども考慮されなければならず、またその国における婚姻ないし親子関係に対する規律等を離れてこれを定めることはできない嫡出子の立場を尊重するとともに、非嫡出子の立場にも配慮して嫡出子の2分の1の法定相続分を認めることで、非嫡出子保護しようとしたものでこの区別は合理的」(10名多数意見。違憲判断は5名の少数意見)と、持って回った言い方で合憲と判断されました。
 「差別はあってはならない」とする英明さを失うと、どうしてもこういう因循姑息なものに堕してしまいます。僅か18年前、こういう国際常識に反した判断が最高裁で行われていたわけです。

 日本国憲法のGHQ草案の作成にたずさわり、日本の風習等に精通していたベアテ・シロタ・ゴードンさんは、1946年に「非嫡出子は法的に差別を受けず嫡出子と同様の権利を持つ」とするベアテ草案第19条を作りました。日本の女性や子どもの権利の確保のために奮闘し、僅か23歳で最先端の英明さを持っていた彼女の高い精神が実に67年ぶりに日の目を見ることになります。いまは天国にいる彼女も、そのあまりの遅さにあきれていることでしょう。
       2012年7月16日「【憲法制定のころ 4】 ベアテ・シロタ・ゴードン 」
 
 (判決対象の2件の訴訟は、2001年に死亡した二人の男性の婚外子の相続にかかわるものでした。いつもながらのことですが驚くべき裁判の遅さです)

 以下に「最高裁、婚外子の相続差別は違憲 95年判例見直し」(東京新聞)と「婚外子:相続差別規定、欧米諸国は既に撤廃」(毎日新聞)の記事を紹介します。
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最高裁、婚外子の相続差別は違憲 95年判例見直し
東京新聞 2013年9月4日
 結婚していない男女間の子(婚外子)の遺産相続分を、法律上の夫婦の子(嫡出子)の半分とする民法の規定をめぐる裁判の特別抗告審で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)は4日、この規定が法の下の平等を定めた憲法に違反し無効だとする決定をした。「合憲」とした1995年の判例を見直した。

 婚外子の相続規定は明治民法から戦後の民法に引き継がれ、国内外から「不当な差別」と強い批判を受けていた。法務省は既に相続分を平等にする民法改正案をまとめているが立法に至っておらず、最高裁決定で国会は早急な改正を迫られる。最高裁が法律の規定を違憲とするのは戦後9例目で民法では初めてとなる。

婚外子:相続差別規定、欧米諸国は既に撤廃
毎日新聞 2013年9月4日
 婚外子の相続差別規定は、家族の多様性を認める1960年代以降の国際的な機運の中、欧米諸国では相次いで撤廃された。先進諸国の中で規定を残すのは日本だけとされ、国連は繰り返し是正を求めている。

 欧州では婚姻を尊重するキリスト教思想もあり、夫婦関係を守るために規定を設けたとされる。だが、女性の社会進出や「子どもの権利条約」制定などに伴って法改正が加速。日本の法制審議会が相続格差規定の撤廃を含む民法改正を答申した96年には、独と仏が規定を残していたが、独が98年、仏も2001年に撤廃した。

 海外では差別規定の撤廃を背景に婚外子保護が進み、事実婚カップルの婚外子も増えている。出生者に占める婚外子の割合は日本の2.2%(11年)に対し、仏やスウェーデンは過半数を占め、英米なども3〜4割台。法律婚に縛られない発想が少子化対策につながるとの指摘もある。

 国連は93年以降、日本政府に規定撤廃などを再三求めているが、政府は「法律婚の尊重と婚外子の保護との調整を図ったもので、不合理な差別規定ではない」と反論してきた。

 日本弁護士連合会「両性の平等に関する委員会」の道(みち)あゆみ委員長は「日本が取り残されている原因には、国会の保守性や司法の消極性が挙げられる。違憲判断を機に、家族の多様性や子供の権利、女性の社会的地位を広く認め、法改正につなげるべきだ」と話す。【石川淳