2013年9月3日火曜日

毒ガスはシリア反政府勢力の所為とAP通信が報道

 シリア攻撃に関しては、アメリカは今月中旬に議会の承認を得ることを目指していますが、その成否は不明です。議会の承認が得られなかった場合攻撃を中止するという大統領の言質も得られていません。
 また仮に議会の承認が得られたとしても、それはアメリカの国内手続きが終了したということに過ぎず、シリアへの軍事介入が国際的に認知されたというわけでもありません。アメリカがシリアから攻撃もされず、アメリカの同盟国が攻撃もされていない以上、シリア攻撃に正当性はありません。

 ドイツの首相が、軍事介入には国連安全保障理事会決議などが参加の絶対条件と述べているのは、極めて当然のことです。

 それにしても、まだアメリカの大統領でさえシリア大統領の退陣については口にしていないのに、安倍首相は8月28日のカタール首長(アサド政権支持派といわれています)との会談で、いち早くそれを口にしました。また気持ちが高揚したのでしょうか。アメリカの気持ちを忖度したというような言い訳は勿論通用しません。なんともお粗末であきれる話です。
 インターネットでは、アメリカよりも先にシリアに宣戦布告をしたようなものと揶揄されています。

 9月1日のブログ「晴天とら日和」に、シリア反政府勢力:化学兵器攻撃は自分たちが行ったと認める」と題された、8月30日AP通信デイル・ガヴラク記者の記事が紹介されました(同記者は中東特派員を20年間やってきており、他にもNPRの仕事をしBBCニュースにも記事を書いているということです)。

 記事の概要は下記のとおりです。
 反政府グループの者たちがサウジアラビアの情報長官であるバンダル王子から化学兵器を受け取った。それらは管のような形または大きなガスボンベのような形をしていた。
 彼等はガヴラク記者に対して、「自分たちは化学兵器を取り扱うに際して充分な訓練は受けておらず、それが何かということを告げられてもいなかった」と語った。
 それらの兵器はアルカイダ系テロリストのジャバト・アル・ヌスラに渡されることになっていたようであるが、兵器を受け取ったグループはそれらの兵器にとても興味があった。そしてまずいことに、の兵器の扱い方を間違ったものがいて、運搬の途中で暴発を起こしてしまった

 アメリカが盗聴したという情報は、「攻撃(=暴発事故)」の数時間後にシリアの国防省がパニックになって何度も同国の化学兵器課に電話問い合わせをしたことであって、アメリカの言い分とは逆に、むしろアサド政権側が化学兵器攻撃を行ったものでないことを示している。  (要約終わり)

 アメリカは「アサド政権側が化学兵器を使用したことについて強い確信がある」などと、殆ど信用されないことを強弁する前に、まず同記事を掲げた通信社によく確認した方がよさそうです。

 以下に関連する記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
首相、シリア大統領退陣を カタール首長との会談で 
日経新聞 2013年8月28日
 【ドーハ=坂口幸裕】中東・アフリカ歴訪中の安倍晋三首相は28日、カタールの首都ドーハでタミム首長と会談した。首相は「シリア情勢悪化の責任は暴力に訴え、無辜(むこ)の人命を奪い、人道状況の悪化を顧みないアサド政権にある。アサド政権は道を譲るべきだ」と述べ、アサド大統領の退陣を要求した。

 タミム首相はこの後、現地で記者会見し「日本政府としてはシリアで化学兵器が使用された可能性が極めて高いと考えている。化学兵器使用はいかなる場合でも許されない」と強調。「事態改善のため国際社会と緊密に連携していく」と語った。


日本政府は軍事介入「支持」表明で調整
産経新聞 2013年8月31日
 政府は30日、米国などがシリアへの軍事介入に踏み切ったときの対処方針について「支持」を表明する方向で最終調整に入った。同時に、化学兵器使用疑惑による情勢悪化で急増が見込まれるシリアからの難民に対する「緊急無償資金協力」を追加実施する方針を固めた。新たに1000万ドル(約9億8000万円)超の支援を行い、これまでの資金協力額と合わせ1億ドルの大台への引き上げを視野に入れる。

 安倍晋三首相は30日、官邸でシリア情勢をめぐる関係閣僚会議を開き、現地の情報収集・分析のほか、軍事介入を検討している米国など関係国との連携の強化を指示した。
 菅義偉官房長官は30日の記者会見で「北朝鮮のように日本周辺にも化学兵器を保有する国があり、シリアの化学兵器使用の問題は無関係ではない」と述べ、アサド政権の化学兵器使用が明らかになった場合には日本政府として厳しい姿勢を示す方針を表明した。政府関係者も同日、化学兵器使用を受けた軍事介入が実施された場合には「『理解する』などと中途半端なことはやらない」と指摘した。

 一方で政府は、シリアからヨルダンやレバノンなどの近隣諸国に流出した難民らに、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や国連世界食糧計画(WFP)を通じ食料や水、毛布、医療品を届ける緊急無償資金協力を新たに実施する。外務省幹部は30日、「米欧の攻撃の有無とは関係なく、難民への食料・医療支援を検討している」と述べた。
 国連機関に登録済みのシリアの難民数は約180万人、難民登録待ちも約18万人いる。日本政府は平成24年2月以降、増加し続けてきた難民への支援策として、計9000万ドルの資金協力を行ってきた。

政府 米政権と議会の調整見て検討
NHK NEWS WEB 2013年9月1日
シリア情勢を巡って、アメリカのオバマ大統領が、議会の承認を得た上で軍事行動に踏み切る考えを表明したことを受けて、政府は、オバマ政権とアメリカ議会との調整の推移などを見ながら、今後の対応を検討することにしています。

シリアで化学兵器が使われたとされる問題で、アメリカのオバマ大統領は、日本時間の1日午前3時前、声明を読み上げ「軍事行動に踏み切るべきだと決断した」としながらも、「議会の承認が必要だ」と述べ、議会が再開される今月9日以降に、承認を求めていく考えを示しました。
これに先だって、岸田外務大臣は、31日夜、ケリー国務長官と電話で会談し、シリア情勢の悪化は、アサド政権に原因があるという考えを伝え、事態の改善に向けて日米両国が緊密に連携していくことで一致しました。
アメリカが軍事行動に踏み切った場合の対応について、政府内には、化学兵器の使用は、人道上、許されないとする立場から、理解を示すべきだという意見がある一方、軍事行動を支持する国連安全保障理事会の決議がないことなどから、踏み込んだ対応は避けるべきだという意見もあります。
政府は、オバマ政権とアメリカ議会との調整の推移などを見ながら、今後の対応を検討することにしており、外務省関係者は、NHKの取材に対し、「日本としては、引き続き、関係国と連携しながら、シリア情勢の改善に向けて何ができるか検討することになる」と述べました。

独首相、シリア軍事介入参加否定 安保理決議が絶対条件
東京新聞 2013年9月2日
 【ベルリン共同】ドイツのメルケル首相は1日夜、シリアへの軍事介入について「ドイツは決して参加することはない」と述べ、国連安全保障理事会決議などが参加の絶対条件になると強調した。連邦議会(下院)選のテレビ討論で質問に答えた。
 メルケル氏はドイツが参加するには「北大西洋条約機構(NATO)か国連、欧州連合(EU)の委任が必要」と指摘。オバマ米大統領が議会の承認を得るため、アサド政権への攻撃を延期したことを歓迎した。
 ドイツの対応をめぐってはウェスターウェレ外相が既に地元紙に対し、軍事介入への不参加を明言している。